夜の国道沿い
夜の国道線。
時刻は、19時になろうかというところ。
パラパラとした、人通り。
車も数台ぐらいしかすれ違わない。
「んじゃ、ここの担当よろしくー」
ハイエースから、下ろされる私と輝さん。
え?
夜番ですか?
未成年の女の子2人なんですけど?
いいんですか、これ?
「ええ、よくないんですが、おひいさん。親御さんには了解も得ましたし、仕事にありつけただけで良しとしましょう」
まあ、なんて緩い世界線だこと。
こんな世界もあるんだねぇ。
助かります。
「さて、一丁やりますか!どっちが先行いく?圧倒的に、先に終われる先行が、人気だよ?じゃんけんでいく?輝さん!」
「分かりました。では、じゃーんけーん」
『ぽい!』
私がチョキで、輝さんがグーだ。
私の負け。
「ふふ。では、先行いかせてもらいますね?」
「うぬぬ。じゃあ、2時間後に交代という事で。私は休憩入るね」
「分かりました。って、何で隣にイスを立てて座ってるんですか?おひいさん?」
「えへへへ。いや、仮眠には早いし、少し相手してもらおうかなーと」
「是非お隣に。この交通量なら、しれています」
片道、二車線の通行する車両のカウントだった。
大型、普通、軽、自動2輪、自転車と。
カチリ
早速、普通車が1台。
輝さんがカウントする。
このペースなら、うちこぼす事は無い。
私も安心して、お邪魔できるものだ。
「お菓子あるよー、輝さん。塩味とコンソメどっちがいい?」
「両方好きなんですが」
「んじゃ、適当につまんで♪」
ポテチの袋を2つバリッと開ける。
「仕事中のポテチ。とても背徳的です」
「あったかいコーヒーもあるよ」
家から、へちってきた魔法瓶につめたホットコーヒーをカップに注ぐ。
輝さんに、カップを一つ渡す。
「うん。塩気が流されますね」
「今はまだいいけど、後半にこのホットコーヒーの有難みが3割増しになるよ?」
「確かに。まだですが、冷えてくるんでしょうね。とと........」
カチリ──
輝さんと、少し喋って小一時間立とうとしていた。
「んじゃ、輝さん。私、探検ボクの町してくる」
「お気をつけて。何かあったら叫んで下さいね。不審者は、捻りますから」
あははっ。
輝さんに金棒だなあ。
頼もしい相方だ。
私は、仕事場の国道から住居のある方へ流れていった。
まだ宵の口とあって、仕事から真っ直ぐ帰るサラリーマン等とすれ違う。
そして、小さな公園があった。
子供は流石にいない。
子供の代わりに、宿無しおじさんがベンチで、腕枕をして、こっくり、こっくり、船を漕いでいた。
近場に自動販売機があったので、カチャンと小銭を入れてホットコーヒーを押す。
ガチャリと下から、コーヒー缶が出てきた。
私は手にしたコーヒー缶を、うたた寝している宿無しおじさんの前に置いた。
気付いた時には、ホットじゃなくなってると思うけど、余計なお世話だろうな、とも思った。
まあ、自己満足とも思いながらもその公園を後にした。
近くに、これまた小さな祠と、守り木のような、大きな柏ノ木が植わっていた。
また、小銭を取り出してお賽銭を入れて、パンパンと適当に手を叩いて、今日が無事に済みますようにと、お祈りをした。
「おっと。いい時間だ」
交代時間まで、後10分というところで、私は輝さんのいる国道へと足を向けた──
続く