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平成之半妖物語  作者: アワイン
1-4章 花火の少女
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5 地元の活惚2

 休憩が終わるが、彼女達にも疲れが出てきた。真っ暗になってきており、通りにあるライトがつき始める。通りにつけられた提灯にも明かりが灯された。

 別の曲が流れてくる。ねぶた囃子が聞こえてくる。

 かっぽれの踊りの合図のホイッスルと共に緊張感溢れる曲調が流れて、連衆(踊り手)の手がゆっくりと上がっていく。ある青森の佞武多(ねぶた)と地元のかっぽれを組み合わせたもの。野球の甲子園にて使われる応援曲としても使用されている。菅生ミックスと言えば、わかる人もいるだろう。使用されている一部の原曲がこの静岡にある。

 このかっぽれの佞武多(ねぶた)は、佞武多(ねぶた)の地元青森県でも振り付けや曲のカバーがされて使用されている。かっぽれの中でも密かに全国区に広がりつつある曲だ。

 ゆっくりとした動作から切り替わり、歌が入ると彼女達は踊り出す。先程のレゲエよりも踊りやすいが、ダンスを楽しむならばレゲエだろう。また佞武多(ねぶた)はノリが良く人気がある一つの曲である。


 踊る際、隣の直文が不意に■■の視界に入った。

 直文は笑っている。花火の光を思わせる弾けた笑顔で楽しいそうだった。人が楽しいと自分も楽しい。■■は身の奥から沸き上がる衝動を抑えず、破顔した。チームに一つの大輪の花火が打ち上がる。



 奈央とフードの彼は同じタイミングでサビを踊る。澄は茂吉の踊るテンションの高さに驚くものの、笑う。佞武多(ねぶた)囃子とドラムの音が響く。「らっせらー」と声が上がっていく。ねぶた囃子のパートになると、彼女たちを含めた多くの(チーム)が楽しそうに声をあげて踊った。

 踊る最中、■■の笑顔を見て驚くものも多い。

 彼女が本当に楽しそうに笑うのを始めてみたものが多いからだ。直文も驚いている一人。目を丸くしたものの、直文も表情を緩ませて弾けて笑ってみせた。

 祭りは掛け声でさらに白熱していき、雰囲気も額に汗が出てくるほどの熱気が溢れたものとなる。歌が始まり、掛け声が終わり振り付けが始まった。それでも熱気は途絶えず、本当は太鼓の音で熱気が更に上がっていく。


 どんなに(チーム)が乱れようとも、必ずに一つに纏まるこの祭りが■■は好きだ。間違えてもドンマイと声をかけて励まし、ずれても注意は少ない。

 最後の一つ音が上がったねぶた囃子で掛け声をあげていく。ねぶた囃子が聞こえなくなって最後は(チーム)ごとで声を上げて終わる。


 息を整えているうちに、スピーカーからは明るい曲調が聞こえてくる。


 シンセサイザーの音ともに、全員が手と足を動かして踊りを始めた。

 ポップでありながら、何処か陽気な雰囲気を漂わせる。各(チーム)が「エイサー」と歌に合わせて、振り付けをして行く。曲からは、奄美大島と沖縄の三味線『三線』が聞こえてくる。

 エイサーだ。沖縄のエイサーと地元のかっぽれ合わせたもの。「せいっ!」と拳を突き上げて拳とは反対側の足を上げて、■■の(チーム)も声を上げて行く。

 歌と共に■■の動きが滑らかになっていく。元々ダンス教室に習っていたのだ。清水っ子である彼女の血とダンス魂が騒いでいるのだろう。

 茂吉は楽しそうに踊る澄を一瞥したのち、穏やかに笑って踊りに戻る。奈央はフードの彼と共に気にせずに踊り、直文と■■は互いに顔を見合わせて笑顔になった。

 サビにはいると、(チーム)は「せいっ!」と掛け声を上げながら踊って進む。スピーカーからの三線と太鼓とホイッスル、各(チーム)からは掛け声が上がる。

 彼女の(チーム)も声をあげた。

 やって来た約二十五秒間のフリー枠。その前に、一部の各(チーム)は踊りながら位置を変える。彼女のいる(チーム)も列を変える。


「いくぞぉぉっ!」

「「応っ!」」


 フリー枠に入る声を連頭(リーダー)を声を上げて、彼女達連衆(踊り手)も答える。フリー枠に入ると、各(チーム)が異なるパフォーマンスを見せる。このエイサーの見所の一つとして、この各(チーム)の個性が強く出る部分だ。

