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メタバース・プリズン  作者: 篠塚しおん
そうだ、転職しよう
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そうだ、転職しよう -6-

 得るものが多いクエストだった。職業や装備について知ることができた。いろいろ準備をすれば、戦闘クエストもやれそうだ。せっかくリアルなRPGゲームができそうな仮想空間にいるのに、街の中だけうろついていたんじゃもったいない。コージは再び転職屋ちぇんじへと足を運んだ。

『ウフフ、さっき振りね。あの子、無事に旅に出られたみたいね』

 コージが店に入るなり、サチコにそう言われた。全てを知っていたかのような口ぶりだ。

『今度はお兄さんが転職する番かしら』

「全部お見通しですね……」

『非力ながらも、占い師ですからね。さて、さっそく始めましょうか。お名前伺えるかしら?』

「申し遅れました。コージと言います」

『コージちゃんね。さっきも言った通り、私のお勧めは戦士。だけど、お兄さんはいろいろな職業を経験して化けるタイプだから、他を選んでも良いと思うわ。魔導士になるなら、パーティを組むことをお勧めするけどね。さあ、どれがいいかしら?』

 まるで一杯目の酒の注文を取るかのような軽い口調だ。いろいろな職業の中には、商人や芸人も含んでいるのだろうか。

『やあねえ。あくまでも戦闘職の話よ』

「心を読まないでください」

 ここまでくるとエスパーだ。この人の前では、下手な事を考えられない。気を取り直して職業のことを考える。戦士か魔導士かアーチャーか。弓や魔法を使うのも楽しそうだが、やはり最初はスタンダードに戦士が良い。

「サチコさんのアドバイス通り、戦士でお願いします」

『オッケーよ。従順な男は好きよ、アタシ。それじゃ、登録しちゃうから、少し待っててね』

 途中寒気がしたが、言われた通りにじっと待つ。サチコはタブレットを取り出し、ポチポチと何か入力していった。現実世界の技術の結晶と、魔法が共存する世界。メタバースならではの芸当だと、コージは思った。

『お待たせ。登録完了したわよ。プロフィールを確認してみて』

 サチコに促されるまま、プロフィールを開く。


名前――コージ

称号――見習い戦士

職業――戦士

所持金――¥35,550

Lv――4

経験値――1,700

体力――67/67

ステータス――正常


「え!?」

 コージは思わず声を上げた。職業は確かに戦士になっていたが、所持金に驚いてしまった。昨日最後に見た時は、6,000円だったはず。それなのに、桁が違ってしまっている。今日の二件のクエストで、まさかそんなに稼いでいたとは。

『どうかした? 戦士になってなかったかしら?』

「あ、いや……。昨日より所持金が大分増えていたので、びっくりしてしまって」

『なによ、登録ミスっちゃったかと思ったじゃないの』

「すみません……」

『ウフフ、許してあげる代わりに、今度一杯ご馳走してちょうだいね。それじゃ、あなたも萬屋で装備を整えなさいな』

「はい」

『また会いに来てちょうだいね。楽しみに待ってるわよ』


 手を振るサチコに礼を言い、店を出る。その足で、二つ隣の萬屋へ入る。先程とは違って人がいなくなった店の奥から、コテツが出てきた。

『いらっしゃい。おや、あんたさっきの』

「どうも、今度は俺の装備を見繕ってほしくて来ました」

『そうかい。さっきの坊主は旅にでたのかい』

「はい、お陰様で」

『次会うときに、どんな面構えになって帰ってくるか、楽しみだな。それじゃ、あんたの武器と装備を用意しよう。職業は?』

「戦士です」

『わかった』

 コテツは店の奥に消えていった。ぼーっと待っているのも何なので、コージは店内を見て回ることにした。リョウが装備した杖以外にも、剣や槍、弓に銃と、様々な武器がある。防具も、いかにも重そうな甲冑に、動きやすそうな猟師用ベスト、カウボーイが着るようなウエスタンルックのシャツやハットなど、バリエーション豊富に揃っている。サチコが持っていたでかい水晶玉もあった。商売道具の仕入れ先が近所すぎる。

 ほどなくして、コテツが戻ってきた。


『お待たせ』

 そう言って渡してきたのは、工場の制服にありそうな作業着と、滑り止めのついた軍手に安全靴だった。

「……これは?」

『装備だよ。あんたはこれが一番良い』

 休日に作業服専門店にでも来てしまったのかと錯覚しそうになった。冗談を言わなそうな堅物から、冗談のようなことを言われた場合、どういう反応をするのが正解なのか。

『別に茶化してるわけじゃない。あんたにとって最適な装備を見繕った結果だ。重くて動きにくい鎧や、接近戦に不向きなシャツが良けりゃ止めはしないがな。こう見えて、この服は熱にも水にも強く、多少の衝撃なら吸収してくれる』

 解説を聞けば聞くほど、工場の作業着だ。工場での作業に耐えられる制服なんだから、そりゃ丈夫だろう。そうは思ったが、ろくに鍛えてもいない人間がいきなり重装備を着こなせるわけもないし、かといってどんな相手が出てくるか分からない場所に、軽装で出かけるのも危険だ。コテツの言うことは的を射ていた。

「防具は持ってきてもらったものを貰います。武器は?」

『こいつだ』

 コテツの手にあったのは、西洋の剣。長い握りの先、柄頭の部分に赤い宝玉が取り付けられている。刃先も切先も鋭く、斬りでも突きでも威力を発揮しそうだ。


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