ポコン♪
階段を上がって、別館の部室へ向かう。
輝さんと2人手を繋いで。
2人とも口も開かず、空気も重かった。
重いなりにも足は進み、部室の前までやってきた。
京子ちゃんと、顔を合わしてなんと喋ればいいのだろう。
だけど、多分.......。
予想をしながら扉を開く。
カラリ
重たい心情とは反対に、空気の乾いた音がした。
........やっぱり。
当然の事なんだろうけども、京子ちゃんの姿はなかった。
いけない事なんだけど、ちょっとホッとしてしまった。
「少し安堵してしまいました。いけませんね」
輝さんも同じ気持ちで.......いや、私よりも重いか。
京子ちゃんの告白を断ったものな......。
ラインを見ても、既読はつかない。
部室にまだ来てない.......いや、やはりまっすぐに帰ったんだろうな。
どうしていいか。
いや、どうにもならない.......。
輝さんの横顔を見た。
悲しいような、曇った顔をしていた。
わからない。
どうすればいいか。
けど私は、輝さんの顔に手で触れる。
気休めでしかないけれど、時間が過ぎるのを待つしかないのかもだけど、これぐらいしか出来ない。
輝さんのサラサラとした肌を撫でる。
輝さんは少しくすぐったそうに、はにかむ。
「ありがとうございます。おひいさん」
はにかんだ輝さんを見て、私もクスッと笑う。
輝さんの顔を撫でている手を、輝さんは握る。
思いもよらない強い力で。
びっくりして、少し自分の瞳が泳いだのがわかる。
輝さんの瞳が、はにかんだ時より潤んだように見える。
その瞳を見ていると吸い込まれそうになる。
いや、吸い込まれた。
私は、うっすらと目を閉じながら、輝さんの顔に近付いていく。
輝さんも細い切れ長の目を静かに閉じる──
ポコン♪
閉じかけていた、目を2人とも開く。
顔が........!
輝さんの顔が、唇が!!
超至近距離だ!!
私は、何をしようと!?
急速に恥ずかしくなっていく。
先ほどまでなんともなかった心臓が、思い出したように早く脈打っているのが分かる。
「あ!あ!ラインだよ!?輝さん!.......って、京子ちゃんじゃない?アンナ先輩?」
輝さんの顔が見れずに、背中を向けてしまった私。
表情を見なくても分かる。
輝さんが、ガッカリしている雰囲気を出している!
京子ちゃんじゃなく、アンナ先輩からだもんなー。
.......ってハイ。
分かっています。
ヘタレで御免なさい......。
でもなー。
付き合って、初日ってのもどーなんだろー?
雰囲気に流されてするのも違うような?
........うん。
ラインの通知なかったらしてたよ、キス!
........て、あーあー!
グルグルグル。
目と頭が回る回る。
天井がグルグルグル。
「おひいさん。おひいさん。しっかりして下さい。それでアンナお姉さまはなんとラインで?」
輝さんに肩を捕まれて、気を戻す私。
ハッ!
色々、童貞みたいな事考えている場合じゃなかった!
スマホのラインを再びちゃんと見る。
「トウホウに後輩のミガラ確保しせり。このアイダ行ったふぁみれすにコラレタシ」
なんで、電報調?
てか?
てか!!
「京子ちゃん、アンナ先輩とファミレスに居るって!輝さん!」
なにかあろうとしたのも束の間。
後輩の行方をつかんだ私達。
なにをどうすればいいかもわからない。
2人とも、不安で顔は曇る。
だけど、その手を繋いで。
繋いだら、ファミレスには行けそうな気はした。
続く




