『泣き虫狐のルキとナキ』
私の地元にこんな昔話があったんだ。今、簡単に書き留めるから下を開けといて。
ありがとう。じゃあ書いてくね。
『昔々、あるところにルキと言う小さな子ギツネがいました。彼は前の土砂崩れで親を失ったばかりで、土砂に埋まっている母親に何度も声をかけていたそうです。
「おかあさん、おかあさん」
何度も何度も声をかけながら、土を掘り起こしております。ですが、母の声はしません。ルキの母は既に地面の中で覚めない眠りについているのです。その狐に声をかける狐がいました。
「おい、どうしたんだ」
その狐はルキよりも少し大きな大人の狐です。彼はナキと言い、彼も家族を亡くした一匹の狐でした。
「おかあさんが、おかあさんが埋まっちゃったの。掘り起こしてあげないと」
「土が深いんだ。もう助からない」
「っそんな……おかあさん、おかあさん!」
ナキの言葉でルキはわんわんと泣き始めました。わんわんと泣くルキを慰めて、ナキは彼に一緒にいかないかと声をかけたのです。
「一緒なら怖くないはずだ。ほら、俺と一緒にいこうぜ」
ルキは泣きながらも頷いて、母の亡くなった場所にお供えの花をおいてナキと一緒に旅をしました。
狩りや危ない場所。生き方を教えてもらいながら、一緒に寝たり、ご飯を食べたり、家族のようにルキとナキは幸せに暮らしていきました。
とある夜。ルキは目覚めて横を見ると、ナキは隣にいません。どうしたのかとナキを探しに行くと、ある一匹の狐は星空を見て泣いていました。
それは、ナキでした。ナキは星空に向かって、誰かの名前を叫んでいたのです。
「ナキ……?」
ルキが声をかけると、ナキは気付いて驚きました。
「……ルキ。なんでここに」
「ナキがいなかったから……寂しくて」
「……悪かったな」
「いいんだ。……ねぇ、ナキ。ナキのいってた名前の狐って誰?」
謝られますが、ナキは首を横に振って恐る恐る聞きます。ナキは苦しそうに語りました。
かつてナキには兄弟がいました。その兄弟はルキと同じように土砂崩れで家族を失っていたのです。そのあと、ずっとナキは一人で生きていき、同じように親を無くしたナキを自分と重ねて一緒に行くように誘ったのです。
自分と同じような境遇とは知らず、ナキはボロボロと泣き始めました。
「ナキ、一人で泣かせてごめんなさい。ナキ、自分はずっも一緒に居るよ。死んでもずっと一緒にいるから、自分を置いていかないで」
と泣いて願いました。ルキの優しさにナキはまた泣いて互いの鳴き声を山へと響かせました。
そのあと、言葉通りルキはナキと一緒に死ぬまでいました。そして、死んで妖怪の狐となったあともずっと一緒に居たのです』
普通にいい話なんだよね。
うちの地元では山からキツネの泣き声が聞こえると『ルキとナキは元気よく山を駆け巡って遊んでいる』とされるんだ。
けど、こんな続きもあってね。
『妖怪となったはいいが強い狐にバカにされ続け、一匹の力強い狐のもとについていつか見返そうとしている』っていう話もあるんだ。
でも、これはおばあちゃんから聞いた昔話だから、本当のルキとナキは居ないと思う。
二匹は何処かで自由に遊んでいてほしいな。
『泣き虫狐のルキとナキ』




