表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平成之半妖物語  作者: アワイン
第一幕 1 序章
2/300

夏祭りの少女

 平成17年。西暦2005年の夏。

 知名度は高くないが、ある県の祭りで夏祭りが行われる。この祭りが終われば、秋が来るのだと一部の市民は言う。

 その中で祭りを楽しそうに見ている少女がいた。小学四年生の少女は地元の祭りを親と一緒に楽しんでいる。

 スピーカーからは明るく軽やかな曲が流れてきた。通行を封鎖した道路で法被を着た人々が踊る。花火の法被を着た少女はお面を頭につけて、踊る人々と共に踊っていた。彼女は毎年踊りに参加している。

 ロックの利いた曲調を楽しみながら踊った。

 

「よいーとな、よいよい!……あれ?」

 

 少女は下駄の音しかないと気付く。周囲には人がおらず、提灯の明かりもない。

 首を動かす。後ろには人々がいる祭りの通り。横には小さな低木。彼女は建物の間にいた。真正面には小さなお社が存在している。

 風情のあるボロいお社。少女は瞬きをして、何気なく両手を合わせながらお社にお参りをした。

 どんっと衝撃が襲ってきて体が揺れる。少女は驚いて目を開けた。いつもの屋台と踊る人々、見物する人々が歩道にいた。彼女が参ったお社はなかった。賑やかな音楽と人々の声が聞こえ、少女はびっくりする。

 

「今の……なに?」

 

 何が起きたのかがわからないまま、彼女は驚く。少女の母親が遠くにいる。彼女を見つけて駆け寄って来ると、目の前に来て少女を叱る。

 

「もう、やっと見つけた。楽しいのはわかるけど、勝手に行かないの!」

「……ごめんなさい」

 

 彼女が謝ると、母親は仕方がないと息を吐く。

 

「もう、次は気を付けなさい。■■は楽しくなると周りが見えなくなるんだから」

 

 少女は目を丸くする。自分の名を呼ばれたのはわかったが、その名前がわからなかったのだ。娘の様子が気になった母親が声をかける。

 

「■■。どうしたの?」

 

 聞かれて、彼女は恐る恐る聞く。

 

「……お、お母さん、私の名前わかる?」

 

 母親は瞬きをして、おかしそうに笑った。

 

「当然よ! あなたは■■。■■よ。もう、何を言っているのかしら。ほら、行くわよ」


 手を引かれて、少女は何も言わずについていく。母親の口から自分の名前が出ない。彼女はお母さんがふざけているのだと思った。だが、名前を自分の口で滑らした。


「■■……私は……■■■■…………えっ……」


 彼女は呆然とした。自分でも名前は言えない。

 この日の夏、■■■■は自分の名前が無くなってしまった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