職業スキルについて
とても良く眠れた。何年ぶりに起きたかのような感覚とともに目が冷めたリアルは村の散策を始めようとしていた。
リリーが朝ごはんを食べるか聞いてきているが、そんなことよりこの世界について調べたくてたまらない。
昼は適当に食べるから良いよ!といい、家を後にした。
生まれ育った村は、田舎のため村としか名前がついていない。戸籍的な概念はないのだろうかこの世界には?と思うが、これまでの経験上、税で作物を渡すシーンを見たことがあるため人頭は数えられているみたいだ。
生活レベルは中世くらいだろうか、そこまで道も舗装されておらず、水汲みも井戸でするというような生活水準である。しかし、日本とは違いスキルにより歪に発展している部分もあるように感じる。例えば、電気のようなものはなさそうだが、電球のようなものがある。これは何か街のおばあちゃんに聞いてみると魔光球と呼ばれるものらしい。電気の代わりに魔素が流れることで電気がつく所謂魔道具のようなものだろう。
作り方はどうなっているのか、など非常に興味深いがおばあちゃんに分かるとも思えず、その場を後にすることにした。
取りあえず職業について調べてみるか!と思い、この前5歳を迎えたドルゴの元へ向かうことにした。
街のハズレの鍛冶場がドルゴの父の工房となっている。ドワーフという種族は何故か武器関連の職業スキルを手に入れることが多い。ドルゴも大の武器好きで父親の工房で鍛冶見習いをずっと続けている。
「おーい、ドルゴいるかー」と鍛冶場に声をかける。
誰もいないのか何も返事がない。
仕方ないなぁと思いながら中に入ろうとすると後ろからドルゴの父のイサークに声をかけられる。
「リアルじゃないか。どうかしたか」
リアル「ドルゴを探してるんだ。」
イサーク「あぁ、最近はこの鍛冶場に来てないんだ、山にでも行ってると聞いたが、、」
リアル「そうなんだ、探してみるよ」そう言いながら煮えきらないイサークを横目にその場を退散した。以前のような良好な関係は結べてないらしい。何か家庭内で問題でも発生したか?と思いながらも山を目指すことにした。
山につくと一人、薪を集めているドルゴ。この世界は、貧しさ故か幼少期より仕事の頭数に入れられる世界のため、子供でも仕事に励むなぁ。などと日本人的思想を手に入れたリアルは思っていた。
「おーい、ドルゴ、調子はどうだい!!」ドルゴの肩を叩くと、浮かない表情のドルゴ。
「なんで元気ないんだよ!俺が怪我したのは自分のせいだぜ!」リアルはそう言っておどけてみせた。
「いいや、リアルは関係ないんだ。実は一昨日が職業の儀だったんだよ。」そのようにドルゴは言った。
職業の儀、5歳の誕生日に神殿に行くと信託が降りる。自分が何の職業か分かるようになるというものである。職業に関しては自分が心よりその職業と分かるだけでなく、職業に関するスキルを覚えるため、実質的に隠蔽できない情報となっている。例えば、剣士という職業だったら剣を利用したスキルを覚えるというようにある意味ごまかせないものとなっている。実際には剣士の上位互換の剣豪という職業という可能性もあるが、往々にして変に過小評価しない方が良いというのが一般常識である。
「ドルゴは何の職だったんだ?」とリアルは恐る恐る聞くことにした。どうせここで聞かなくてももう街の噂なのだろう。「魔術師(土)だよ。」リアルは内心、魔術師?!?魔法が使えるってことか!?!大当たりじゃないか!!!と思ったが、浮かない表情なので、色々と深堀りしてみることにした。
「魔術師(土)って珍しい職業なのか?特にドワーフだと。」ドルゴはうつむきながら答えた。「魔術師(火)と鍛冶師スキルだけでドワーフの9割を占めるんだ。実際に火を操り、鍛冶を操ってこそドワーフって考える人も多いんだ。僕のお父さんは職業スキル無しでも鍛冶は出来ると言ってくれているけど、普通にやると絶対に職業スキル分の差が出るよ。」ドルゴは泣き出してしまった。5歳にして鍛冶の才能がないよと言われたようなものだから仕方ないことなのかもしれない。
リアル「ドルゴは魔術師(土)のことどれだけ知ってるんだい?僕は知らないけど絶望するのはまだ足掻いてからでもいいんじゃない?」本心からの気持ちだった。鍛冶ができなくても魔法が使えるだけでも出来ることはとても多いように感じる。
その後もドルゴを励ましながら村に帰った。
この世界では職業スキルにあった職業を選ぶという関係上、ある程度若くして職が決まってしまう。これは逆に良くないかもなと思いながら、自分の家に戻った。
取りあえず自分の5歳の誕生日までに職業スキルについてまだ調べるぞ!明日、村の友達のアークが5歳の誕生日ということで村の教会に信託を貰いに行くという情報を手に入れたので、それを楽しみに寝るとするかー。