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平成之半妖物語  作者: アワイン
1-4章 花火の少女
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4 地元の活惚1

《それでは、総踊りの始まりです!》


 曲が流れ出した。

 日本のかっぽれといえば、『江戸芸かっぽれ』が有名だろう。しかし、静岡の清水港で行われるかっぽれは伝統的なものを、若向きにアレンジしている。地元のかっぽれを作り出したのは、有名なアーティスト。清水の祭りのかっぽれの曲はほとんど彼が手掛けている。


 一曲目はノーマルバージョン。

 曲が流れ始める前に、かっぽれの始まりの合図が始まる。各(チーム)連衆(踊り手)は構えだし、ギターのビートが効いた曲が始まる。両手を前に出し、踊り始めた。所作にかっぽれの踊りが含まれている。この曲の振り付け師は、実際に江戸芸かっぽれを踊る人だ。かっぽれの中でも踊りやすい曲である。

 遠くで太鼓の音と各(チーム)の笛がリズムよく響き、彼女たちは振り付け通りに踊る。振り付け通りでも個性が出ていた。

 片足で回る際、茂吉は陽気に踊り、フードの彼は少しテンポを早めていた。直文は動画通りの振り付けを完全コピーして、模範の振り付けで踊っている。

 澄は慣れたように涼しげに踊り、奈央は回る方向を間違えないようにゆっくりと回っている。十年間、■■は踊り慣れている為、動きと振り付けには切れとその個人の味が出てきている。

 スピーカーから流れる歌と共に、各(チーム)連衆(踊り手)は手を振り上げる。所々で暑い掛け声が響く。

 祭りの踊りは自前のテンションを上げて楽しむもの。彼女も声を上げて、テンションを上向きにしていく。振り付けにある拍手の音が響く。笛と太鼓に負けじと音を響かせていた。


 踊りながら進むのが総踊りの特徴でもある。

 進むペースは個々に違う。全体的に綺麗なかっぽれではあるが、曲調はロック。見ていると、地元特有の踊りとなっている。彼女の地元ではかっぽれといえば、このかっぽれである。■■にとって幼い頃から踊り親しんでいるかっぽれと地踊り。

 曲が少し過ぎると、後ろと前から熱い声が響く。

 かっぽれと各(チーム)からは、景気よく歌に合わせて熱気のある掛け声を上げて軽快に踊っている。勿論、彼女のいる(チーム)も掛け声を上げていた。

 叩かれる太鼓とホイッスルのリズムが曲と重なり、地元の民の雰囲気も華やかとなっていく。

 二番目に入ってくると、奈央と澄も慣れてきたらしく振り付けが安定してくる。

 かっぽれと熱い掛け声を皆が上げていく。茂吉は元からテンションを上げるのは得意ではあるが、直文も楽しそうに声を上げていた。

 また英語の一文字を上げる場面では、全員が花火のように弾けた声を上げた。

 各地でかっぽれと熱気のある声が聞こえる。彼女も腹から声を出して掛け声を上げた。た。

 歌が聞こえなくなると、一曲目の曲を踊り終えた。



 数分置いて、次の曲が変わった。

 先程はロックであったが、ジャズ寄りになった。曲調は落ち着いたものとなり、ベースとドラムの音がよく聞こえてくる。地元のかっぽれのもう一種類。かっぽれとレゲエを掛け合わせたものだ。

 曲が流れると共に振り付けが切り替わる。伝統ある所作からストリートダンス要素のある振り付けへと切り替わる。

 最初に足踏みをしながら手を振っていると、奈央は嫌そうな顔をしていた。かっぽれの中で、レゲエが完璧に踊れなかったのだ。

 かっぽれのレゲエは普通の人が踊るには難易度が高い。ランニングマンだけでなく、ロジャー・ラビットというステップや体を波のように打つウェーブなど、ストリートダンス要素が多い。振り付け師がストリートダンサーの人でもあったらしい。

 向日葵の少女が踊っていると、その隣にいるフードの彼に肩を叩かれる。一言何か言うと、奈央は嫌そうな表情を解かして微笑していた。その彼も微笑みを浮かべている。

 早速だが、奈央はランニングマンの部分で間違えている。フードの彼のお陰で間違えても彼女は笑顔であった。少しの間違いでもできなくても、ご愛嬌だ。

 今宵は祭り。間違えてもできなくても、楽しめればよい。

 澄は伝統的な所作から急にダンス要素に切り替わったことに、ちょっと眉を潜めていた。茂吉はダンスに慣れているようで、隣で楽しそうにステップを踏んで踊っている。茂吉が楽しそうなのに、澄は瞬きをして一瞬だけ動きが止まった。すぐに我に返って澄は振り付けに戻る。

