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平成之半妖物語  作者: アワイン
1 終章
53/288

ep 平成之半妖物語 再始動

 直文と別れた後。

 直文が仕事の関係で挨拶ができない旨と謝罪を伝え、手紙を依乃の家族に渡す。詫びの品は値の張る焼き菓子で長持ちするものだった。

 夏休み最中。奈央と出会い、親が帰ってきて直文が帰ったことを伝える。奈央は少し切なそうに「寂しいね」と言ってくれる。依乃は同意するが、携帯にある電話帳には彼の携帯番号が登録されている。だが、連絡をするのは憚られる。


 中学最後の夏休みが終わり、秋、冬。受験を乗り越え、日本を襲う大きな出来事を乗り越えて……卒業式を迎える。


 旧友との別れを奈央と依乃は経験し、春休みに突入した。

 彼からの連絡はない。組織での仕事が忙しいのだろう。春休みの最中、久々に再従兄弟の『はるねぇ』と再従兄弟の婚約者『もみじ兄ちゃん』に出会う。また再従兄弟の親友の『えみねぇ』と『りゅうにい』と再会を組織以外の話題を除いて、彼女は色んな話をした。




 2011年。平成23年。四月上旬。

 祝いの為に葉桜が散り行く。静岡県にある有名な県立の学校に依乃は入学した。奈央も一緒に入学。二人が入学した高校は澄が在校している。入学のため、澄にも勉強を見てもらい、依乃はともかく奈央は何とか受験に合格して入学できた。

 頭の良い学校であり、何とか合格できてよかったと三人は肩の力を抜いた。                           




 入学式が終わったあと。奈央と依乃は学園内にある看板の前で二人の親からのカメラのシャッターを待つ。


「はい、チーズ!」


 二人の母親がシャッターを切って、二人の娘の写真に納める。制服の可愛さ関係なく彼女たちはこの高校に入りたかった。奈央は依乃を抱き締めて、にっこりと笑う。


「はなびちゃん。入学式が終わったね。このあと、どうする?

私はこのあと、文房具屋で筆記用具を買うよ」

「あっ、私もノートとか欲しいから買いに行こうかな。そのあと、家に帰って新品の教科書を開けて……」


 彼女が真正面を見たとき、一人の男性が見えた。

 艶やかな長い黒髪を結んでいるフォーマルスーツの男性だ。髪が長いのは学校では目立つはずである。怪しい人物と校内の先生に声をかけられるはずが、周囲の人々は彼に目もくれない。気にせずに其々の入学を祝っていた。先生達も彼に親しげに声をかけて、何も注意せずに去っていく。

 この違和感に気付いたのは彼女だけだ。


「お母さん、奈央ちゃん、真美さん。ごめんなさい、少しだけ時間ちょうだい。……知り合いを見かけたから……ちょっと話してきます!」


 一言おいて、彼女は走り出す。奈央と母親の言葉が後ろから聞こえてくる。依乃は履きなれない靴で地面を蹴って追いかけた。

 運動場の入口の前に彼は立ち止まっている。運動場近くで人の行き来はあるはずなのに、人は一切通らない。人が通らない現象は彼女は知っており、まさかと考える。走りを歩みに変えて、肩を上下させて立ち止まった。

 依乃は名前を呼ぶ。


「……直、文さん?」


 呼ばれて革靴を動かして彼は振り返る。フォーマルスーツの姿でビジネス眼鏡をしていた。彼は彼女の目の前に来て、眼鏡を外して穏やかに笑っている。あの時、一緒に居たときの彼の微笑みのままだ。


「こんにちは。久しぶり。依乃、入学おめでとう」


 直文が彼女の入学する学校にいる。依乃は驚愕し、疑問をぶつける。


「……なんで、ここに……?」


 聞かれて、彼は眼鏡をし直して教えてくれた。


「潜入護衛。任務が終わったあと、上司からの任務で暫く君を護衛するように言われたんだ。学校に潜入し、違和感がないように偽装工作。新任の『文田和久』先生っていう偽名で通してる。教師免許に関しては元から持っていたものを偽造したんだ」


 教え終わり、彼は苦笑して頭を掻く。


「君が入学するとわかってからの準備は大変だったよ。連絡する間もなかった」


 裏組織とは言え、本格的だ。いや、彼らが有能すぎるのだ。依乃は連絡しなくてよかったと安心すると同時に瞳が潤んでいく。

 嬉しくて泣きそうになるが、堪えて彼女は笑う。


「私を守ろうとしてくれて、ありがとうございます。直文さん」


 感謝に直文が申し訳なさそうだ。


「……いや、むしろこちらの方が感謝をしたい。巻き込んでいるのに君は許してくれている。……依乃は心が広いし優しいよ」

「そんなことないです。直文さんの方が優しいですよ」

「そんなことは……」


 間をおいて一瞬黙り、首を横に振る。


「いや、ううん、否定し続けるのは良くないね。ありがとう。……そして」


 彼女の前に手を出して、直文は眩い笑顔を見せた。


「これからもよろしくね。依乃」


 笑顔に、依乃は顔を真っ赤にする。高鳴る胸の上をつかんで、彼女は花火のような笑顔を浮かべた。好きになった人の手を握り、セオリーだとしても意味のある台詞を吐いた。


「これからもよろしくお願いします。直文さん」


 互いに握手をしたあと──喜びで堪えきれなくなったのか、直文は彼女を引っ張って腕の中に閉じ込める。

 依乃は顔を赤くするものの、『ここ学校』と紙が貼られた信楽焼の狸が直文の頭の上から降ってきた。




 平成の四月の春。ここにて名前を取り戻した少女と表情豊かな半妖の物語の幕が再び上がり、新たな物語が始まる。



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