9 この後 前と今の彼女
日が暮れて、夜になった頃。直文と茂吉は元の姿に戻り、三人はある店に行っていた。建物の雰囲気は良く、駐車場の車と店内を見ても客もそこそこいる。
地元の有名なレストランはバイキングまたはビュッフェのスタイルであり、体に優しいと謳っていた。店名が果物の名前にちなんでいるため、覚えやすい。席はないかと思いきや、運よく三人分の座れる席があった。店員に案内されて彼らは説明を聞き、それぞれ食事を取りに行く。
ビュッフェスタイルで様々な料理がある。野菜を含んだ料理が多く、健康を気遣う人には嬉しい。お箸とフォークを取って、お皿を乗せたお盆を手に彼女と彼らは料理を取っていく。
天ぷらは揚げたてを食べられ、お寿司もあるようだ。■■は好きな料理を取っていく。直文はお手本のようにバランスよく料理を取っていくが、茂吉は手当たり次第にあるものを手にしていく。
席について、三人で手を合わせた。
直文と■■は野菜が多めのメニュー。茂吉はカオスな料理。直文は男性なので多く食べるのは分かるが、茂吉は通常量以上をとってきている。彼女は重量級の武器を軽々と扱うのを見て、たくさん料理を食べる理由がわかった。■■はお店の料理を食べて、口元を緩ませる。美味しくて、彼女は次の料理は何を取るのか目星をつけた。
フォークで天ぷらを刺して、茂吉は溜め息を吐く。
「ホンット、俺たくさん食べるよねー。まぁ仕方ないんだけどさぁ。ねぇ、なおくん」
「もっくんは重いものを扱うのが得意だからね」
直文は箸で肉と野菜の甘酢あんかけの肉を掴む。それをじっと見つめて、彼は眉間に皺を作る。
「けど、次は絶対に逃さない」
肉を標的と捉えて、彼は怒りながら口にして噛んでいく。直文を見つめて、彼女は考える。名前を取り戻そうとしているのは、自分の為と■■は解った。色々と話したくない理由も今日の出来事でよく解る。今の彼と彼女の関係は物語としてはロマンチックだ。直文は執着している上に犯罪をしているように思え、罪悪感があるのだ。本当に■■の幸せの為に行動をしている。
■■は直文に対する気持ちに変化があるが、彼女は気になった。茂吉から聞いた話はしない方がいいだろう。彼女なりにばれないように質問した。
「あ、あの、直文さん」
「ん、はなびちゃん。どうしたんだい?」
直文は顔を向ける。水を飲もうと、コップを手にしていた。■■は考えつつも、彼に質問をした。
「例えば、なのですが……」
「うん」
「直文さんは昔恋した人がいたとします。けど、その人はもういなくて、代わりに似ている人が今生きているとします。貴方はその人を大切にします……か?」
「……それはその昔の人が俺の恋人前提としての話なのかい?」
不思議そうに聞く彼に、彼女は慌てて首を横に振る。察しが良く、彼女はバレていないか不安になった。否定したのを見て、直文は黙って考える。考えが出たのか、■■に視線を向けてはにかんで照れる。
「そうだね。答えるなら、どんな形であれ大切にするよ。俺はその人が幸せに生きれば嬉しい。幸せに笑ってくれるだけで嬉しいよ」
光のような微笑みに、彼女は頬を赤く染めてほっとする。答えは人によって捉え方が違う。彼女は彼女なりに捉えて納得し、胸を押さえて高鳴りを感じる。茂吉はにやにやしており、直文は不思議そうに彼女を見た。
「なんで、こんな質問を……茂吉は知っているか?」
「ん、ふぁんふぉふぉ?」
咀嚼しながらすっとぼける茂吉。自然にこなすため、違和感はない。直文は「そうか」と何事もなかったかのように、水を飲む。
ほっとして■■は料理に手をつけていく。が、安心した表情を逃さない彼ではない。
一口水を飲みかけて、直文は動きを止める。コップを置いて、艶やかな唇を閉じる。しばらく思案していると、直文は目を丸くしていった。拳を作り、物凄い剣幕で茂吉に問いかける。
「おい、茂吉。お前まさか、彼女に一切合切打ち明けたんじゃないんだろうなっ!?」
茂吉は食べ終えると、あざとく小首を傾げた。
「えー、なおくん。何のこと?」
「わざとらしくとぼけるなっ! 名誉毀損とプライバシーの侵害だぞ!?」
ばれたらしく、彼女はびっくりする。しかも、茂吉は抗議する言葉を言い当てていた。■■はなんでばれたかわからない。が、直文の中で根拠があった。彼女が知らなければこんな質問しないという根拠だ。
怒られた本人は呆れた目で直文を見つめた。
「あのさー、直文が打ち明けないのが悪いんだぞー。本人の精神に負担をかけるのはよくないし。そもそも、はなびちゃんを不安にさせるのはよくないと思うなぁ」
正論を突かれて直文は黙る。不安にはなったが、■■は直文の為に尊重したかった。彼から話すのを待とうと思っていたが、茂吉から聞いてしまった。彼女は申し訳なくなって謝る。
「直文さん。ごめんなさい。茂吉さんから大方の話は聞きました。……あと、貴方と貴方の昔の人の話も聞きたいと、お願いしてしまいました」
「いや、はなびちゃんは悪くない。俺とこいつのせいだ」
謝られて直文は首を横に振って、茂吉を思い切り指差す。茂吉は悪びれもせずに、ご飯を美味しそうに食べていた。彼は噛んだものを呑み込み、直文に瞬きをする。
「なおくーん。人を指差しちゃいけないって喜代子先生に教わったでしょー」
「お前は、たかむらさんみたいなオチャメはやめろ! 茂吉」
「ちょ、あの人と一緒にするなよっ!? 直文!」
「一緒にしたくなるって!」
言い合う二人に■■は苦笑して、ご飯を食べる。
美味しい。何故か、彼女は家族といる時よりも美味しく感じた。一つ一つおかずをつまんでいき、少女は気付く。名前があったときのように団欒を感じている。前よりも、現実をよく感じているからだ。疎外感を感じない。ここにいるのだと、よりわかってきたのだ。
彼らの、直文のお陰なのだろう。■■はお箸をおいて紙タオルで口を拭く。直文を見た。
言い合いが終わったらしく、茂吉への怒りを鎮めようとご飯に手を伸ばそうとしていた。視線に気付いて、直文は目が向く。タイミングよく向いたため、彼女は名前を呼ぶ。
「直文さん」
「どうしたんだ? はなびちゃん」
「……守って一緒に居て、こんな私の為にたくさん色んなことをしてくれて嬉しいです。ありがとうございます。直文さん」
彼女の感謝に直文は瞬きをし、顔を赤く染めて手で口を押さえる。とても照れていた。直文は目線をあちこちに飛ばす。少しして彼女に向くと、恥ずかしながら感謝をする。
「俺もありがとう」
感謝をして、感謝をされた。直文が照れたのにつられて、彼女も照れる。茂吉が「ひゅーひゅー」と揶揄してきた為、再び直文が怒るのであった。
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