肝試し
草木も眠る丑三つ時に。
って程のど深夜では無いのだけれども、晩ごはんを食べ終えたぐらいの時間ではあるのだけれども。
流石、田舎だねえ。
ランタンを手にしてるけど、暗闇で見える視界は狭いや。
ふっつーに怖いし!
「はい、次の組行ってー」
前の組は夏海と見文で、その次が私と輝さんの組だった。
なんでだろうねえ.......。
まあ、いいや。
考えずに、先に行った夏海と見文を観察しにいこ。
飛ばし目に進んだら、前にランタンの灯りが見えた。
夏海と見文だ。
「きゃっ。後ろから光が!」
ナチュラルに、夏海の腕に抱きついていく見文の姿が見えた。
なるほど。
あんな感じでやるのか、やられるのか。
ていうか、やはり旧友2人のイチャイチャは、見ていてまだ慣れない。
若干、ショックだ。
自分等を棚に上げてだけど。
「おひいさん。お邪魔してはいけませんわ」
「う、うん。そうだね輝さん。邪魔しちゃあいけないよね。んじゃ、距離をとろうか?夏海、見文、ごゆっくり!」
「い、嫌みか!?」
「日衣ちゃん達も、ごゆっくり♪」
見文だけが、満面の笑みで、夏海の腕を離さなかった。
そして、前の2人の灯りが遠くに消えて、また手にしたランタンの光りだけが光源になった。
リー
リー
リー
カラスの鳴き声は収まり、代わりに虫の音が聞こえてくる。
........なんだろう。
冷えたこんにゃくピトッとか、クラスメイトの幽霊
もどきとか、構えていたのに何も来ない。
なんかいい雰囲気の夜道じゃないか。
「........」
ふと、手を繋いでいた隣の輝さんを見る。
細い目から見える瞳が潤んでいた。
い、いい雰囲気だなあ......。
だけど、いつお化け役の生徒が出てくるかは分からない。
自重しなければ........。
「なかなか出ないもんだね、お化け!あはははっ、あ......」
腰に手を回されて、体を密着されて、私の笑いは尻窄みになった。
「輝さんに攻められっぱなしな気がするなあ......」
「おひいさんが悪いんですよ?私はいつでも待っているのに。ですから.......」
「我慢出来なくなった?」
私は、輝さんの空いた手の方を指で絡めとる。
輝さんの瞳を、覗きこむ。
まあ、状況の事もあるんだろうけど、こういう空気になったら仕方ない気もする。
そんな気がしたから、私の眼が笑う。
「意地悪ですわ、おひいさん」
非難する輝さんのふくれた顔は、可愛かった。
私も押さえるの難しいや。
目をつむろうとした、その時に。
視界の端に人影が見えた。
ギョッとして私は、そちらを見る。
青い髪の毛の色をした、制服姿の女性徒が立っていた。
私達を見て、ニパッと笑って鈴の様な声で話しかけてきた。
「ごきげんよう、お姉さま方。この先は崖ですよー。来た方向ぐるりと回って、Uターンして下さい♪素敵な場面をお邪魔してごめんなさい。失礼致しました」
「ごきげんよう、可愛らしいお化けさん。忠告に従って帰りますわ。ありがとう」
私は、目を丸くして二の句が告げなかった。
輝さん、何?
さっきの空気から、なんでそんなに冷静に応対出来るの?
輝さんは、その娘に軽く手を振り私と腕を組み、Uターンして歩を進めた。
「ちょ、ちょ、輝さん!?いいの?これで?」
「ええ、おひいさん。せっかくの忠告を無駄にしてはいけませんわ」
さっきまでの雰囲気が嘘のように、空気がピン!
と、張っている。
だからというわけでは無いが、私は駄弁を紡いだ。
「いや~、可愛らしい下級生だったねえ~。お姉さま呼びも様になってたし、いいとこのお嬢様!って感じだったね~」
「.......。この臨海学舎では、私達2年生の生徒だけですわ、おひいさん。私達は、ジャージ姿ですし、制服も微妙に違いました」
「.......余所の学校とか?」
「それも薄いでしょうし。まして髪の色が青いのがおかしいですわ」
「........えーと、では?」
「可愛らしいお化けでは無いですか?」
........。
沈黙と同時に、輝さんに引きずられていた私は自力で、スタスタと早歩きになる。
早く、皆の所に戻らないと。
「悪いモノではなさそうでしたが、せっかくいいところでしたのに......」
「余裕だなあ、輝さん。まあ、いつでも出来るじゃない」
顔を赤らめて、おひいさんの方が余裕ですわ。
と呟く輝さんだった。
いや、怖さゆえになんだけど。
続く