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平成之半妖物語  作者: アワイン
1 番外
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4 『まがりかどさん』事件解決

 包丁で突き刺そうとしている怪異を仮面の男は十手で抑える。十手は刀などを防ぐ為に作られたもの。包丁の刃を鍔で抑えて包丁を叩き落とす。『まがりかどさん』の服に襟ぐりを掴んで、襲いかかってくる集団にぶつける。

 陰陽少女は刀を抜いて駆けて、包丁の振るわれる多くの刃を避けていく。

 隙を見つけて、刀で斬りつける。後ろから刺される前に振り返って、刃を刀で防いで押し返し、体勢を崩して『まがりかどさん』を斬り伏せた。陰陽少女の背後には、『まがりかどさん』が刃物を持ってやってくる。

 数が多く対応しきれないのだ。陰陽少女はしまったと振り向く。

 白い一閃が入り、多くの『まがりかどさん』は霧散して消えた。仮面の彼がしゃがんで刀に鞘を収めている。抜刀術、またの名を居合い。ゆっくりと彼は立ち上がるが、陰陽少女と依乃には見えなかった。

 仮面の彼は陰陽少女に向いて、注意をする。


「いいか? こうして人は一人で突っ走ると自身の命を失うこともある。俺のような存在ならともかくお前は人だ。自分を大切にしろ」

「わ、わかりました」


 身を案じられ陰陽少女は戸惑いながら返事をする。彼女を守ったのだろう。直文は驚きつつやってくる怪異に片手で器用に(ひょう)を投げていく。

 複数の『まがりかどさん』が直文達に近づいた。陰陽少女は気付き、慌てて駆け寄ろうとしたとき。


「光輝・角端(かくたん)


 言霊と共に背後の噴水の水飛沫が彼らのいる方に向かう。

 噴水からの水飛沫が吹雪へと変化していき、吹雪の竜巻が出来きた。襲いかかろうとしている周囲の怪異を呑み込む。全員の視界が一瞬だけホワイトアウトする。吹雪が晴れると、直文の周囲には幾つかの雪像ができていた。直文がぱちんと指を鳴らすと共に、雪像は地面に溶けていく。『まがりかどさん』も一緒に溶けていったようで姿はなかった。

 吹雪の竜巻が起きたというのに、周囲は気に留めない。また仮面の彼は刀を構えて、力ある言葉を吐く。


「白滅」


 刀に白い光が一瞬だけ宿ると、彼は多く怪異のいる中心に飛び込む。『まがりかどさん』は気付いて包丁で刺そうとする。が、刀が振るわれると一瞬で彼の周りにいる怪異は霧となって宙に消えていく。

 ただ刀を振るっただけで、大幅の怪異が倒されたのだ。『まがりかどさん』の数が指を数えるほどになる。

 陰陽少女は彼らの異様さに驚き、二人に聞く。


「貴方方は一体……」


 仮面の男は周囲を見る。


「……けっこー力使ったのに他の仲間が来ないってことは……ふぅん。それに気付いた陰陽少女は仲間より結構素質が高いってことか」

「あっ、いやぁ……それほどでも」


 照れる彼女に彼は叱る。


「だが、素質があっても素養が駄目なら素質もただの無駄使いだ」


 バッサリと言われてしまい、陰陽少女は落ち込む。彼は命を大事にしているらしく、無茶な行動をした少女に怒っているらしい。属している組織を考えると、彼女の単独行動は怒るだろう。

 直文達は『まがりかどさん』の様子を見る。有象無象に襲ってきた怪異の動きが止まっていた。獲物を狙うが如く、動いていた相手が動かなくなったのだ。可笑しさに疑問に思っていると、直文は一枚の(ひょう)を物陰の方に投げる。


「ひっ!?」


 怯えた声と共に、木に(ひょう)の刺さる音が聞こえた。尻餅をつく音が聞こえて、人が現れる。ジャケットなどのラフな格好をしているが、陰陽少女と同じ顔に雑面をしていた。

 残りの復権派の陰陽師だ。残った『まがりかどさん』が陰陽師に向く。物陰は丁度曲がり角に当たり、怪異が人を襲う条件となる。

 仮面の彼が走り出して、力を宿した刀で残りの『まがりかどさん』を倒した。全ての『まがりかどさん』が消え、仮面の彼は刀を収める。

 陰陽師の相手は呆然とした。仮面の彼が近付いて行く。相手は気付いて立ち上がって逃げようとする。


「逃すとでも?」


 仮面の彼が陰陽師の背後におり、手を掴んで地面に押し倒す。

 いつの間にか背後を取られていた。

 陰陽師二人は言葉を失う。余程得体が知れなくなっただろう。仮面の彼は縄を出して、復権派の陰陽師を縛る。陰陽少女の前まで転がして、声をかけた。


「ほい、これが目的なんだろ?」

「──えっ、あっ……ありがとうございます……? いえ、そうではなく……!」


 声をかけようとした時、仮面の彼は彼女の前に手をかざして言霊を使用する。

 彼女は横に倒れようとするが、仮面の彼に受け止められる。余計な詮索をさせぬ為に、眠らせたのだ。陰陽少女を階段に寝かせる。陰陽師は仮面の相手に顔を向けられてビクッとした。


