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メタバース・プリズン  作者: 篠塚しおん
神官を追って
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神官を追って -1-

 ルナにログインする。

 昨晩はいい気分で酔った後、いったんログアウトすることになった。フミトと呑み交わす中で、二人が同じ街に住んでいることが分かった。さすがに徒歩で移動できるくらいのご近所というわけにはいかなかったが、電車で三駅しか離れていなかったのだ。いったんログアウトし、現実世界でコージの家にフミトが訪れ、朝まで休んでからログインしたのだった。


「昨日は初めてのお泊りしちゃったっすね」

「他人が聞いたら勘違いしそうな表現するなよ」

「一緒の場所にログインできたってことは、オレもコージさんの家をセーブポイントにできるっぽいっすね。パーティ組んだからかな」

「かもな。身体は俺ん家にあるのに、ログインしたらフミトの家に登場したら混乱するし、よかったじゃないか」

「そっすね! じゃあ、今日はどうします?」

「また掲示板でクエストがないか見てみよう」

「了解っす!」


 掲示板にはいつものように依頼がいくつか貼り出されていた。

「コージさん! なんか牛丼届ける依頼ありますよ!」

「パスで」

「なんでっすか!」

 もうこっちが腹いっぱいだよ。コージにとっては初クエストなのに、何の思い入れもないクエストになり果てている。そんなコージの目に止まった、初めて見る依頼がひとつ。



――――――――――――――――――――

クエスト内容:神官さまを探して

いつも遊んでくれる神官さまが突然いなくなったの。

お願い!神官さまを探して!

――――――――――――――――――――



 内容は人探しのようだ。

「フミト。これ、受けてもいいか?」

「もちろんっすよ!」

 フミトは張り紙を見もしないで即答した。コージは苦笑しながらも、全幅の信頼を寄せてくれていることに嬉しさを感じた。二人はクエストを受注し、さっそく上空の矢印をヒントに依頼主のもとへと向かった。


 辿り着いたのは、住宅団地に囲まれた庭。子供が遊ぶ遊具やベンチが置かれたその空間に、大の男二人が立っている。

「本当にここなんすかね?」

 着いたはいいが、親子連れしかいない。母親たちが、こちらをちらちら見ながらひそひそ話をしている。子供の手を引いて団地の中に入ってしまった親子もいる。公園ならまだしも、明らかに子供用に用意された中庭に大人の男二人で突っ立っていたら、怪しまれるのも仕方ない。


「居たたまれないな……」

 とっとと依頼人を見つけたいのだが、矢印の場所に到着しても依頼人が誰か分からないパターンは初めてだ。その上、下手に声をかけたら余計に怪しまれてしまいそうで、探すに探せない。こういうとき、空気を読まずに動ける奴は強い。

「神官を探してる人いますかー? オレ達、掲示板の貼り出しを見て来たんすけどー!」

 フミトは手を挙げて大声で呼びかける。多くの保護者が不審者を見るような目を向けてくる中。


『それ、ボクだよ!』

 半袖半ズボン姿の小学校低学年くらいの少年が駆け寄ってきた。慌てて母親が追いかけてきて腕を掴んで引き寄せるが、少年は振り払ってコージ達の前で顔を上げる。

『ボクたちとよく遊んでくれる神官のお姉ちゃんがいるんだけどね、最近見かけないんだー。だから、何かあったのかなって思って。お兄ちゃんたち、探してくれるのー?』

 お兄ちゃん、と呼ばれて少し嬉しかったのは内緒。

「うん、探してくるよ。その神官のお姉ちゃんの名前は何て言うのかな?」

『ミズキお姉ちゃん!』

「ミズキさんっていうんだね。いつからいなくなっちゃったの?」

『うんとねー。三日前からかなあ。ボクもボクの友だちも、お姉ちゃんと遊んでもらいに神殿によく行くんだ。だけど、三日前からお姉ちゃんいないの』

「そうなんだ。旅行に行くとか、出かけるとか、何か言ってたかな?」

『いちばん最後に遊んだ時に、アマト鉱山に行くって言ってた! すぐ帰ってくるって言ってたのに、全然帰って来ないから、心配なんだ』


 アマト鉱山といえば、コテツから入手を強制されている宝――イオツミスマルがある場所だ。


「優しいな、ボウヤ。分かった、俺達がミズキさんを探してくるね。いつもお姉ちゃんがいるのはどこの神殿?」

『ヴェルナ神殿だよ!』

「ありがとう。探してくるから、ちょっとの間、待っててくれるかな?」

『うん! 僕のお願いきいてくれてありがとう! これあげる!』

 少年はポケットをごそごそと探って、何かを差し出してきた。小さな手の平の上にあったのは、うす茶色の飴。べっこう飴だ。

「ありがとう。でも、ボウヤのおやつだろう?」

『いいの! 誰も僕のいうこときいてくれなかったのに、お兄ちゃんたちはきいてくれたから! もらってほしいの!』

「そうか。じゃあ、もらうね。ありがとう」

 飴を受け取って、頭を撫でようとしたのだが、母親にものすごい勢いで引き離されてしまった。会話の内容を聞いても、まだ不審者扱いか。


『ママ、やめてよ、お兄ちゃんたちは僕のお願いをきいてくれてるんだよ』

 少年の弁明に耳を傾ける素振りもなく、腕を引いてずんずん団地に向かい始めた。さすがに傷つく。

『ボク、トシヤっていうの! お兄ちゃんたち、ミズキお姉ちゃんのことよろしくねー!』

 だんだん小さくなるトシヤに向かって手を振り、コージ達はそそくさと団地を後にした。子供は他人を心配して貼り出しまでしてるというのに、かたや母親は勝手に怪しんで勝手に避けていく。子供を守るためには手段を選んではいられないが、それにしても見境なく不審者扱いされたのではたまったものではない。

「なんか誘拐犯みたいな扱いで気分悪ぃ」

 コージも同感で良い気分はしないが、トシヤの優しさに免じて、ここは引き受けてやろう。二人はトシヤが言っていたヴェルナ神殿に向かうことにした。ご丁寧に空の矢印が次なる場所を示してくれているので、フリーパスでタクシーを使って移動した。


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