表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平成之半妖物語  作者: アワイン
1-4章 花火の少女
41/288

2 勾玉のネックレス

 茂吉から美味しい店を教えてもらい、四人は店に向かうことにした。直文からも茂吉は食通であるため、間違いないと太鼓判を押す。茂吉は単独行動に移り、その他の店の食べ歩きに移る。奈央からは茂吉の胃を心配するが、■■は大丈夫だと言っておく。彼女は彼の食べたカロリーが何処に行くのか見て知っているからだ。

 四人が食べ終え店を出た時、奈央と澄は足を止める。


「はなびちゃん。ここで別行動しよう」


 呼び止められて奈央の提案を聞く。直文と■■はきょとんとする。澄は苦笑しながら名無しの後輩に耳打ちをした。


「要は、奈央は久田さんと君を二人っきりにしたいんだよ。多分、花火の日も気を利かすつもりだね」

「……はいっ!?」


 赤い林檎のような顔をして■■は驚く。澄は離れていき、奈央は悪戯っぽく笑う。


「んじゃ、ファイト!」


 二人は背を向けて、人混みに紛れて消えていった。

 半妖は人より身体能力が優れていると彼女は知っている。今の会話を聞かれたのだろうかと■■は一瞥した。きょとんとして直文は不思議そうに人混みを見つめている。彼らの目的がわからないのだろうか。それとも、気付いてない振りをしているのだろうか。■■は直文の全てを知っているわけではない。

 二人の気遣いに感謝して、直文に声をかけた。


「な……直文さん。一緒にお店の中を楽しみに行きませんか?」

「うん、いいよ」


 彼は■■の手を添えて握る。手を繋がれるとは思わず、彼女は目を白黒させた。何事もなかったかのように、直文は光の笑顔を浮かべる。


「はぐれると大変だからね。じゃあ、行こうか。はなびちゃん」


 相方が見たら「そう言うところだぞ」と突っ込みが来ること間違いなし。彼女は再び顔を赤くして、黙って何度も首を縦に振った。

 手を繋ぎながら歩く。

 やはり直文は目立つ存在であり、周囲の視線が彼に向く。集まる視線の中、彼女にも目線が向けられる。興味と嫉妬、その視線に気付いていない直文に彼女は困惑していた。

 彼女達は店内の店を見ていく。

 商業施設には映画もあるが祭りが控えているため、見るのは機会があるときに。一階の土産物屋を見て、二階へと向かう。

 有名なキャラクターの娯楽施設があった。直文はそのアニメのナレーションの真似をして■■を笑わせた。ゲームコーナーもあり、二人で遊べるゲームをプリントシール機で写真を撮る。

 楽しい時間を過ごす最中、彼女は気付いた。

 していることがリア充なのではと。片隅で爆発しろーと頭の中で聞こえたが、それはそれと片付けて目の前を出来事を楽しむ。

 気付くと、エスカレーターの近くで手作りのアクセサリー屋が目についた。時々、あの場所で手芸屋やハンドメイドの店が来ることがある。

 直文は普通の男性にしては珍しく長髪だ。水に流れるような長く艶やかな髪を持っている。アクセサリーをつけなくても素材がよいため、そのままでもかっこいい。■■はお返しできるかもと思い、彼に声をかけた。


「直文さん。あそこのアクセサリーを見ませんか?」

「いいよ、行こう」


 直文は了解してくれて、二人はアクセサリーの出店に行く。

 店主は暑苦しくマスクと花粉症用の黒いメガネをしていた。冷房が効いているとはいえ、大丈夫なのだろうかと■■は心配になる。

 店主は帽子をかぶっている半袖の中年の男性。予想外な店主に二人は唖然としつつ、商品を見る。

 キラキラとしたアクセサリーの数々。目を引くように輝くアクセサリーや髪飾りを売っているのだろう。無論、普通の物やミサンガに似た髪飾りもある。普通の男性や一般の女性が使っても問題のない全年齢向けのアクセサリー。パンク系や可愛い系など種類は幅広い。


