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平成之半妖物語  作者: アワイン
3 番外
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8 十年後の三藤

【速報です。静岡県の××市の山中にて、手足を切断された三人の男子高校生が見つかりました。山を登った人にみつけ、通報したとのことです。奇跡的に息はあり急いで救急搬送されました。出血量が多く一時は生死を彷徨さまよいましたが、輸血でなんとか命を繋ぎ止めた模様です。

一人は両腕両足を切られ、もう一人は片腕、もう一人は両足を切断されていたとのことです。殺人未遂事件として警察の捜査は続いており、前に起きた山中遺体遺棄事件との関連性を調べております。


記者は、病院にいる三人の状態を聞いたところ、何度も夜目覚めては『ごめんなさい』と謝罪をし続け、時には恐慌状態におちいると──】


 十年前のこのニュースを三藤は覚えている。

 自身の母校──通っていた学校の生徒と言う噂があったからだ。裕貴、柚木、戒斗。この三人は夏休みを開けてから登校しておらず、卒業式にも顔を出していない。またあの三人を擁護していた先生は、あの年の夏休みの最中に退職した話を聞いた。その後、交通事故にあって半身不随なったとらしい。

 三藤はあの三人と一人の先生のことを覚えているが、思い出したくもなかった。

 今どこで何をしているのかわからない。

 親に捨てられた。もしくは、障害者施設に通っているか。

 噂でしか、彼は行方を知らない。いいや、詳しく知りたくもなかった。

 だが、十年前の夏休み。狸のお守りが付いた日の事だけは、三藤はよく思い出せない。

 あの日から少しずつ日々が順調に過ごせて、親にも虐められていた真実を打ち明けられた。三藤の親は話さなかったことを叱ったが、虐めに関しては怒ってくれた。三人の虐めっ子の親に連絡をして、親からは謝罪を得たが本人が出てくることはなかった。

 顔を出したとしても、怯えて家の中に戻っていく。


 故にあの日に何があったのか、三藤は知りたい。


 今でも狸のお守りは持っている。少し色あせボロボロになってきているが、狸のお守りのお陰で何とかなってきたような気がしたのだ。日々が平穏に過ごせていく中、彼はオカルト系に触れることはない。

 もうお守りが必要に感じなくなった時、彼は地元にある大きな神社の返納所にてお守りを返してきている。


 参拝をし、感謝の気持ちを込めて三藤はお守りを置いてきた。


 何気なく社務所に顔を出すと、色とりどりのお守りがある。その中に目のついたお守りを幾つか手にする。『開運厄除』の守りを二つ。交通安全を一つ。そして、『安産祈願』のお守りを一つ。

 今の三藤は結婚しており、奥さんが子供を身ごもっている。奥さんに何事もないようにお守りを買い、少しでも不安を減らそうと考えていた。

 彼は鳥居をくぐって神社を出る。

 買い物を三藤は頼まれており、メモを手にして買うものを確認する。最初は慣れなかったが、今の三藤は何が必要なのかを何となくわかっている。わからない場合は、スマホのメッセージアプリで聞く。

 かつて怯えていた少年は、少しでも奥さんの負担を減らそうとする良き夫となっていた。


「ああ、急がないと!」


 家で待つ妻と産まれてくる我が子のために、彼は駐車場へと向かう。



 補足。彼が今まで持っていた狸のお守りは、守護に長けた隠神刑部いぬがみぎょうぶのお守りでした。




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