初めてのお誘い
「はい、今日はこれまで。各人、期末テストに備えてよく復習しておくように」
ハーイ。
と、ガラガラ、ドヤドヤと、放課後のホームルームの先生の言葉を最後に、起立、礼をして散会していくクラスメイト達。
「んじゃなー。勉強しなよ日依心ー」
「赤点とんなよー」
「だ、大丈夫よ!日依心って呼ぶなし!また明日!」
部活に行く夏海と見文を送り出して、私は一泊呼吸を置く。
すると、やはり斜め前の席からヒョッコリと、輝さんがやって来た。
「塚さん、テスト駄目なんですか?」
うっ。
結構ストレート。
輝さん.......。
でも、隠してもしょうがないか。
カッコ悪いけど事実だ。
「......うん。私けっこうギリギリで高校入ったんだよね。だから、もうついてけない部分多くて......」
「そうなんですか。でしたら.......」
「だから部活はお休みにして!輝さんがよかったら、一緒にテスト勉強しない!?」
「!!」
「それで、そのう......。分からない所を教えて下さい!お願いします」
相手が輝さんだからか。
恥を忍んで、お願いした。
夏海と見文ならこんな恥ずかしくないと思うんだけど、なんでだろ?
輝さんは、一瞬その細い狐目をカッ!と広げたかと思いきや、ブルリと体を震わせて顔を恍惚とさせた。
「......塚さんから、初めてのお誘い。そしてお願い.......」
「あ、あの?輝さん?」
輝さんが、瞳に力を宿して、背筋を伸ばす。
初めて見た時の、凛とした姿勢。
「豪松陰輝子、塚さんに頼られて嬉しゅうございます。他人からのお誘いで、こんなに嬉しいのは生まれて初めてでございます」
「......大げさだなあ、輝さん」
輝さんの、その様に少しビックリしたけど、でも私は口元がニヤつくのが分かった。
頼もしいし、そんなに喜ばれるなんて、誘ったこっちも嬉しい。
やっぱり輝さんの私への好感度高過ぎでしょう。
ミートゥーだけどね?
学校の校門をくぐり、私は、キコキコと自転車を押して、輝さんと一緒に歩く。
「塚さん。自転車通学でしたの。それより、テスト勉強なさらないんですか?」
「ふっふっ。場所を変えてね。甘いものを取りつつ気分も変えてね♪」
私達は、歩いて15分ぐらい。フードコートのあるのある大きな商業ビルに到着した。
続く