教室に戻って
朝のホームルームを過ぎて、もう1限の時間は始まっていて、私は教室まで輝さんと手を離さなかった。
ドアを開けるのが名残惜しい.......。
一通り先生にお小言を受けて、2人で自分の席に戻る。
夏海と見文が、ニヤニヤとした目.......ではなく、生暖かい目をしていた。
やめれ。
見守るな。
恥ずかしくもあり、嬉しくもあり、斜め前の輝さんを見てみたら、輝さんも私を見ていた。
ただ、にへら~と笑っていて。
どこにも、凛とした姿はなかった。
私のせいか......。
でも、なんだか得難い平和で幸せな笑顔だった。
多分、私も鏡で見たらおんなじような顔をしているんだろうな。
ハッ!
と、振り返えると今度こそ、夏海と見文はニヤニヤとした顔をしていた。
「で。どこまでいったの?」
「どこもいってないよ?」
「へっ。やることやってんだろ!」
やることって何かしら?
私には分からない。
と、とぼけて腐れ縁の旧友達の追撃をかわす私。
輝さんは、顔を赤くしてパンを頬張りながら下を向いていた。
........いや、輝さん。
まだ、何もしてないよね?
誤解を生んでるよ?
「.......だんまりか。課長、こりゃ一通りやってますぜ?この2人」
「朝のあの短時間で......!恐ろしいポテンシャルだ!どこまでいくつもり?日衣ちゃん」
「からかうな。短時間でなにも出来ないって、分かってんじゃん!」
「ふむ。時間があればいいと?」
「ぬ」
また、ニヤニヤし出した10年来の友人達。
輝さんもなにも言えず、モジモジしっぱなしだ。
チラリと、こちらを見る。
くっ!
おかしい。
3対1の構図になってる!
「.......だから。付き合う事になっただけ。見守ってくれて、ありがとう.......って、あーもー!私が1番恥ずかしい!」
私の手に、ソッと手をかぶせる輝さん。
旧友が、スタンディングオベーションしやがった。
遊んでやがる......!
とかなんとか。
遊ばれて、煽られて、旧友達から手荒い祝福を受けて、昼食を終えた。
そして、授業のため教室を移動中に、皆の1番後ろにいた私の手をコッソリ握る人がいて......。
私は小声で返す。
「ちょ、ちょっと輝さん!皆がいるから!」
キュッ!
と、強めに握られてしまった。
離す気は無いようだ。
とはいえ、皆に見られたらと思うと私の胸の心臓は鼓動が早くなった。
手を振り解ける気もしなかった。
それだけ繋がれた輝さんの手のひらは熱かった。
不意に、上級生とすれ違う。
栗色の髪の毛に、眼鏡をかけた外人さんの.......アンナ先輩!
「フム。はやり、そうなりマシタカ。おめでとうゴザイマス!ぞんぶんにイチャイチャしてクダサイ♪こっそりね」
肩をパンパンと叩かれて、異国の先輩に祝福される。
さっきから私の羞恥はMAXだ。
心臓が五月蠅い。
輝さんが、深々とアンナ先輩にお辞儀をして、アンナ先輩も快く去っていく。
ポツリと一言置いて。
「となると、アトのふぉろーがイッケンね」
心臓の鼓動がゆっくりとなっていく。
私も、平静を装いながらも浮かれていた。
けれども、浮かれ切れてもいなかった。
頭の隅にどうしても残るものがあって。
アンナ先輩の一言で。
近付いてくる、放課後の時間で。
頭の真ん中にくる。
初めてできた後輩の西崎京子ちゃんが。
続く




