⭕ 初めての万引き 2
スーパーから大分離れて駅が見えて来た。
私は改札口のタッチパネルにタスポをタッチして駅の中へ入る。
階段を上がって、階段を下りて、プラットホームで電車が入って来るのを待つ。
黄色い線から離れた場所に設置されているベンチに腰を下ろして座った私は、右側のポケットの中に右手を入れて、戦利品を触って確認した。
ちゃんと入ってる❗
私の記念すべき初の戦利品が──。
ショボくて安い10円の箱ガムだけど、人生初の万引きデビューを飾る大事な証。
部屋にある宝箱の中に入れて大切に保管しておこう。
勿論、中身を食べてからね♥️
お金を支払って買った箱ガムよりも、タダで手に入れた箱ガムの方が絶対に美味しいと思うの!
だって、実際に体験しないと言い表せないようなスリルを味わったんだもの。
これで美味しくなかったら、万引きなんて犯罪はとっくの昔に風化しちゃってて、誰も万引きなんてしてない筈よ!
プラットホームに電車が入って来た。
扉が開いて車内に居た乗客が電車から出て行く。
車内が空いたら電車に乗車して座席に座った。
座席は向い合わせの座席で、色んな人が座っている。
中には何故かそわそわしている男の人が座っている。
目を無駄にキョロキョロさせていて挙動不審な男。
ちょっと嫌だわ!
不審者なんじゃないのぉ?
私は出来るだけ見ない事にして、目を合わせないように注意する事にした。
勿論、私だけじゃなくて他の乗客も同じみたい。
そりゃそうよね?
誰だって挙動不審で怪しくて危なそうな人とは関わりたくないもの。
3回程、到着した駅で電車を乗り換えて、父親と暮らす自宅から通える最寄り駅に到着した。
プラットホームに電車が停止した。
扉が開いたから座席から腰を上げて立ち上がったら電車から降りて、出口へ向かってホームを歩いた。
階段を上がって2階のホームに設置されている改札口のタッチパネルにタスポをタッチして駅を出ると左右に店がある。
右側には薬局屋があって、薬が必要な時には買いに走っている。
最寄り駅に薬局屋があるって本当に助かるし有り難いし。
薬局屋に勤めている薬剤師さんはハンサムなイケメンさんで目の保養になっているの♥️
物腰が柔らかくて、人当たりも良くて、口調も優しくて親切だから、老若男女に人気がある。
何時迄も最寄り駅の薬局屋に居てほしい。
薬局屋の左隣には花屋があって、階段かエスカレータを下りると1階にはコンビニエンスストアがある。
左側の2階には自動ドアがあって、手作りパン屋がある。
パン屋の右横には便利な100円ショップがあって、右横には定食屋とラーメン屋が並んでいる。
その右横には美容院があって、美容院の向かいには呉服屋がある。
本屋もあって、駅を利用した後や電車を待つ時には必ず本屋で時間を潰す。
階段かエスカレータを使って1階へ下りるとスーパーがある。
料理で使う食材や調味料,生活必需品の買い物は最寄り駅のスーパーで済ませれちゃう。
スーパーの奥には雑貨屋,洋服屋,靴屋もあるから便利なの!
最寄り駅には万引きの出来る店舗が、いっぱいあるけど近所の店舗では絶対に万引きしないのがプロの鉄則。
万引きは地元ではしないで、地元から離れた店を狙ってするものなのよ!
それに万引きは1日1回だけって自分ルールを決めるの。
今日は万引きを1回したから、もうしない。
万引きは1週間に1回とか、自分でルールを決めたら必ず守るの。
万引きに依存した異常者にならない為には必要な事なの!
ポケットから戦利品の箱ガムを出して眺めていたら、甲高い女性の叫び声が聞こえて来た。
何があったのかしらね?
引ったくり……とか??
「 逃げろぉーーー!! 」
「 キャーーー!! 」
「 刃物を持ってるぞーー! 」
「 いやぁーーー!! 」
「 うわぁ~~~!!」
「 助けてぇーーー!! 」
「 警察を呼べーーー!! 」って色んな人の悲鳴や叫び声が響いている。
刃物を持った人が暴れているって事??
買い物を楽しんでいた人達が物凄い形相をして血相を変えて走って来る。
だけど何で駅に刃物を持った人が暴れてるの??
