⭕ 本屋で万引き
両足を失って、義足で生活を初めて3年が経った。
私は無事に高校を卒業して、狙っていた大学の受験にも合格して、現在は花の女子大生ライフを謳歌している。
義手で義足なのは私の大事な個性として、ちゃんと受け入れて楽しく暮らせている。
小学校,中学校,高校でもだけど、私はクラスメイトにも友達にも担任教師にも恵まれていた。
大学生活でも変わらなくて、友達に恵まれている。
小学校時代に仲の良かった子とも再会が出来て、彼氏まで出来ちゃったのぉ♥️
順風満帆とは言えないけれど、私は幸せな毎日を過ごせています。
万引きを繰り返している犯罪者なんですけどねぇ~~~。
私は万引き自分ルールに新しいルールを追加したの。
【 彼氏とデートした日の帰宅途中に決行する 】っていうルールをね。
そんなわけで私は自宅へ帰宅する途中に万引きをする店を物色しながら歩くの。
気味の悪い不運は未だに続いているけど、そんなのを一々気にしていたら万引きに全集中なんて出来ないから、気にしない事にしている。
だって、両手と両足を失った事に比べたら大した事ないように感じちゃうんだもの。
初めて出来た彼氏には私が密かに万引きしている事は秘密にしている。
勿論、デート帰りに万引きを遂行してる事も知らない。
彼氏は万引き犯を嫌っていて “ 万引き = 人殺し ” って同一視するような人だったりする。
良く私に万引きをする人の事を愚痴って来るの。
心底嫌っている万引き犯と楽しそうにデートしてる彼氏を見るのって楽いわぁ♥️
心底嫌っている万引き犯と楽しくお喋りしたり、ランチを楽しんだり、映画を観たり、手を繋いで歩いたり、ギュッてハグをし合ったり、愛を囁き合ったり、キスをしたり──、超ぉ~~~~~ウケるぅwwwwwww♥️
私が心底嫌っている万引き犯だって分かったら、彼氏は「 どんな反応を見せてくれるんだろう? 」てワクワクしちゃうのぉん♥️
彼氏の事を考えるだけで、万引き魂がメラメラと燃えちゃうのよねぇ。
今日もヘマはしないわよ。
私は “ 失敗しない ” 無敗の女なんだから!!
今日万引きする店は本屋に決めた。
ターゲットは小さくて隠し易い小説かしらね。
本屋に入ると出入り口には万引き防止の機具は設置されていない。
これは楽々に万引き出来そうねぇ~~~♪♪♪
本屋にも買い物カゴが置かれているから、買い物カゴを持って店内を歩く。
客は学生や女性客が多いみたい。
私が先ず向かったのはスイーツ本が並んでいる棚。
お手軽に作れるスイーツの本を手に取ってはパラパラと捲って中身を確認する。
自分に作れそうなスイーツが載ってる本を買い物カゴの中へ入れる。
お弁当の本,料理の本も手に取ってはパラパラと捲って見る。
次に移動したのは目当ての小説の棚。
ターゲットは薄っぺらくて軽い小説。
分厚かったり、人気のある小説は選ばない。
とは言っても、気になる小説があれば最低でも2冊は買い物カゴの中に入れる。
1番薄っぺらくて軽い小説に狙いを定めて手を伸ばす。
カモフラージュに隣の小説も一緒に手に取って読んで見る。
後ろの棚に並んでいる小説も歩きながら見る。
他の棚に並んでいる本も見ながら店内を回る。
最後に付録が付いている本棚のコーナーで物色して、ム●ミンの買い物バックの付録が付いた本を買い物カゴの中へ入れた。
レジに並んで清算を待っていると、最寄り駅の薬局屋で働いている薬剤師さんが入店して来た。
若い男の子と仲睦まじい感じ。
私はついつい「 こんばんわ 」って声を掛けていた。
私に気付いてくれた薬剤師さんは笑顔で「 こんばんわ 」って返事を返してくれる。
「 こんばんわ、お姉さん 」って男の子も笑顔で挨拶してくれた。
「 こんばんわ~~。薬剤師さん、弟さんとお買い物ですか? 」って然り気無く聞いてみると薬剤師さんは「 息子です 」って恥ずかしそうに答えてくれた。
