体内時計と夜更かし
「じゃあね~、輝さんお疲れ様~」
「はい、明日の12時に月船堂の噴水の前で」
──コッチ、コッチ。
んがっ!?
ガバリと布団を蹴飛ばす。
部屋が暗い?
カーテンも閉めていないのに?
今、何時?
時計を見ると、18時40分。
いやあああー!!
輝さんと、お昼に約束したのにぃぃー!
「姉ちゃん、晩御飯だぞー。仕事で朝帰ってきて、寝るのは仕方ないけど、そろそろ起きろよー。体内時計狂うぞー」
弟が部屋に呼びに来た。
そ、それどころじゃない!
早く、輝さんに連絡しないと........って、仕事?
あ、ああー、そっか、そうでした!
輝さんとの約束は、明日の日曜日だ。
朝寝たから、感覚狂っちゃった。
良かった、良かった。
焦った。
「姉ちゃん、何かあったんか?彼氏でも出来たー?」
「着替えるから、あっち行ってな」
彼氏じゃないけど、出来たは出来た。
心の中で答えていた。
そして、何着ていこっかなー?
何食べようかなー?
何を送ろうかなー?
そんな事をぼんやり考えながら、一家団らんの晩御飯を頂いた。
「姉ちゃん、ご飯こぼれとる!顔もニヤニヤして!やっぱ彼氏か?」
違うってば。
晩御飯を食べて、お風呂に入って。
やることやっても、眠気がこなかった。
それもそうか。
体内時計が、半日ずれているのだから。
さて、どうしよう?
羊でも数えようかという時。
ポコン♪
ラインの通知がなる。
誰だろう?
この時間は珍しい。
(夜分遅くにすいません、おひさん。
寝ていましたか?)
輝さんからだった。
そりゃ、そうか。
一緒だったもの。
(起きてたよー。輝さんもやっぱり寝れない?寝れるまで少しラインしよっか)
(良かった。目が冴えて寝つける気がしなかったもので)
(私もだよー。体内時計もあるけど、遠足を楽しみにし過ぎた、小学生の頃思い出してるw)
(私も楽しみ過ぎです。明日起きれるかどうか)
(じゃあ、起きた方がcallするってどうかな?遅刻御免で?)
(おひいさんからの、ハスキーな目覚ましcall!たまりません!電話の前で正座します!)
(輝さん、寝て寝てーw)
そんなやり取りをしていると、空がまた白くなってきて、私はいつの間にかに眠りに落ちていた。
スマホを片手で握ったまま、腕枕していた。
──ピロリロリン♪
意識の遥か遠くから、スマホのアラームが鳴る音がする。
うっすら目を開けて時間を確認する。
10時30分を示していた。
うん。
間に合うな。
二度寝を.......と思ったけど、目が瞬間バッチリと冴えて、頭もクリアになった。
その間、およそ10秒。
ふむ。
楽しみ過ぎる。
約束通り、輝さんにモーニング?コールをかける。
ワンコールで着信した。
「もしもし輝さん起きてるね.......お早う」
「耳が幸せです!」
寝てないんじゃなかろうか?
と思わずにいられない。
「正座してないよね?輝さん」
「ま、まさか~。冗談ですよ、おひいさん」
何故だろう?
電話の向こうで、輝さんが目を泳がせている気がする。
輝さんの、凛とした姿はいづこに?
続く