『時駆け狐』
過去や未来に時を渡るなんてあり得ないと思うだろ?
実はタイムスリップした人がいるんだよ。俺が話すのは知人から聞いた話だ。その知人の友人は時を渡って過去にいったことがあるらしい。
ああ似たような話はあるな。でも、俺が聞いた話は江戸時代にいってどうこうの話じゃない。その知人は何度も江戸時代や過去を行き来していたようだ。
江戸時代で花魁と遊んだり、町や屋台でご飯を食べたり、何でも討ち入りの場面も見た。過去は色々とあるらしいけど、富士山の噴火を見たり、合戦を見たり、幕末に行ったりとかしてたらしい。歴史を変えない程度に、タイムスリップを楽しんでたようだ。
俺も時渡りをしてみたいと尋ねてみたけど、その知人が聞いた話によるとやり方は難しいんだと。
なんでも、人の感覚、タイミング、外的要因が重なって起きるとかなんとな。
まず一つ目の方法はいつもある道が、見たことない道に見えるとき。いや、普通にあるよなそういうこと。でも、こういうのはタイミングが関係があるから、タイムスリップは難しいらしい。
二つ目は、外的要因とタイミング。外的要因に関してはわからない。タイミングに関してもよく知らない。だが、何かと重なったときにタイムスリップは起きるらしい。
最後は……完全な外的要因だ。その知人の友人はこの方法で行き来していたらしい。話によると、タイムスリップの始まりはこの外的要因のようなんだ。
ある日の夜。十字路の道路を渡ったときだ。その真ん中ではある動物を見かけたんだ。青白い狐。その狐はじっとこちらを見つめていた。
理由もわからず、そいつは何事なかったかのように横断歩道を渡りきったらしい。そのあとに、狐の鳴き声を聞いて瞬きをすると目の前の風景が違っていた。
コンクリートで舗装されてない道。電柱もなくて、自動車も走ってない。自転車も走ってないときた。
目の前が田畑ばかり、いくつか見える建物もかなり昔のような建物。木造で茅葺き屋根だったらしい。人も現代できるような服じゃなくて、着物とか甚平。靴は草履とか下駄。昔の人が着るようなものだった。
そいつはすぐに近くの人に声をかけて、年号や出来事を聞いたらしい。
年号のことはわからなかったけど、どうやら富士山の噴火については聞けたようだ。この辺りは運良く被害は免れたけど、お江戸の方はヤバイんだと。
富士山の噴火。つまり宝永の噴火だな。そいつはすぐに場所について聞こうとしたけど、青白い狐が近くに現れた。瞬きをすると、いつも通る横断歩道の前にいたらしい。
その知人の友人は青白い狐を『時駆け狐』って呼んでいるようで。その狐との遭遇をきっかけに、その友人はタイムトリッパーになったらしいけど、今はできなくなっているらしい。
できなくなった理由はわからない。でも、できなくなった切っ掛けは、お稲荷さんの神社でお参りをしたからかもって言ってた。そいつはもうタイムスリップを楽しんだから、もう時渡りは十分だと笑っていたんだと。
その知人の友人は今どうなっているんだって?
実はわからないんだと。ある日を境に連絡が取れなくなったらしい。姿も見かけなくなったし、家にもいないらしい。引っ越した話も聞かないし……もしかすると、青白い狐に神隠しされたとか。
そうだったら、面白いよな。
『時駆け狐』