薬剤師さんって既婚者だったんだ……。
彼氏が居る身だけど薬剤師さんが独身者じゃなくてショックかもぉ……。
「 あっ……ごめんなさい! 私ったら兄弟かと…(////)」って私も間違えた事を恥ずかしがってみた。
「 お姉ちゃんも漫画を買いに来たの? 」って聞かれたから、買い物カゴの中を見せてあげた。
「 料理本を買われるんですね 」
「 お姉ちゃん、料理好きなの? 」って聞かれたから、「 料理は苦手なんですけど……彼氏に作ってみたいな~~って(////) 簡単なスイーツなら私にも作れそうだし… 」って私は恥ずかしそうに答えてみた。
「 手作りスイーツは、きっと喜ばれると思いますよ 」
「 父さんも料理はド下手だったけど、お弁当を作れるようになったもんね! お姉ちゃんも上達するよ 」
「 有り難う(////)」って言葉を交わしたら薬剤師さんと息子さんと別れた。
私の番が回って来たからね。
店員に怪しまれる事なく、レジで清算を終えれた私はドキドキしながら出入り口を通る。
私は無事に本屋を出る事が出来て、心の中で安堵した。
私は7冊の本を買った。
8冊目は盗んだけど、きっとバレない。
私はどんどん本屋から離れてた。
「 ──お客様~~~! お待ちくださ~~い!! 」って背後から声が聞こえて来た。
私は思わず「 えっ……何で?! 」って声を漏らしていた。
バレるわけないのに、何で本屋の店員が私に向かって走って来るのよっ!!
真っ赤なエプロンの真ん中には本屋のロゴが入っている。
嘘……嫌……捕まる??
冗談じゃないわ!!
捕まって堪るもんですかっ!!
私は絶ッッッ対に万引き更正施設へなんて行かないんだからぁ!!
捕まるもんですか、逃げ切ってやるわ!!
私は走って追い掛けてくる店員から逃げる為に走り出した。
全速力で走って、歩道橋の階段を駆け上がる。
本屋の店員が何かを叫んでいるけど、車の騒音にかき消されているから声が聞こえない。
店員は歩道橋の階段を上がって来ないから、階段を下りたら本屋の店員から逃げ切れる!!
階段を駆け下りようとした瞬間、義足が不備を起こして私はバランスを崩してしまった。
雨上がりって事もあってなのか歩道橋は滑り易くなっていて、私の身体は階段の上を転げ落ちた。
凸凹している階段に身体が激しく打ち付けられて、全身に痛みが走る。
義手も義足も鈍い音を上げながら壊れていくのが分かる。
壊れた義手では頭を守る事は出来ない。
頭も容赦なく階段に打ち付けられる。
階段から転げ落ちる時間がとてつもなく長く感じた。
「 きゃーーー!! 」
「 おい、誰か救急車ーーー!! 」
「 確りしろっ!! 」
「 生きてるの?! 」って周りから緊迫した声が聞こえて来るけど、私の身体はピクリとも動かない。
あぁ…………私……このまま死ぬのかな??
全身がズキズキ痛いもん……。
まぁ……もう…いいか…………このまま……死んでもいいや……。
だって……私が万引きした事……本屋の店員にバレちゃったんだもん……。
生きてたら……万引き更正施設へ送られちゃうじゃい……??
…………北海道になんか行きたくないもん……大学に通えなくなるし……友達とだって…………彼氏は……別にいいわ……どうでも…………。
「 ──嘘だろぉ!? 確りしてください!! お客様! お客様ぁ!! お釣りを渡し忘れたから渡そうと思って──!! 死なないでくださいよぉ!! お客様ぁ~~~~!! 」
………………えっ……お釣り…??
渡し忘れた……嘘でしょう…………私の勘違いだったの……??
私が万引きした事はバレてないの……??
あぁ……なんだ…………私は………………。
「 君の大事な身体を貰ったよ。君は懲りないね。次は無いよ… 」
…………次って…………次もあるって…………アンタは誰なのよ………………。