「へぇ、ゴムじゃなくて髪専用の紐もあるんだ。しかも、どれもがハンドメイド。しっかりとしているし質も良さそうだ」


 直文が感心していると、店主は笑う。


「はっはっはっ、うちの家内と皆で頑張って作ったからねぇ。どれもが、おすすめさ」


 マスクで声がこもっている。■■は心配そうに声をかけた。


「あの、夏なのにマスクをしておりますけど大丈夫ですか?」


 彼女の心配に店主は嬉しそうだ。


「ああ、ありがとう、お嬢さん。けど、マスクをしていないとキツいんだ。目も痒いし、くしゃみもする。やになっちゃうよ」


 なかには一年中花粉症に苦しむ人もいると彼女は聞いたことがある。大変だなぁと思っていると、店主が二人を見て訪ねてきた。


「二人は、恋人かな?」

「こ」


 声がハモり、互いを見た。■■は顔を赤くして視線をそらした。彼ははっとした後に照れ臭そうに口を押さえる。

 目の前の青い春に、店主は穏やかに笑った。


「いいなぁ。青くていいなぁ。おじさん、眩しいなぁ」


 言われた瞬間、直文は苦笑いする。青いと言われるほどの見た目と実年齢ではないからだ。二人は気を取り直して、アクセサリーを見る。

 ■■は髪を結うゴムか紐を探す。幾つかの物が目に入る。群青色と金色の混じったヘアゴムと青い勾玉まがたまのついたネックレス。彼女はその二つを手にすると、店主が笑っていた。


「おやおや、お嬢さん。お兄さんと同じものを手にしたね」


 ■■は驚いて、隣にいる直文を見つめる。目線がかち合い、少女は頬を赤く染めた。直文も困ったように笑って頬を赤くする。店主の言う通り、彼も同じように勾玉のネックレスと色違いのヘアゴムを手にしていたからだ。

 二人を見て店主は微笑ましく笑い声を上げる。


「はっはっはっ! うん、いいねぇ。そんな仲のいい二人を見ておじさん。ただでそれをあげたくなっちゃった。ううん、いや、あげよう!」

「えっ、それは困ります! ちゃんとお金は払わないと……」


 困惑する彼女は店主を見る。店主はメガネの奥で笑っていたような気がした。


「そもそも、ヘアゴムとそのネックレスに値札がついていないのを疑いなさい。商品に値札がないのはおかしいだろ?」


 彼女は気付いて商品を見る。店主の言う通り、全てのアクセサリーに値札がない。これでは正規の値段がわからない。店主は直文に注意をした。


「特に直文。すぐに私に気付かないとは浮かれすぎだ。これから来る出来事に備えて、気を引き締めなさい。まったく微笑ましくて恨めしいぞ。このこのー♪」


 肩を拳で軽く小突かれる。揶揄(やゆ)する店主の言葉に直文は我に返って、眉を下げ険しい顔をした。


「まさか、貴方はっ!」


 店主がぱちんと音を鳴らした時に強い風が吹く。二人が身構えて目を瞑るほどのものだ。店内で強風が起きるとはあり得ない。窓や入り口の扉は開けられていなかった。

 直文がすぐに目を開けた。

 彼女も目を開けるが、目の前にアクセサリーの出店は綺麗さっぱりさっぱりない。。最初から店なんてないと言うような痕跡のなさ。強風だったはずが、周囲への被害は何もない。二人の手にしたヘアゴムと勾玉のネックレスだけが残る。直文は苛立ちながら、店があった場所を見つめていた。


「あの✕✕上司……」


 彼女にも聞こえるほどの悪態。だが、それよりも驚きなのは組織のトップと会った真実。向こうから接触してくるとは思わず、■■はしばらく呆然とするしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