 フリー枠は個々ではなく(チーム)で踊る。簡単な踊りを踊り(チーム)。独特なダンスで楽しく踊るチームもあれば、クオリティの高い踊りをするものもいる。

 彼女のチームはクオリティの高い部類だ。

 ダンスが上手い人々がクオリティが踊り、踊れない人は簡単な踊りを踊っている。

 ■■と直文、茂吉と澄、フードの彼とその他の人物はキレのあるダンスを踊る。特に■■はソウルを隠さずに、楽しそうに踊って見せた。

 各(チーム)の踊りは和気藹々としたものとあれば、ソウルを感じさせるものもある。彼らは汗を流して楽しそうに踊っているのだ。

 フリー枠が終わり、全員が同じ振り付けをする。

 二番目に入ると同じ振り付けであるが、各(チーム)の一部の動きが鈍くなってきている。踊りの力を入れる配分を間違えたのだろう。

 ■■は先程のダンスで体力を全部使いきってはない。直文は汗を流してはいるが、熱気のせいだろう。

 奈央も疲れを見せ始めているが、フードの彼はまだ余裕そうである。茂吉も同じように余裕だが、澄は少し疲れを見せ始めた。

 サビにはいる。各(チーム)から掛け声が響く。■■も負けじと声を上げて、直文も声を出す。

 声を聞いて、■■は隣にいる彼のことを考える。

 いつも一緒にいたが、名を取り戻せば彼のいない日常が戻ってくるのだろうと。だから、この時間を大切にしたい。忘れたくない。大好きな花火のように弾けて記憶に刻み込んで踊ろうと、彼女は体と手足を動かす。

 曲の終盤に近づくとき、全員が声をあげた。


「「「よいーとな、よいよいっ!」」」


 せいっと声を上げて、手もあげる。序盤の曲調に戻って振り付けも最初のものに戻る。最後に向かうまでの振り付けを行い、最後は両手を広げた。


「「やぁっ!」」


 終わりと共に掛け声をあげる。汗で濡れた服と額と髪を感じながら、■■は肩を上下して息を荒くする。彼女と同じように(チーム)の皆も息を整えていた。

 アナウンスが長い休憩を入れると話す。各(チーム)連頭(リーダー)からは「休憩!」と声をかける。■■の連も休憩を挟む。

 ■■はふぅと息をついて奈央と澄に振り返る。奈央は踊る体力の配分を間違えたらしく、フードの彼にタオルとスポーツドリンクを渡されていた。茂吉は澄と軽く談笑しながら汗をぬぐい、ドリンクを飲む。彼女はほっとすると頬に冷たい物が当たる。


「ひやぁっ!?」


 慌てて振り返る。直文が悪戯っ子の微笑みを浮かべていた。


「ははっ、今度は間違いじゃないよ」

「な、直文さんっ。いきなりはやめてくださいよ!」

「あっははっ、ごめんね。はなびちゃん。はい、これ」

「もう……ありがとうございます」 


 スポーツドリンクとタオルを渡され、仕方なく笑って■■は受け取って感謝する。スポーツドリンクは踊る前に飲みきった。気遣いしてくれるのは嬉しかったが、お茶目をするとは思わない。タオルで汗を脱ぐってスポーツドリンクを飲み、直文に目を向ける。彼は優しく見つめていた。その目線が恥ずかしく、スポーツドリンクの冷たさがよくわかる。

 二人のやり取りを見て、茂吉は近付いてニヤニヤと笑う。


「やっだー、なおくん。彼女にお熱だねぇ」


 指摘されて名無しの少女は周囲の目線に気付いた。

 (チーム)の皆を含めて澄と奈央は興味津々で見ており、一部は影で舌打ちをしていた。つまり、リア充なやり取りを見られたのだ。指摘された本人は不思議そうだった。


「……? もっくん、彼女は熱源ではないから熱くないぞ?」

「いや、そうじゃないよ。ってか、そこで天ボケかますな」


 茂吉は突っ込みをいれて、直文は訳がわからずに瞬きをする。相方にあきれて、茂吉はため息をはいて教えた。


「もう率直に言うよ。直文。人の多い場所で彼女とイチャイチャして優しく見つめるなんて、彼女にお熱い証拠さ。しかも(チーム)の人の多い場所でやるなんて恥ずかしいし、むしろ流石よくやるよ」

「えっ? それは…………あっ」


 彼は瞬きをしたのち、頬を赤くした。


「気付いて、ちょーっとは恋愛レベルアップした? 少しは行動を考えなよー」


 茂吉は軽く肩を叩いて去っていく。直文は慌てたのち、彼女を見て照れ臭そうに視線をそらす。彼の気持ちはわかっていたとは言え、あからさまに好意を示されて■■は恥ずかしくなってタオルで顔を隠す。

 生暖かく見守る視線と「何を見せられているのだろう」と嫉妬が混じった視線が二人に注がれた。

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