一夜明けて
「うへぇ、や、休もう~、輝さん休も~」
「そうですわね。一旦休憩を挟みましょうか」
.......夏休み。
なんで課題(宿題)があるのだろう。
なければ最高に怠惰なのに。
毎年。
毎年、そう思ってならない。
「義務が無ければ、人間はどこまでもだらしなくなりますわ」
「輝さんでも?」
「もちろんですわ。なんでしたら、休憩中ですから」
するりと輝さんの足が伸びて、足先で私の太ももをさすりとしていった。
ニマリと笑う輝さん。
「以外と足癖の悪いお嬢様だな。怠惰な割りにアグレッシブだ。休憩中だけどさ」
私は輝さんのその足を捕まえて、どうしてやろうか?
と刹那、思案する。
多分......。
「ね、姉ちゃん!お疲れ様!お茶が入ったよ!」
はい。
流れ読み通り。
机の下の掴んだ輝さんの足をペッと離して、はい何も無いですよ?
流石に、いい加減慣れた。
もうちょっとタイミング考えないとなーと、思う。
「あら♪ありがとう翼君。今度お礼におみやげ持ってくるわね」
「いーよいーよ、輝さん」
「あら、そーはいかないわ。本当なら昨日用意しなきゃいけなかったのに」
「気にしないでください!輝子さん!」
「あら、ありがとう翼君。優しいわねえ」
何気なく、翼が輝子さん呼びなのが引っ掛かる私だった。
「そ、そんな事は!えへへっ、頑張って下さい!では!」
手を軽く振る輝さんに、弟の見てられない顔を見て、軽くため息の出る私。
ほんっと、私の彼女はモテるなあ......。
私がジト目で見ると、
「では続きを」
「休憩終わり!勉強再開!」
ちぇー、と輝さんが足を引っ込める。
確かに最近怠惰だから、これくらいでちょうどいいのだ。
タイミングもある。
安易に流れに流され過ぎてもいけないのだ。
──カナカナカナ
ひぐらしの鳴く音が聞こえるぐらいには、家は田舎っぽいとこだ。
もう、そんな時間か。
結構集中して出来たな、課題。
「.......輝さんって、あらら」
集中してて気付かなかった。
居眠り輝さん。
いつも凛とした(最近怪しいけど)輝さんの、可愛いレアな表情だ。
輝さんも、昨晩寝れなかったんだろなー。
ハハッ。
私だけじゃなかった。
そりゃなー。
実家で弟のマークもきつい中で、一緒の布団ど寝なかったとはいえ、何が起きるか世の中わからないから、私も輝さんも動くに動けず夜を明かした......っとのが昨晩の静かな夜でした。
シャーペンの丸い方を輝さんのホッペに当てて突っつく。
柔らかい。
「輝さん、起きろー。そろそろ勉強終わろー」
「.......!寝てましたか。......失礼しました、おひいさん。私とした事が本当にたるんでおりました」
「仕方ないよ、輝さんも昨日寝れてなかったんでしょ?」
「おひいさんもでしたか......」
何やってんだろなあ......的な気まずさの間があった。
その間を埋めるように私は、
「もう1拍しちゃう?」
「止めておきましょう」
「止めとこうか」
苦笑いしながらの私達。
今晩はゆっくり寝たい。
いつかは、貴女の隣でゆっくりと。
そんな事を思いながら。
輝さんを送っていく際、翼を退けるのがウザかった。
まさか、弟相手に輝さんめぐってこんな感情抱くとは。
夕方のこの時間。
帰路につく主婦の目立つ通り道。
イチャつく事は出来ないなあ......。
「おひいさんと、お別れの挨拶がしたかったですわ」
「ま、今日のとこは普通に別れろってとこなんじゃない?」
ブーたれる輝さんをなだめる訳でも、私自身をなだめる訳でもあるんだけど、私はぼそりと呟く。
「タイミングだけじゃなくて場所もなんだよね.....」
「なんと言ったのですか?おひいさん」
輝さんが耳を寄せて近づいてくる。
「卒業旅行に泊まりで出かけようか?」
近付いて来た輝さんの耳元に、私は囁いた。
輝さんの耳が赤くなるのを確認して、私は愉快な気持ちになった。
続く




