そうと決まれば
たんたんたん。
自宅の2階の自分の部屋へ駈け上がる。
部屋に上がる前に、台所の冷蔵庫からポカリスエットを一気飲みして、落ち着けようとしたけど、落ち着かなかった。
そりゃそうか。
学校からずっと走って帰ったのだから、初春とはいえ、しばらく体は火照ったままだろな。
ベッドに大の字になって、私はさっきの出来事を思い返す。
「.......はっきり言って下さい、お姉さま!あの人が!会長がその人なんでしょう!!」
輝さんの声は聞こえなかったけれど......
「........やっぱり!やっぱり!.......ちくしょう!」
京子ちゃんの声が頭の中でリフレインされて、輝さんの想い人が私だと思うと.......。
顔が沸騰したように熱くなるのを感じるのだった。
もう走った汗は引いたのに、顔は熱いままだ。
どうしたもんだろう......。
思わず逃げて帰ってしまった。
心配かけちゃいけないから、ラインを入れよう。
急用が出来たから先に帰る、と。
見てしまった。
聞いてしまった。
京子ちゃんの好きな人は輝さんで。
その輝さんが好きな人は私で。
私の好きな人は.......。
どうなんだろ?
自分の事なのに、よくわからない。
確かに、輝さんの事をよく見ていて、物凄く惹かれたけれど、恋愛対象なんだろうか?
人間として.......友人として......なんだろうか?
ただ私の、口の端は上がっていて気分は高揚したままで.......。
落ち着けないまま次の日を迎えた。
──「よお、おは。日衣心サクラサクか?」
「ついに来た?日衣ちゃん、ニヤけてるよ?」
「.......いや、その。やっぱり私、笑ってた?」
「うん!おめでとう!」
「いや、まだっていうか......。確定してないというか。2人共分かってた?」
「まーなー。輝さんも日衣心も、お互いによく盗み見してたもんなあ」
「最初から怪しかったよ?日衣ちゃん♪」
返す言葉も御座いません。
朝から早々の夏海と見文だった。
端から見たら、完全にそうみたい。
友人のレベルじゃなかった。
思い返せば、1番の友人であり、いつも隣にいる人になってたなあ。
やっぱり笑ってたのか、私。
どうしようもへったくれもなかったな。
恥ずかしい。
京子ちゃんはどうしよう?
だとか、私は百合なのか?
とか、あるけれど、単純に。
輝さんの想い人が私であると知って。
単純に、嬉しいのだった。
ああっ.......そうか。
そうなのか。
そうだったのか。
うん。
自分の気持ちも分かった。
では、どうしようか?
思ったまま伝えればいいと思った。
朝の登校する生徒達の群れ。
その群れの中から、やはり私はその凛とした姿勢の輝さんを見いだせる事が出来た。
夏海と見文と私の3人は、輝さんに朝の挨拶をする──
続く