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平成之半妖物語  作者: アワイン
3-4章 止まない雨はない
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『境界駅の改札口』

 怖くないけど、ちょっと不思議な話をするぞ。

 きさらぎ駅はみんな知ってるよな。つきのみやとかかたすとか、やみ駅とか。列車に乗っていると奇妙なことが起きて、伊佐貫いさぬきっていうトンネルを通り抜けるときさらぎ駅に通づるとかの話。


 俺さ、実は小さい頃に随分前にその駅につながる改札口を通ったことがあるんだ。


 子供の頃だったかな。知らない内に切符を通して、切符を取って改札を抜けようとしたら雰囲気が違ったんだ。


 昭和初期を思わせる古い駅の改札口。駅の看板には『きさらぎ』と書かれていて、掲示板に張られているポスターは昭和前期の貴重なものだった。

 きさらぎ駅っていうのは間違いないんだけど……荒廃した駅って感じゃない。おどろおどろしい雰囲気はなくて、昭和レトロの趣きがある駅だった。


 改札口は昔ながらの手動できるもので、事務室から人が出てきたんだ。鬼仮面をした駅員の男女だった。

 

 最初は怖くて逃げようと思ったんだけど、その鬼の男の駅員さんに捕まった。何かされると思ってかなり泣いたんだけど……、その時の鬼仮面の駅員さんはかなり戸惑ってた。

 

 女の方の駅員さんも出てきて、泣き叫ぶ俺をあやそうと必死になってたけな。結局鬼の仮面が結構怖かったんだよな。その二人は仮面を外して、素顔で対応してくれたんだ。

 

 いい人? あうん、本当にあの二人はいい人だよ。お菓子や飲み物を出してくれたし、俺がここに迷い込んだのを知って元の場所に返してくれたから。

 

 どうやら、時々俺のような迷い込む人もいるらしい。なんで不思議なのかって言うと、改札口を通るのが変な奴らだったから。



 烏帽子を被ったような貴族だったり、軍服に仮面をした人だったり、角や耳の生えた人間が駅の改札を通っていた。とどめは幽霊が通ったり、絵巻で出てくるような妖怪や鬼が通ったりしてた。

 一体の妖怪が人間の俺に気付いて俺を食おうと危機もあったけど、駅員さんがすぐに助けて成敗してくれたんだ。


 正直結構かっこよかった。特撮見てるみたいで結構しびれた。


 その後、俺が帰す目処が立ったのか。改札を通れば帰れるよって教えられて、バイバイしたあと改札を通ったら本当に元の駅に戻っていたんだ。親は何事もなかったかのように、俺に声をかけてた。その後の帰りもドキドキして改札を通ったけど、またあの時のように異界に巻き込むことはなかったな。


 そんな俺は戦う駅員さんにしびれて、立派な駅員さんになってます。戦う駅員さんに憧れてから肉体づくりをしているので、時々酔っぱらいや乱暴者の対応をして人に感謝されることも多くなったんだ。


 怖くないけど、不思議な話だろ?


 でも、あの駅看板の線路線には『ごくらく』、『このよ』、『よもつひらさか』とか、『へんごく』、『よみ』、『じごく』とか書かれてたような気がしたんだけど……気のせいだと思う。



『境界駅の改札口』


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