表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/144

水族館デート




輝さんと2人。

並んで、水槽のピラルクを見ている。



「私は小さい頃、多忙でした」



輝さんが独白をする。

私はただ聞いていた。



「家の方針の習い事で、1人鬱屈とした気持ちになったものです」



まだ、名家の頃か。



「たまに。たまに、この水族館でこうしている事が許されたのです」



「それで、ここが輝さんのお気に入り?」



「はい。泳いでいるピラルクを見ていたら、辛いことも悲しいことも、少し遠くなるような気がするんです」



そんな事を言う輝さんの、その口は笑みを称えていたけれど、だけど瞳は憂いを帯びていた。



「おひいさん......?」



私は彼女の手を繋いだ。



「輝さんモテるから。捕まえとかないと?」



「........申し訳ありません」



輝さんは、嬉しそうに悲しそうに頬笑む。

ただ悠然とピラルクが目の前を横切っていく。

私も切なくなる。

けど、私も静かに笑った。


私達以外に人もおらず、静かな。

静かな、淡水魚コーナーだった。

以外と人気ないのかな?



「マイナーな方かもしれません」



切なくなった。



──気づけば1時間以上経っていた。


けど、私も特に不満もなく。

輝さんは、まだまだ観てれると、謎のドヤッ!

を見せてくる。

まあ、また来ればいいじゃないのと輝さんを引っ張って、今から行けばちょうど間に合うんじゃないかな?



「水族館の目玉でしょー!」



大きな広場に来た。

円形の水槽に囲むように客席。

そう、いるかショーだ!



「ポンチョを手に入れて......って、ああっ!」



「どうしたんですか?おひいさん」



「ま、前の水かぶりの席があ!ファミリーと子供達で席が埋まってるぅ!」



~太陽が輝いて~♪

~神話の国へ~♪



神秘的な歌と共に、スタッフのお姉さんがイルカを指示する。



ばっしゃああーーん!



前の席でビショビショの子供達がケラケラ笑う。

いいなー!

イルカが跳び跳ねて、着水する時の飛び散る水を浴びたかったー!

そして、大口を開けて笑いたかったー!

輝さんと2人で!



「いや、私はピラルクがいればそれで」



つれないなー輝さん!

水はかぶれなかったものの、ソコソコ楽しんで(ポンチョリベンジする!)食事を取る事にした。

自分達のバイト先で何か買っていこうとしたけど、すんごい行列が出来ていたので、流石に遠慮した。

でも何故だろう?

いつもあそこにいて、戦場のような忙しさに身を置いていて、今はその戦場を眺めているということが.......。



「たまらない優越感♪」



「おひいさん。よく分かりませんわ」



輝さんが若干呆れた顔をした。

おっと。

いけない、ゾクッとしてしまったよ?



「まあ、明日はあそこで働いてるんだけどね......」



テンションがアップでダウンだった。

.......言うまいて。



「では、おひいさん。外に出て食事にいたしましょうか?」


「さんせー♪」



花より団子。

魚よりランチ♪



「そのあと図書館ででも涼もーか?」



「いいですわね」




門を潜って、近場のファミレスへと向かう。

ジリジリと肌を焼いてくる太陽から逃れようと。

明日からバイトかー。

社会人ってこんな気持ちなのかなー?



「小さい頃を思えば余裕ですわ」




輝さんの目が虚ろに染まっていた──

し、失礼しました!





続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