表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メタバース・プリズン  作者: 篠塚しおん
挑戦!戦闘クエスト
19/68

挑戦!戦闘クエスト -4-

 コージはフェンスの外にいた。敵を倒して道具やゴールドを得られるRPGゲームが、いよいよ始まる。高揚してきた。こういうゲームは、その辺を適当にうろついていれば敵とエンカウントする。詰所から離れすぎない程度に動いてみよう。荒れ果てた荒野に隠れられるような場所は無い。それは相手にとっても同じこと。これだけ見晴らしがよければ、敵の接近にも気付けるだろう。


 荒野の先に草原が、さらにずっと先に山脈が見える。借りているルミナティソードの代金の代わりとなる宝の一つ、イオツミスマルがあるアマト鉱山があの山脈のどれかだろうか。いずれは、あの遠い場所に赴くことになる。持ち逃げしようものなら、どこまでも、それこそ現実世界にまでも追ってきそうだ。ゲームキャラクターが現実世界に現れるなどあり得ないが、コテツならそういう常識を無視してやりかねないオーラがあった。


 回想しながら歩いていたその時、「クリーチャーが現れた!」というガイドが表示された。慌てて立ち止まったコージの足元の地面が盛り上がり、カボチャが十個並んだような大きく長い青虫が登場した。頭の部分だけが異様に大きい。口の部分からは、ただの青虫であれば無いはずの鋭い牙が覗いている。敵の上に吹き出しが表示され、中には「グリーンワーム」と書かれている。クリーチャーの名前だ。


「いでよ、ルミナティソード」

 いったん距離を取り、武器を呼び出す。初めての戦闘開始だ。

『ギャギャー!』


 奇声を上げながら向かってくる。動きは青虫そのものなのに、スピードがある。グリーンワームの噛みつき攻撃を避け、武器を振るった。剣身が敵を切り裂く。敵は横に一回転し、即死は免れたようだが、致命傷を負った。先ほどと違って動きが鈍い。


「もらった!」

 コージは飛び掛かり、グリーンワームの頭に剣を突き立てた。

『アギ……』

 圧し潰されたような声を漏らし、敵は息絶えた。荒い呼吸をするコージの前で、グリーンワームは徐々に薄くなっていき、完全に姿を消してしまった。「戦闘に勝利した!」のガイドが現れ、初めての戦闘に勝利したのだと理解した。

「よっしゃ!」


 コージは剣を掲げた。鼓動のように、ガーネットに当たった光が膨らんで萎んだ。「コージは経験値を50手に入れた!」「コージは40円手に入れた!」ガイドが続いた。今回得られた金は少額だが、敵が強くなれば報酬も上がるし、戦闘を繰り返せばなかなかに稼いで行けそうだ。報酬より、今は達成感の方が大きかった。バーチャルリアリティの戦闘は迫力満点だ。つまらない仕事をして、働いても働いても将来の不安が消えず、精神をすり減らしながら過ごす世界に比べたら、どんなに素晴らしいことか。コージは息を整え、次の標的を探しに出かけた。


 その後はグリーンワーム単体との戦闘を四回こなし、今まさに五匹目を倒そうとしていた。腹部に剣を突き立て、止めを刺した。五匹目は他と様子が異なり、グリーンワームが消えた後に、オレンジ色の液体が入った小瓶が現れた。「コージは回復薬を手に入れた!」というガイドが表示されたのち、小瓶は光となってコージのアームヘルパーに吸い込まれていった。プロフィールを確認すると、道具のメニューが追加されており、そこに「回復薬×1」が入っていた。


 敵のアイテムドロップだ。いちいち手で拾い上げずとも、勝手に収納されてくれるようだ。コージは楽しくなってきた。山脈に向かって荒野を進んだ。

 荒野が終わり草原になろうかというとき、「クリーチャーが現れた!」のガイドが表示され、コージは戦闘態勢をとった。足元を警戒していたコージの不意を突き、敵は空からやってきた。アイバットという名のそいつは、丸い身体のほとんどが目玉になっている一つ目の蝙蝠のような姿をしていた。中途半端な高さを飛び回っていて、剣が届かない。そうかと思うと、急降下して翼でパチパチ叩いてくる。


「くそっ! 苛々すんな!」

 ダメージは無いが、鬱陶しいことこの上ない。向かってきたタイミングで切り落としてやろうと剣を構えた。コージの姿が映る巨大な瞳が光った刹那、目から火球が飛んできた。

「危ね!」

 火球は地面に落ち、周りの草を焼き尽くして黒い焦げを残した。翼で叩くしか能がない蝙蝠かと思って油断していた。さすがにあんなものを食らったら無事では済まない。打つ手がないコージをあざ笑うかのように、アイバットは火球を連射してくる。速度はそこまで早くないので避けられるが、このままではジリ貧だ。なんとか反撃の手段を考えなければ、防戦一方になってしまう。何か飛び道具があれば……。


 ルミナティソードから鼓動が伝わった――ような気がした。コージは剣を見る。ガーネットが光る。この時、コージはルミナティソードが何を伝えようとしているのかが分かった気がした。

「よし……」

 剣を両手持ちして息を吐く。後は、タイミングだ。アイバットの目が光る。……来る!

 コージは素早く左に移動して火球の進行方向からずれ、そして右脚を一歩引いて体重を移す。火球が横を通り過ぎようとした瞬間に思いっきりスイングした。ルミナティソードの刀身に当たり、火球は真っすぐにアイバットに向かっていった。ホームランだ。


 まさか撥ね返されるとは思わなかったのだろう、慌てて避けようとするも間に合わず、翼に当たって惨めに落下した。地面に落ちたセミのようにバタバタしているところに、ルミナティソードを突き立ててケリを付けた。「戦闘に勝利した!」のガイドが流れた。


「何とか勝てた……。ありがとな」

 剣に声をかける。あの時、ルミナティソードに言われた気がしたのだ。火球など、バッターになったつもりで打ち返してしまえ、と。打開策を与えてくれた戦友への礼だった。例のごとく手に入れた金額と経験値の情報が流れた後、「レベルが上がりました!」の表示。経験値を得てレベルアップしたようだ。久々にプロフィールの詳細を見てみる。


名前――コージ

称号――駆け出しバッター戦士

職業――戦士

所持金――¥540

Lv――5

経験値――2,100

体力――80/80

ステータス――正常

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