 直文は真面目に踊っていた。

 模範的なものでなく、振り付けには木漏れ日のような柔らかさを感じさせる。個性が出てきたのだろう。■■は最初の曲で温められたのか、ダンスの切れを上げていく。力を入れる配分を間違えるとこの後踊れなくなるため、彼女は足踏みと両手の力の入れようを間違えないようにする。

 各地で歌と共に踊る(チーム)があり、彼女達は声をあげないが、彼女たちなりに踊って見せた。

 額に汗ができて頬を伝って流れいく。激しい振り付けであり、夜も蒸し暑さがある。また人も多く、熱気が伝わりやすい。それも踊る祭りの醍醐味。ラストスパートも踊り切り、彼女は踊りを決める。

 曲が終わる。少し間が空き、アナウンスが入った。


《お疲れさまでした! 二曲踊っていただけましたが、いかがでしょうか? この後も踊るためにも休憩を挟みます。では、休みの間に参加した──》


 アナウンスが各(チーム)を紹介している間、彼女の(チーム)は水分補給や汗を拭って気持ち悪さを改善している。

 熱中症は大敵だ。台車には多くの人が集まり、荷物からバッグを出す。■■は荷物のある台車から荷物を出す。直文の分のスポーツドリンクとタオルを出して声をかけた。


「直文さん。これ、どうぞ!」

「あっ、ありがとう」


 彼は気付いて受け取り、■■と共に台車から離れた。ペットボトルの蓋を開けて、口をつけて傾ける。彼も熱気にやられたのか、首と額には汗が流れている。揺れる喉仏は変に色気があり、彼女は汗を拭いながら見てしまった。顔を赤くした■■は我に返って、ペットボトルを開けて飲む。

 今後の為に水分をとっておき、■■は蓋を閉じると直文が話しかけた。


「ねぇ、はなびちゃん。この港祭りには君のお父さんとお母さんは来ていたのかい?」

「……むしろ、二人とも私と一緒に参加してた方ですね。一年前から仕事の関係で来れなくなってしまいましたが、これでも私達の一家はこう見えて、お祭り大好きお祭り一家なのです」

「お祭り大好きお祭り一家」

「弾けるときに、弾けるんです。特に、お父さんは祭りの日には褌をして気合いを入れるんです。濃いでしょう?」


 おかしそうに笑う彼女に、彼はぷっと吹き出して笑った。


「っ……ふふっ、君達はなかなか濃いな」


 笑う彼につられて、名無しの少女も笑った。直文は笑みを消して、周囲に首を向けて「まだ動かないか」と呟く。ナナシのことだろう。作戦を耳にした今でも本当に通じるのか不安になる。アナウンスが(チーム)の紹介をし終えた。


 次の曲が発表される。二つとも地踊りであった。

 荷物を台車に戻して、彼らは整列をし直す。昔ながらの音源が流れていく。先程流れたかっぽれのようなアップテンポの曲ではない。

 かっぽれは新参者。若者に興味を持ってもらうように作られ、盛り上がるように作られた曲。

 清水港の地踊りには清水踊り、港踊り、次郎長踊りがある。今は清水踊りと港踊りを踊ることになった。この清水の港祭りは、戦後の清水の港を盛り上げるために行われたのが始まりとされている。

 清水踊りから始まり、ゆったりとした動作で連衆(踊り手)は手を動かす。

 清水踊りはまだ簡単な動きだからか、奈央は踊ることができる。昔から踊っている人は身ぶりに切れがあり、動作も流暢だ。■■から見て、おばあちゃん世代と呼ばれる人々がうまいのだ。

 茂吉もさっきとは打って変わって、真面目に地踊りを踊り出し、澄は戸惑いを見せる。直文と彼女は彼を見て苦笑した。踊りを終えると別の曲となる。

 港踊り。内容は清水と清水の港について歌っている。

 振り付けも簡単なものであり、清水踊りと共に子供を問わず老若男女が踊りやすい踊りと言えよう。港かっぽれ以外はダンスに近いが、この二つの地踊りは盆踊りと言えるだろう。

 アナウンスで休憩が入る。アナウンスが再開を告げるまで、彼女たちは息を整えていった。

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