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一目惚れしたりされたり




バイトという名の戦場をこなし、そろそろ新兵も卒業かな?

と、思う1週間を過ぎた頃かな?

馴染み、常連さん?

この子、昨日も来てなかったっけ?

と、顔を覚えたお客さんがいた。

接客業も慣れてきたんだろうか?

いや、これだけ毎日来られたら分かる。


何が目的で。

それだけ熱を帯びた目で見る人は。

その中学生ぐらいの男の子が見ているのは。



「560円になります」



「せ、千円で......」



「はい、お釣りが440円になります。明石焼きお待たせしました」



「は、はい。ありがとうございます」



「明石焼き好きですねぇ?」



「お、俺の事覚えてくれて.......!?」



「4日続けて明石焼きですもの。覚えやすいですわ」



「は、ははっ!お、お姉さん、俺は柏崎友也っていいます!お名前聞いていいですか?」



くすくすと笑う輝さんに、柏崎?君は、舞い上がるように聞いてきた。

輝さんの名前を。



「豪松陰輝子と申します」



「豪松陰輝子さん......。また、来ます!」



「ふふっ。おこずかいに気をつけて。ありがとうございました」



天にも登るような心地だろうか?

足が地についてない様なステップで、去っていく柏崎君だった。

なぜ、私はバックヤードでその明石焼きを作らなければいけなかったんだろうか?

納得がいかない。

顔が、唇が歪む私。

そんな私を見かねた輝さんは、



「そんな顔なさらないで下さい、おひいさん」



「かまいませんよ?看板娘だもの、お客がつくのは商売繁盛笹もってこーい♪だもの」



すねてませんよ?



「あら、おひいさん。妬いてくれるのですね?」



えー!えー!

焼きそばでも明石焼きでもなんぼでも焼きまっせ?

輝さんは、美人だもの。

こういう事はいくらでもあるんでしょうけど!

でも。

でも、輝さんと今一緒なのは......。



「すねないで下さい、むくれないで下さい、おひいさん」



仕事中だから、派手な事は出来ない。

そっと見えない角度で、輝さんは私の指をキュッと握った。



「私は、貴女のなんですか?」



.......!!

柏崎君の次に、顔を赤くさせるのは私だったようだ。

輝さん.......!

私の彼女だ!



「ですから言い寄られる事は多くても、おひいさん以外には私はなびきませんわ。ご安心下さい」



ああっ......はい。




「でも、私はともかく。おひいさんに言い寄らないのは納得いきませんわ」



ごめんなさい。

輝さん、堪忍してください。

身の程知らずでした。

けど.......



「私はおひいさんの彼女なんですからね?」




そこだけは、誰恥じる事なく誇っていいと思った。



「さて、愛の確認も出来ましたし、お店をぶん回しましょう、おひいさん!」



「よしきた!ふん!」




力の限り、調理して接客、レジ打ちをする。

こうして見ると、家族連れかカップルが改めて多いなと気づかされる。

こんなに多数のお客さんが、ひっきりなしに並んで訪れて、お客さんの顔を全て覚えれるもんじゃない。

一期一会か。

あの、柏崎君とやらもそんな中の1人だったわけで。

輝さんに、覚えてもらうために同じ注文を繰り返したのだろう。

それでも、それぐらいではあの戦場では、記憶に残らないと思うんだよなあ。


夕暮れ時に、ゴミ出しをする時に輝さんに聞いてみた。




「やはり、視線ですね。あれだけの熱量を持った眼差しでしたから。まあ、おひいさんの視線の熱量には叶いませんが」



そうでした。

私、輝さんの事めっちゃ見てました。

自爆した私を見て輝さんは、コロコロと笑うのでした。



「ご安心下さい。私は貴女のものですわ」




そんな笑顔で言われたら......。

うん。

私も輝さんのものなんだなあー、て気づかされた。






続く














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