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メタバース・プリズン  作者: 篠塚しおん
パーティ結成
24/68

パーティ結成 -4-

 コージはレベル7、フミトはレベル8。たしかに、プレイ日数の割には差がそんなにない。しかし、経験値の方はそれなりに差がある。


「レベルアップに必要な経験値がかなり必要なんじゃないかな? レベル差は一だけど、経験値の差は三千近くあるし」

「いやー、それにしてもっすよね」

「俺は先週は手伝いクエストしかやってなくて、昨日ようやく戦闘クエスト受注してクリーチャーと初めて戦ったんだけど。フミト君はどう過ごしてたの?」

「フミトでいいっす。オレは戦闘ばかりだけど、アーチャーは戦士より戦いにくくて、あんまり調子が上がんなかったっすね……。アーチャーは成り手が少ないから重宝されるって言われてテンション上がったのに、あの転職屋のゴリラめ」


 転職屋のゴリラとはサチコのことだろう。本人の目の前で言ったら、ひと睨みで命を持っていかれそうで恐ろしい。フミトは毒づいているが、コージの印象としては、サチコは見た目はともかく適職を見極める腕はありそうだった。


「多分だけど、フミトはパーティのサポートに入った時に力を発揮するタイプなんじゃないかな。サチコさんから重宝されるって言われたんでしょ? それって、パーティに入ると重宝されるって意味だと思うよ」

「えー! じゃあオレって主人公にはなれないってことっすか……」

「みんな主人公みたいなもんなんじゃないかな……?」


 主人公=戦士という認識になるのは分からなくもないが、オンラインゲームでも役割が違うだけで、別に誰が主人公とかはない。強いて言えば、みんなが主人公だ。


「一人だったから、うまくいってなかったってことすか? それなら、パーティ組んだ今なら超活躍できて超稼げるんすかね」


 それは知らん。とりあえず曖昧に笑ってごまかしておいた。


「そうと決まれば、早速出かけましょ! 敵を倒しまくって稼ぎまくってレベル上げまくりましょ!」


 腕をぐいぐい引っ張られて荒野へと連れていかれながら、まさしくわさわさ弓師だなぁと思ったコージだった。こうしてめでたくパーティとなったコージとフミトは、荒野の戦いに出かけるのだった。


 見晴らしの良いハンダ荒野の先、アラハド草原をひとまずの目的地にして二人は歩く。荒野はグリーンワームばかりで物足りないし、せっかく二人なのだから、一人では足踏みしてしまう場所まで行ってみたい。そうして草原が目の前になった頃、クリーチャーと遭遇した。グリーンワーム二体とアイバット二体の合計四体が同時に現れた。


「二対四すか!? 卑怯っす!!」

「そんなこと言っても仕方ない! 一匹ずつ確実に倒していこう!」


 一対二の戦いなら、昨日経験した。魔法の吹き矢もある。しかし、さすがに四体同時には相手にできない。何とかフミトにも頑張ってもらうしかない。まず一番近くにいたグリーンワームに斬りかかり、一撃で屠る。間髪を置かずに距離を取り、二体目のグリーンワームの体当たりと飛んできた火球を寸でのところで躱す。フミトはアイバット一体を討ち取ったところだった。


「よっしゃ! これで二対二でイーブンっす!」

「フミトはそのままアイバットを頼む!」

「ラジャっす!」


 その後は特筆することもなく、難なく勝利して終わった。パーティを組んでの初戦闘は大勝利に終わった。


「すげー! オレ一人だとこんなにスムーズに戦えなかったっす! コージさんすげえ!」


 そう真っすぐな賞賛を向けられると、どうにも痒くなってしまう。現実世界では歳を追うごとに褒められることが無くなり、どれだけ成果を出しても「当たり前」になってしまう。ルナに来てからというもの、いろいろな人から御礼を言われたり評価してもらえたりしている。居心地が良すぎるのだ。


「俺の方こそ、アイバットを引き受けてくれて助かったよ。空の敵は剣じゃ届かないから、道具を使わないと倒せなかったんだ」

「オレは敵に近づかれると焦っちゃうから、グリーンワームを倒してくれてありがたかったっす!  つまりウィンウィンってことっすよね! チームプレイ最高じゃないっすか!」


 接近戦はコージが、遠距離はフミトが対処することで、お互いの強みと弱みを補い合う。その後もバラバラとクリーチャーと遭遇するが二人のコンビネーションの前では敵ではなく、そして勝利する度にお互いを讃え合った。そしてアラハド草原を進み、アマト鉱山のある山脈の山裾が見えていた辺りで、一旦休憩を取ることにした。


「ふう。結構遠くまで来たな」

「そうっすね。ちーと疲れたっす。そして腹減った……」


 フミトは草むらに大の字に寝転がった。弱いとはいえ敵と遭遇する可能性のある場所で寝転がるとは……怖いもの知らずだ。かくいうコージも疲労と空腹を感じていて、座って休むことにした。


「朝飯があれだもんな。これから遠出する前に、昼飯を調達しておいた方がいいな」

「そうっすね……。どこかで弁当でも売ってくんないかな」

「麦飯のおにぎりとたくあん弁当とか?」

「おかずが寂しすぎっす!! てかそれ食堂の朝飯の残りじゃないすか」

「確かにな。フミトは今まで昼飯はどうしてたんだ?」

「普通に街で食ってましたよ。一人の時は、こんなに遠くまで来ないで屯所の近くをうろついてただけだったから、すぐに戻れたんす。北屯所の食堂で食べられれば一番近くて良いんすけど、あそこ、朝と晩しか飯出してくれないんすよ」

「そうなのか。昼飯も出してくれればいいのになぁ」

「麦飯のおにぎりとたくあん弁当は勘弁っすけどね」


 二人して笑った。爽やかな風が通り抜けていった。守られている街の外にいるというのに、穏やかだ。平八が強敵をことごとく狩っているお陰だろう。さて、そろそろ戻らないと日が暮れる前に帰れなくなる。


「今日はこの辺りにして戻ろうか」

「えー。もう少し休みたいっすよー」


 駄々をこねて、さらに大の字になるフミト。しばらく動きそうにない。やれやれと思いながらも、その憎めない性格に苦笑してしまう。陽キャのフミトと陰キャのコージ。タイプが全然違うのに、不思議と一緒にいるのが苦痛にならない。きっとフミトの人間性のお陰だ。


「もう少しだけだぞ」

「ういっす」


 例えるなら、後輩や弟なのだろうか。どちらもコージには無いものだ。正確に言えば中学高校時代に下の学年だった生徒は後輩に当たるが、交流がなければ存在しないのと同じだ。人懐こくて明るいフミトのような後輩や弟がいたら、現実世界も悪くなかったのかもしれない。だが、過ぎたことは考えても仕方がない。今ここにいる青年と絆を深めていけば良いのだ。

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