表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平成之半妖物語  作者: アワイン
3-2章 梅雨前線の発達
132/196

『おのたぬき』

 あるひ、ぼくのまちにはたくさんのたぬきさんがいたんだ。もふもふとしていてかわいらしくて、たぬきさんはまちのひとからもかわいがられてた。でも、まちのえらいひとがかわってから、たぬきさんをくじょしはじめたんだ。

 たぬきさんはかわをはげばうれる。たぬきさんはにくをちょうりすればうれる。

 もともとたぬきさんをよくおもわないひともいて、だんだんとたぬきさんをかっていったんだ。

 

 ぼくはやめてほしいとおかあさんとおとうさんにきょうりょくしてもらって、おえらいさんにおてがみをかいたんだ。

 おてがみをかいたのはぼくだけじゃなくて、おなじまちのひともいたんだ。こうぎぶんっていうらしいんだ。ぼくもまちのひととおなじきもちで、やめてほしいきもちのおてがみをおくったんだ。


 でも、えらいひとはやめてくれない。だんだんたぬきさんがへってくぶん、まちがゆたかになっていく。ぼくとおなじきもちのまちのひともゆたかになっていくまちにまけて、たぬきさんをうりにだした。

 もうどうしようもできないんだとかなしくなっておとうさんとおかあさんになぐさめられながら、きょうをすごしたんだ。

 あさになったら、ぼくはせめてたぬきさんをえのなかでくらせるようにとたくさんのたぬきさんをかいたんだ。


 かいていくうちに、ぼくはたぬきさんをたくさんころしたにんげんがゆるせなくなって、おのをてにしたたぬきさんをかいたんだ。

 そのたぬきさんがわるいにんげんをばっさばっさおのでたおしていくえをかいていったんだ。


 あかいくれよんでちをどばどばと、おのでくびをはねておのでてあしをきって、たぬきをあいするにんげんをまもるひーろーの『おのたぬき』をつくった。

 なんどものそのえをかいているからおかあさんにもうかいちゃだめっておこられた。


 『おのたぬき』。『おのたぬき』。たぬきをかってにくじょしてうりさばくわるいにんげんをたおしていくひーろー。


 『おのたぬき』。『おのたぬき』。ぼくたちのような、こえをあげるのがよわいよわいにんげんをまもるひーろー。


 しばらくしてぼくがたぬきのえをかかなくなると、あるじけんがおきた。まちのえらいひとがなくなったらしい。

 へやにはいくつものどうぶつのあしあととときりきずがあって、そのえらいひとのしんたいにあたまはなかった。おのできられたようにすっぱりとなくなったらしい。


 『おのたぬき』だ。『おのたぬき』がやったんだ。そうおもってぼくがこっそりとかくしたいちまいの『おのたぬき』のをえをみてみた。


 そこに『おのたぬき』はえがかれてなかった。『おのたぬき』はこのえからでていってえらいひとをころしたんだ。


 あした、はしのほうのおじいさんのはらがきられた。

 あさって、となりのおばさんのてあしがきられた。


 よくあさ、まちなかのどうろにはあかいにくきゅうがいくつもある。


 ところどころのひとのいえでは、おのできられてしんだひと。いきのこったひともいる。いきのこったひとはおのをもったたぬきにおそわれたとはなした。

 ぼくのすむまちでおこるじけんはおとうさんとおかあさんをこわがらせた。


 『おのたぬき』。『おのたぬき』。みなをこわがらせるたぬき。


 『おのたぬき』。『おのたぬき』。おとうさんとおかあさんをこわがらせるばけもの。


 おとうさんとおかあさん、ぼくもいつか『おのたぬき』におそわれる。そうおもうと、とてもこわくなって『おのたぬき』がえがいてあったかみをビリビリにやぶいた。

 もうあらわれるな、もうここわがらせるなと。

 ビリビリにやぶいてあしたのあさ。『おのたぬき』のじけんはぱったりとおきなくなった。

 もうぼくたちをこわがらせる『おのたぬき』はいないとほっとしたけど、そのひのよる。

 ぼくはゆめをみたんだ。

 おのをもったたぬき『おのたぬき』だ。ものすごくゆがんだひょうじょうでいかっていた。



「おれをうんだくせに、おれにねがったくせにによくもこばんだな。ゆるさない。もういちどおれをえがいたらにんげんをころしつくしてやる」



 めをあけたらあさで、ぼくのねているへやのかべとゆかはおののきずでボロボロだった。


 とても、こわいゆめだった。ぼくはもうこのさきたぬきのえはえがくものかできめた。



 でも、しばらくしたあとで、『おのたぬき』がとおくのほうにあらわれたらしいのです。


 ぼくは『おのたぬき』をえがいてません。いったいだれがえがいたのでしょうか。



『おのたぬき』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