臨海学舎前日
「とゆう事だ。現地集合だから寝坊しないように気をつけて。じゃあ今日はここまで。解散!」
起立、礼として今日のホームルームは終了した。
斜め前の席から、輝さんがやってきていつもの流れで部室へ行く。
部室では、輝さんと2人きりだ。
モヤモヤとムラムラの、気持ちは来るのだけれど、部室ではあの娘が来るかもしれないと思うと、気持ちは乗り切れない。
それでも、輝さんが近付いてくる。
「おひいさん。そんなにドアを見ても、京子はいませんよ?」
癖のようににドアを見ていたようで、指摘されて私は少し動揺して手が震えた。
輝さんは、そんな震えた私の手の甲に自分の手のひらを重ねて、私の耳元に囁く。
「おひいさん。今は私達2人しかいませんよ?」
輝さんが熱っぽい視線を絡ませてくる。
その目に、絡め取られそうになる。
「駄目だよ輝さん。ここじゃ駄目。あの娘が来たらと思うと........」
「駄目なんですか?」
私の体が動かない。
輝さんに動きを封じられてしまった。
駄目だと言ったけど。
嫌ではない......。
抵抗する素振りを見せつつ、もう一度小さな声で、駄目.......。
と、私は呟いた。
そんな私の口を自分の唇でふさごうとした、輝さん。
その時、部室のドアが開いた。
『!!』
急いで、離れて服の乱れを直す私達。
心臓が波打っていたけれど、さっきより余計にドキドキ鼓動が激しくなっていた。
「おィース!ワタシだよー。アンナ先輩だよ?覚えてた?」
「.......お姉さまでしたか。流石に肝が冷えましたわ」
「ア、アンナ先輩ー。.......タイミング!」
「おや、ツヅキをしてクレテ全然イイノコトヨ?見られてスルのもそれはソレデ」
レベルが違う、先輩だった。
「成る程、流石はお姉さま。それも一興ですわね」
一興じゃないよ、輝さん。
レベルを上げようとしないで。
「と、言うよりどうさたんですか?アンナ先輩がここに来るのは珍しい.......というか、初めてじゃ?」
「オフタリサン、夏休みヒマでしょー?バイト紹介しますから、ヤリマセヌカ?」
「やりましょう」
「て、輝さん!?内容も聞かずに、仕事を受けるなんて無茶だよ?」
「貴女と一緒ならどこでも天国です」
「いい風に言ってもね!?」
「いえ。昔は名のある名家の私ではありますが、今は普通。ですので、おひいさんとの時間の為にも、お金は稼いでおきたいのです!」
「そう♪イチャイチャするにもフンイキ作りの為にも、お金はヒツヨウなんですよ?」
「.......うう。そうかも知れないけれど......」
「まー付き合い立てのオフタリサンなら、トコロカマワズいちゃいちゃデキマスケどね?」
「そのポテンシャルは有りますわ、お姉さま!」
ええい!
どっちやねん!?
まあ、さっきの事考えたら、さもありなん。
言われても仕方ない。
「大丈夫な仕事ですよね?」
「シンパイないない!こないだのハナチカのルートだから!夏休みのアイダだけよ!」
なら、大丈夫か。
ん?
別にラインで伝えたらよくない?
「ソリャーあれですよ。付き合いたてのオフタリサンが気になってヨウスヲ見にキタンですよ?」
「あ、ありがとうございます」
「イチャイチャするのも、トキとバショを選ぶんですよ?まあ、そんなクウキになったらトマラナイんですけどね?それでも、皆の前ではキヲツケルです」
「わかりましわ、お姉さま」
ニッコリ輝さん。
うん。
やらかされそうな気配プンプンだ。
気をつけよう。
「その前に、臨海学舎があるんですけどねー」
「また、おひいさんの水着姿が見れるのですね......」
「またミズギかー。ちょっとオオナイ?」
乙女達の、海が開かれようとしていた。
続く