昨日の今日でお弁当
キンコンカラリ♪とチャイムが鳴り、お昼休みの時間がやってきた。
授業の静けさから一転して、活気づく教室。
今日はお弁当の日だった。
夏海と見文が、席を寄せてくる。
「おっ。今日は忘れなかったんだな日依心」
「昨日はどしてたん?」
2人とも、パカパカとお弁当のふたを開けながら聞いてくる。
輝さんの事.......。
別に隠すことじゃないよね?
でも何故かやましい気がするのはなぜ?
「豪松陰.......輝さんに、ご飯分けてもらったの」
夏海も見文も、食べていたご飯をブハア!と、豪快にむせて、ゲホゲホとお茶をすすって、落ち着こうとする。
まったく、なんなのさ......。
私、そんなおかしな事言ってないしねえ?
2人とも、どうしたのよ?
「ハアー。ご飯がつまって死ぬかと思ったー」
「思ったー」
「ちょっと2人とも、そのリアクションはなにさ!?ワケを聞こうじゃない」
「日依心、豪松陰さんと仲良くなったんだ.......」
「豪松陰さん.......輝さんって呼んでるんだ」
ん!?
アレ!?
なんか恥ずかしい気持ちが!!
ご飯を運ぶ手が止まって、むぐう!と箸をくわえる私。
なんだろうか......。
やっちっまった感が否めない私。
「もういきなり名前で呼び合う仲なんだ。おめでとう」
「日依心、豪松陰さんのこと隙あらば見てたもんなー」
──ば、ばれてたのか.......。
輝さんの事ひと言も、誰にも漏らしてなかったのに。
ち、ちがっ!
こ、これは別に、恥ずかしいことじゃないもん!
輝さんは、凄く気になった人なだけで!
そ、そう!
憧れた私の理想の女性像で!
顔を赤く染め上げ、目をグルグルさせてワタワタしている私を、顔の前で両手を合わせて拝む2人だった。
「がんばってください」
「青春、尊い」
「拝むな~!!違う~!!」
目の端で、輝さんがサンドイッチを頬張りながら、こちらをうかがって、クスリと笑っていた。
──あっ、輝さん今日もパンなんだ。
熱の上がった頭が、そんな事を考えた。
「今日も活動するんですか?」
──放課後、輝さんが声をかけてくる。
なんか意識が変だ。
ふと、教室の玄関を見ると、夏海と見文がこちらを見てドキドキしていたので、ソフトボールを投げて追っ払った。
まったくあの2人は!
変に意識しちゃうでしょ、輝さんの事。
そーゆーのじゃないから!
「いつも仲の良いお友達ですね?」
輝さんが、笑顔だ。
いや、只のくされ縁の悪友です。
そうボソリと答えながらも、輝さんと目が合わせられない私だった。
続く