第41話 〜寄り添う者達〜 4
「人前でそれは恥ずかしくないですか?」
「そのような事を気にする必要はありません。今はきちんと食べることの方が大切です。違いますか?」
「・・・・はい」
こうなるともう何を言っても先輩には勝てないので、大人しく口を開けて食べさせてもらう。
朝っぱらから、何でこんなことしてるんだろうな・・・・?
「よく噛むんですよ?」
充分な咀嚼をし、飲み込むとまた先輩がフォークを差し出して来る。
今度はサラダだった。
「はい、あーん」
なんか、どことなく先輩が嬉しそうだからいいか。
「・・・・何で俺は朝から、目の前で男女の絡みを見て飯食ってんだろうな・・・・・ってか、そろそろ俺の話いいっすか?」
「これはすみませんでした。確か、北条さんの事をお慕いしているとのことですね?」
「ええ、まあ・・・・そうなんですけど、そうはっきり言われると恥ずいですね」
「そもそもお前、北条さんの何処が好きなんだ?」
俺が話すと、直ぐに次の分を出されるのでまた食べる。
「あー、それな。何と言うか初めは色々と頑張ってる娘がクラスにいるな〜、くらいだったんだが、見てるうちに気になり出したというやつだ」
「ああ、なるほど。気づけば好きになるやつか」
「健は先にお食事に集中してください。あーん、です」
先輩、これノリノリで食べさせてるよな? 何か生き生きしてる気がする。
「・・・・つーか、改めて眺めてると、これおねショタか? って、また話がそれちまうな。まあ、そういうことだ」
何か気になることを言われたが、今は食べることしか許されていなかった。食べ物を嚥下すると、待ち構えているフォークの相手をしないといけない。
「具体的にはどういうところに惹かれたのですか? 必ず聞かれると思いますよ?」
「そうですね・・・本当に嬉しいんだろうなって時には、めっちゃかわいい笑顔を見せてくれたんですよね。そもそも北条の頑張ってる姿見て、かわいいなと感じたり、報われて欲しいなと思う時点で多分好きなんだろうと・・・・そう思いました。まあ、本格的に自覚したのは、健に告白したという話を聞いてからですがね」
「・・んっ? 俺・・・・?」
「健、あーん」
名前を呼ばれつい反応してしまうが、先輩からのあーん攻撃に沈黙してしまう。
「ああ。情けない話だが、何でお前に告白したんだよと嫉妬してな。だったら俺にしてくれたら良かったのに、と感じて『あ、俺は北条が好きなんだ』と。実際北条は庇護欲的なモノを駆り立ててくるくらいにかわいいしな」
「でしたら、その気持ちに従って行動すれば良いんですよ?」
「そうは言いますが、健に振られて傷ついてる今、告白されてもそんな気分ではないと思うんですよねー。タイミングが悪いというか、噛み合わないような・・・・」
「別に急いで告白しなくてもいいんですよ? 誰でもお慕いする方には何らかのサインを出しますので、その時に恥ずかしがらずに伝えて頂ければ十分です」
「因みに、先輩の時はどうだったんですか?」
「健が慕ってくれている事を察した時点で、私が好きですか?とお尋ねしました」
あ、ここちょっと変えてる。そういや、付き合って一月の設定だったから、辻褄合わせだな。
「・・・・そんな風にぶつけてくる女の子って、先輩くらいじゃないですか? 因みに健の返事は?」
「先輩が好きですって、素直に答えた。そしたら先輩も好きですよって事で、付き合えた」
「たけ———」
もはや先の言葉も聞かずに口を開ける。それを見て、先輩も嬉しげに食べさせてくる。
「・・・・うーんっ? これってどっちかというと、先輩からの告白じゃないですか?」
「・・・・どこでそう思いましたか?」
「どこって、先輩は既に健が好きだったんですよね? それで健も自分のことが好きなはずだと思った時点で『好きですか?』って質問するのは、答えが分かった上での告白ですよね?」
ああ、なるほど。そういうことか。
「つまり、どういうことだと思います?」
先輩は簡単に答えを教えない。これは自分の言葉で見つけて欲しいと思っている。
「どうって、相手が自分を好きだと分かった状態で話を振って・・・・あっ」
「気づきましたか?」
「・・・・サインが出てる時点でOKということですか?」
「ええ、慕う感情のサインはその方にしか出しません。とはいえ、騙したりする方でなければ・・・ですが」
後半の言葉って、中学の頃の俺がからかわれたからだな。
「北条はそういうヤツじゃないんで大丈夫だと思います。問題は俺が早とちりする方です」
「それこそ大丈夫ですよ。北条さんを良く見ていた池崎さんが、間違えるはずはないでしょう?」
「・・・・確かに北条が健を好きなのは分かりましたね」
「あー、だから告白が女子の遊びだと知って喜んでいたのか」
「まあ、昨日の北条見る限り、お前に告白する口実が欲しかったのかもな。よく考えれば、北条は遊びで告白なんてするタイプじゃないのにな。恋は盲目ってやつだ」
そう言ってパックの牛乳を飲んでいく。器用にも、話してる間に他は全部食べ終わったようだ。
「健、パンにはどちらを塗りますか?」
その間に先輩は、最後に残ったパンを用意してくれていた。バターとジャムは開封され、パンも既に一口サイズにされていた。
「えっと、一個の量に一つ使い切る感じでお願いできますか?」
「ええ、分かりました」
ちぎったパンにナイフでバターを塗り、それを口元に寄せられる。
「どうぞ」
「えっと、何でパンはフォークでしないんですか?」
これだと食べる時に指に当たらないか?
「パンは普通、フォークでは食べないでしょう?」
「あー、先輩これアレですよ。指も一緒に食べちゃうヤツなんで、健はそれを意識してるんですよ」
ナイス助け舟。これで先輩もフォークで————
「私は構いませんよ?」
「・・・・そっすか。じゃあ、いいんじゃないですか? 恋人っぽくて」
こいつ投げやがった!




