お肉の味
.......ジ......ジジ......ジュ......ジ。
炭焼きの炭が熱くなっていく。
年季の入った黒っぽい網が、焼けていく。
そろそろ、乗せても問題無い。
「行こうか、輝さん。まずは、定石通りにタンからで」
「ええ、最初はそれでいきましょう。後は、お好みで」
肉をトングで掴んで網の上に置いていく。
........ジュー!
......ジュー!!
赤い肉が、熱で縮んでいく。
肉の赤い色が、焼けた色へ変わっていく。
余り、焼きすぎは良くない。
赤が少し残るぐらいで。
「そろそろですわね。頂きます」
およ?
輝さんが、自分を優先するのは珍しい。
肉の魔力?
遠慮は無用か。
なら、私も食べていこう。
「頂きます。あつ、あつ!.......うん!」
『.......おいしい!』
思わずハモってしまった。
ほんと、遠慮いらずで付き合える相手って貴重だなー。
波長も合って。
調子に乗りすぎなければ。
「お待たせしました~。注文のお肉と、ご飯の中2つです~」
うん。
肉。
タレ。
白いご飯。
無言でループしてしまう。
........これ、乙女の姿ではない。
でも、仕方ない。
お肉だもの。
成長期だもの。
「輝さん、モツはいける?」
「もちろんですわ」
「90分3000円で食べ放題だから」
「時間カツカツまで攻めましょう」
言い訳はいらなかったみたい。
私達は、ひたすらお肉を貪った──
「ありやとやんした~」
90分が過ぎ、店員さんに見送られて私達は店を出る。
2人ともお腹がパンパンだ。
非常に動きづらい。
さすがにやり過ぎだ。
色気がゼロだ。
「あそこのベンチで休もうか?」
「そうしましょう。動くのが辛いですわ」
宵の口の、海岸を前に空いたベンチで休憩する私達。
周りを見渡すと、良い雰囲気のカップルがちらほらと見えた。
うーん。
女2人で来てるのが、やっぱり珍しいのか。
気にしても仕方ないんだけど。
「さて。メインイベントの遅れた誕生日プレゼントの交換といこうか?輝さん」
「はい、おひいさん。では私から」
「うん。開けるね?」
綺麗な包装紙から、輝さんのプレゼントを出すと、それは銀の葉の髪留めだった。
私はびっくりして、
「ま、まさかの!」
「え!?何か失敗しましたか?おひいさん!」
「んーん。違うよ、輝さん。素敵な偶然!私のプレゼントを開けてみて?」
輝さんもガサガサと包装紙をめくる。
私のプレゼント。
銀の葉のブローチだ。
「こ、これは......!」
「ね?2人知らずにお揃いだよ、輝さん」
「嬉しい偶然です」
輝さんは、頬を緩めて目を細める。
私は髪留めを、輝さんはブローチを。
互いにつけ合って、プレゼントした。
「誕生日には遅れたけど」
「素晴らしいプレゼントになりましたわ」
私は、キョロキョロと周りを見た。
輝さんは、かまいません。
と、言って目をつむり。
私から、輝さんにキスをした。
分かっていたけどお肉の味がした。
2人でクスリと、苦笑いをした。
続く




