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始動

  彼らと顔合わせにアトリエへ行った。そこは元倉庫か、元工場を改造してアトリエにしているようだった。古いが広く、周りに民家もないのでアトリエにはピッタリだろう。

建物前の広場は、駐車場兼屋外アトリエになっている。一部に簡易的な屋根も完備した屋外アトリエでは、大きな立体を中心に作成している。石を削ったり、溶接したりしたりと。

建物の中は、日本画、油絵など平面と小さい立体物の作品が並んでいる。

様々な分野で制作しており、まるで廃墟の遊園地だ。異世界に迷い混んだようで、心は躍りドキドキ、ワクワクだ。興奮して挨拶も忘れ作品に見入っていた。


 「神崎さん、お久しぶりです。」声の主は顔を見なくてもわかる。

私は声の主を見て

「こんにちは。この度はお仕事をありがとうございます。

ごめんなさい、ご挨拶もせずに、余りにも迫力のある作品が多くて圧倒されていました。」

「そう言ってもらえると嬉しいです。こちらこそ、依頼受けてくれてありがとうございます。」

笑顔の伊山君が迎え入れてくれた。

 

「仲間を紹介させて下さい。ここは若い芸術家が集まって制作活動している、アトリです。僕が主宰の伊山晴人です。こちらから、今居るのは、大森、里崎、国近です。他にもいるのですが、仕事の傍ら制作活動しているので、全員が揃うことはほとんどありません。」

 紅一点の誰もが振り返る色白美人は、国近 希(クニチカ ノゾミ)と名乗った。日本画家だと言った、彼女の長いまつ毛の綺麗な瞳は、真っ直ぐに私を捉えて軽く会釈した。

 大森君は一際おおがらで彫刻家と言った。外で火花をちらし溶接していたのは彼だ。

「こんにちは、伊山からポートフォリオを見せて貰ったよ。よろしく、楽しみにしてます。」

 大崎君は今は版画に力をいれてるらしいが、比較的多才でその時々興味があるものに取り組んでいるらしい。「一緒に活動できるの楽しみにしてます。よろしくお願いします。」

 里崎君は、テキスタイルデザイン、彼はデザイン事務所にも勤務しているらしい。伊山君とは一番に長い付き合いで、高校からの同級生だそうだ。

「晴人からポートフォリオを見せてもらったよ。派手さは無いけど、人を魅了する作品だった。よろしくお願いします。」


 国近さんが少し曇った表情で小声で伊山君に言った。

「いつもは作品だけでしょ、なぜ今回植物にこだわるの?」

「その話は何度もしたよね、今回はテーマが自然なんだ。実際に植物が入る方が面白いんじゃないかって話でまとまったでしょ。

それで俺達フラワーデザインは素人だから 手伝って貰おうってさ。彼女、いい感性持ってるんだよ。ノゾも写真見て良いって言ってたじゃん。」

「言ったけど。」彼女は不満気な顔で言った。

『そっか、全員が今回の企画を肯定的に思っているわけでは無いのだ』と自覚した。


 伊山君がこちらを向いて「取り敢えず、作品を見て下さい。制作途中ですが、見て貰った上でどんな植物をどう配置するか相談していこうと思います。」と言った。

 伊山君にアトリエ内を案内して貰いながら、今回のグループ展の趣旨を詳しく教えて貰った。テーマは『自然への帰還』、皆の作品をまとめる役割の一環をフラワーデザインにも担って欲しいとのことだった。

 前回も思ったが、間近で観る伊山君の作品はどれも心を包み込む優しさに溢れるなかにも、凛とした強さがあった。まるで孤独に気高くそびえ立つ大木のようだった。私は思わず、彼作品に釘付けになった、心を奪われる作品だった。

 やっとの思いで、心を鎮め「では詳細は次回下絵をお持ちしての相談にさせて下さい。」と言葉を絞り出した。


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