「 君も早く逃げるんだ! 刺されるぞ!! 」って逃げて来た見知らぬサラリーマンに声を掛けられて、私も走り出した。
皆必死で逃げている。
追い掛けて来るのは鋭く光る刃物をブンブンと振り回しながら恐い形相で獲物を狙っているみたい。
目を血走らせていて、正気の沙汰じゃないみたい。
危険人物から逃げていた最中に足を縺れさせてしまった私は躓いたてしまって「 ──あっ!? 」と声を発した時には転んでいた。
マイバッグの中に入っていた駄菓子が床に散らばってしまった。
手に持っていた初万引きで手に入れた初めての戦利品──箱ガムも見当たらない!!
「 嫌だぁ! 見付けないとぉ!! 」って声を上げた私は床に散らばった駄菓子を懸命に広い始めた。
戦利品の箱ガムの色は緑色。
駄菓子を集めならが探すけど見当たらないよぉ!!
大事な私の “ 初めて ” なのにぃ!!
床に散らばった駄菓子を広い集め終わったけど、肝心の戦利品が見当たらない。
何処に転がっちゃったの??
私はキョロキョロと辺りを見回していると他にも逃げ遅れている人が居た。
お婆さんだ。
足腰が弱いからなのか、悪いからなのか分からないけれど走れないみたい。
早く逃げないと刃物を振り回してるキチガイ男に刺されちゃう!!
私はお婆さんの近くへ走り寄った。
お婆さんが逃げるのを助ける事にしたの。
お婆さんの手を引いて歩いていたら、大事な戦利品を見付けた!
こんな所に転がってたのねぇ!
見付かって良かったぁ♥️
刃物を持って振り回しながら暴れているイカれたキチガイ男が迫って来た❗
刃物は赤く染まっていて血で汚れているみたい。
刃物から滴り落ちる血が床を染めている。
此処に来るまでに何人もの人を刃物で刺しながら移動して来たのかも知れない。
私はお婆さんが男に刺されたりしないように、駄菓子が溢れて落ちないように確りとマイバッグの縛った。
私は若いし、お婆さんよりも走れるから、男の気を何とか私にも向けさせれば、お婆さんはきっと怪我をしないで助かる。
だから、私は勇気を出して──、マイバッグをグルグルと回しながら、遠心力を使って刃物を持っている男に向かってマイバッグをぶつけた。
マイバッグは男に命中したけどダメージは負わせられなかったみたい。
まぁ……中身は駄菓子だから期待は出来ないよね?
男は反抗した私に狙いを定めたのか、私に向かって走り出した。
私は可能な限り男を引き付けてから走って逃げた。
逃げ遅れたお婆さんが狙われない為によ!!
階段を駆け降りて、自動ドアを出ると男も私を追って走って来る。
私と男の追い掛けっこが始まった。
男に追い掛けられる私は必死に逃げる。
逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げまくった。
気が付いたら私は見知らぬ公園に居て……、日も暮れ掛かっているた。
走り疲れた私はヘトヘトで……もう走れない……。
流石にこんな場所にまで追い掛けて来ないと考えた私は、交番を探して歩き出した。
暫く歩いていると交番が見えた。
嬉しくなって私の足が早くなる。
交番に向かってスキップしたいぐらい♥️
交番に入るとガラン……としていて誰も居ないみたい。
道を聞きたかったのに残念……。
お巡りさんが戻って来るのを中で待たせてもらう事にしたんだけど、交番に現れたのはお巡りさんじゃなくて、あの血塗れの刃物を持って振り回していたイカれたキチガイ男だった!!
私を見て気味悪く笑った男は「 見付けたよ… 」って不気味な声で言うと、刃物──中華包丁を振り上げて来て私に襲い掛かって来たの!!
はぁ?!
何で中華包丁なんか持ってんのよぉ!!
交番の中は意外と狭くて私は男から逃げる事が出来なくて──、気が付いたら私の両手首からは血が噴き出していて、床には切り落とされた両手が落ちていた。
一体何が起きたのか私には分からなかった。
両手首から大量の血が噴き出していて、意識が飛んじゃいそう……。
全身が重ダルくなって来て、立っていられなくなった。
私は交番の床に倒れた。
意識が朦朧としている中で、誰かの声が聞こえた。
私は……どうなるのかな……このまま…………。
「 君の大事な両手は貰ったよ。君が最初に盗ったんだから、自業自得だね──── 」