「な、なんだよ。お前ら!」

「それはいい。陰陽師。お前はこの怪異を貯めてた奴だな?」

「……素直に、吐くとでも?」

「吐かなかったら、吐かせるまでだ」


 警戒しながら話す相手に、仮面の彼は陰陽師の額に指を当てた。何か呟くと、指を離して、ポケットの中で何かを動かして再び問う。


「聞こう。お前はこの怪異を集めて貯めていたな?」


 聞かれても陰陽師は鼻で笑い、口を動かす。


「当然だ。集めて貯めていたさ…………!?」


 相手は口をあんぐりとする。吐くつもりはなかったのだろう。戸惑いながら、仮面の男を見る。かけたのは無理矢理聞いたことを吐かせる術。仮面の彼は淡々と質問を続けた。


「『まがりかどさん』を発生させて集めて、何をするつもりだったんだ」

「あっ……あ、あっ、は、発生させて集めて、強力な呪具を作ろうと思ったんだよ!」

「ふぅーん? で、その呪具は妖刀になるのか?」

「そうだ! 怪異から作り上げた我らの最高の一品になるんだっ……!」

「それを使って、保持派を一網打尽か?」

「そんな、わけ、ないだろ! ナナシ様がいなくなった以上、我々はあの方と同等の力のあるものを作らなくてはならない!」

「へぇー」


 彼はいくつかの質問を出して、陰陽師に吐き出させていく。

 しばらくして仮面の彼は黙る。

 陰陽師の彼が息を荒くしており、お喋りに抗おうとした結果が見て取れた。ぴっと機械の音を鳴らす。彼はふぅと息をついて、ポケットからボイスレコーダーを出した。ポケットの中を動かしていたのはボイスレコーダーを起動させていたようだ。

 質問の数々を録音していたらしく、陰陽師は血色を変えた。


「はっ……なっ……!?」

「録音完了。怪異から助けた駄賃だと思え。消憶」


 彼の言霊と陰陽師は地面に倒れて寝息を立てる。陰陽少女の目の前に行き、彼女のポケットからスマホを出す。ロック番号などがあるが、彼はじっと彼女を見つめた後、番号を打って画面を出した。

 その番号の数が1111という簡単なものであった。不用心である。電話帳のアプリを起動させて、口元の部分の仮面を外す。上下で取れるようになっているらしい。


《もしもし》

「〔もしもし、私です。なんとか……陰陽師を捕まえました〕」


 声色も先程の陰陽少女の近いものとなる。声色を変える技術もあるらしい、声の主は報告の内容に驚いた。


《本当か!? お手柄じゃないか! ……いや、待て。お前、どこにいるんだ?

単独行動して手柄を立てたのはいいが、一人で無茶な行動するなと言ったよな!?》


 電話の主からの説教で陰陽少女の危うさが伝わる。三人は少女に目線を向けた。本人は気持ちよさそうに空の下で寝ている。仮面の彼は少女の声で謝った。


「〔ううっ……すみません〕」

《ったく……! 場所はどこだ!?》

「〔公園です……。常盤公園〕」

《よーし、仲間を連れていくからそこで待ってろ。じゃあな!》


 電話が切れると、スマホを彼女のポケットの中に戻して仮面をし直す。何処からか、メモとボールペンを出して一筆認めてボイスレコーダーと共に置いておく。彼は二人に声をかけた。


「早くここから去ろう。二人は身隠しの雑面をしているようだから大丈夫だろう」

「……だが、お前の肉声が入っているぞ。良かったのか?」


 直文の問いに彼は「大丈夫だろ」と返答する。


「通りすがりの同業者で通す。このボイスレコーダー自体は陰陽師側もよく使う特殊器具。それに、機械で探せないようにこのボイスレコーダー自体にも特殊な術をかけてあるし。──じゃ、俺はもう仕事場に戻るからな。直文も早くその子を帰してやんなよ」


 彼は足に力を込めて、空高く跳躍していく。そのまま、星空の闇の中へと消えていった。




 公園を去る前に後処理をした後、術を解いて、二人は家の近くの人気のない場所に降りた。

 直文は元に戻り、彼女にお守りを返す。それぞれの仮面を外して、二人は家の道を歩いていく。気付けば、空は真っ暗。空を見て直文は依乃に謝った。


「ごめんね。君のご両親に心配をかけさせてしまった」

「いえ、私が直文さんを遠くまで案内したと言い訳すればよいのです」

「いや、ここは俺が我儘を言ったと言えばいいよ」


 話しているうちに、家の前までつく。家のインターホンを鳴らして、依乃は「ただいま」と声を上げる。十数秒後、玄関のドアが開く。彼女の母親が顔を出して、にこやかに出迎えた。


「あら、おかえりなさい。依乃。直文さん、楽しめました?」

「いえ、むしろ、夜暗くなるまで連れ回して申し訳ないのですが……」


 彼女の母親はにこにことしており、訝しげに思っていない。彼は僅かでも訝しげに想定していたが、彼女はきょとんとする。


「あら、寺尾さんから連絡が入って、さっきまで久田さんと娘と一緒に買い物をしているからちょっと遅くなると聞いたけれど……?」

「……あ、ああ、そうです。すみません。はい、楽しかったです。有意義な時間を過ごせました」

「ふふっ、良かった」


 何も知らずに母親は微笑んだ。怪しまれないように根回しをしてくれたのだろう。二人は内心で茂吉に感謝した。依乃は玄関のドアの前に行き、直文に振り返る。


「直文さん。一緒にご飯を食べましょう」


 鮮やかな花火のような微笑みを浮かべる彼女。ドアから漏れる家の明かりと相まって、花火の少女の微笑みが眩しい。直文は優しく愛しそうにはにかんで頷く。二人は一緒に暖かな家の光の中へと入っていった。

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