遅れてきた誕生日
「そこまで。時間です、用紙を後ろから集めなさい」
1番後ろから、テスト用紙が回収される。
あ~、なんとか平均点には届いたかな?
輝さんにテスト勉強教えてもらいながら腑甲斐無い。
けど、精一杯は出来たかな。
悔いは無い。
斜め前の席から輝さんが、いつもの様にやってくる。
「おひいさん、お疲れ様でした。いかがでしたか?」
「面目ない~。けど、赤点は回避出来た!ありがとう、輝さん。これで補習も無し。夏休みも大丈夫!」
「それは重畳ですわ。では、参りましょう」
私達は、部室へ行く。
時間が経つのは早い。
京子ちゃんが部室に姿を見せなくなって、2週間経つ。
これは、仕方ない事なんだろうけど。
誰が悪い訳でもない。
でも、後味の良いものでもない。
だから、どうしても待ってしまう。
都合のいい話を。
唯一の後輩を。
だけど、暗い顔をして待っても空気が湿る。
だから輝さんと2人で出来る事をしていようと思った。
「そう言えば今朝の占いでねー、牡羊座の私は今日はやらかすでしょう!って結果なんだけどねー。テストの用紙の名前の欄は、ちゃんと自分の名前書いたよ!」
「!!」
「どしたの?輝さん。急に真っ青な顔になって......」
「い、いえ。確かにやらかしましたわ......。私が、おひいさんの誕生日を把握してなかったなんて.......」
「!!て、輝さんも牡羊座!?2人とも!?もう5月の終わり!誕生日祝いが!!やらかしたー!!」
思わぬ方向で、やらかしていた。
2人揃って。
ひいやああ、と一通りやったら少し口角が上がった。
クスリと笑う輝さん。
「私は没落お嬢様ですから、余り期待しないで下さいね?おひいさん」
「やっぱり輝さんも贈る気満々なんだね。私も何か単発のバイト入れるよ!」
この重要な誕生日祝いを失念するなんて!
どれだけイモを引いたのか?
私達は、やらかしを埋める!
「いつになさいますか?」
「3日後で!」
「日払いのバイトですね?」
「当てはあるよ.......」
「私もご一緒しても?」
「えっ!?輝さん、しなくてもいけるでしょう?道場で教えてるし!?」
「それはそうなんですが.......いえ、連れだってのお仕事も楽しいかと思いまして........」
「私と一緒にいたいと?」
「.........」
ニマニマしてしまう私の口角だった。
輝さんが、意地悪.....。と小声で言うのが堪りませんでした、はい。
「うん!やろう輝さん!一緒にバイトして日銭を稼いで、お互いに遅れた誕生日プレゼントを送り合おう!」
「言葉で聞くと、聞くに耐えないイベントになってますわね.......」
気にしない♪
気にしない♪
ピロン♪
と、スマホで登録と応募を済ませる私。
履歴書いらずなんだから、お金も掛からない。
いやはや、助かる。
「早ければ、明日には決まると思うよ?」
「そうなんですか?おひいさん。それで、どんなお仕事を選んだんですか?」
「うん。そろそろ、あったかいし。夜も底冷えとまではいかないだろうから、いけると思う」
「警備ですか?」
「ううん。カチカチ♪」
私は、笑顔でドヤっ!として、輝さんはカチカチ......?と、怪訝な顔をするのだった。
そんな顔の輝さんも、可愛いなー♪
そんな緩んだ私の顔を見て、私の腕を軽くつねる輝さんだった──
続く