親密な先輩達
「よお、アンナ。お疲れさん!」
「ハナチカ!」
栗色の髪を今日はポニーテールに纏めて、眼鏡は外しているアンナ先輩。
極度の緊張からの弛緩もあるのだろう。
駆け寄ってきて、花知華先輩に全力で抱きつく。
「うわっぷ!汗だくで抱きつくんじゃない!全力で抱きつくな!む、胸に埋もれる........!」
「キライじゃないクセに~♪ウリウリ♪」
上級生の威厳やどこに。
そうか。
花知華先輩は、汗フェチだったのか。
上級者だった。
「なんか、2人ともえらい親密ですね?」
「まあ、そりゃねぇ.......」
そうか。
京子ちゃんは、2人がデキてるの知らなかった。
ていうか、アンナ先輩も初めてなんだから、知るわけもない。
説明するのもあれなんで、スルーしとこう。
イチャつく2人を見る輝さんは、顔を赤くしながらも真剣な表情だった。
まあ、微笑ましいよね。
「お疲れ様でした、アンナ先輩。詳しくは分からないんですが、走っている姿。美しくてとても綺麗でした。そのおへそが出る上下のピッチリしたウエアも、格好いいです」
私以外、全員目が点になった。
え?
京子ちゃんも?
「........会長。恥ずかしくないんスか?」
「お、おひいさん!そんな目で見て!」
「ワ、ワタシはハナチカのモノだよ!?」
「塚。口説き文句になってるぞ」
ギューとアンナ先輩に抱き締められて、宙ぶらりんで浮いていた足を地に着けた花知華先輩は、その小さな背を伸ばして、高身長のアンナ先輩を抱き寄せる。
「いくら可愛い後輩でもな、塚。アンナはオレのもんだ。やらんぞ?」
アンナ先輩の耳たぶを、八重歯で甘噛みする花知華先輩。
ビクリと体を震わせるアンナ先輩。
浮気性のようで、一途なのか?
よくわからない。
ん?
あー........あー........。
私も今言った事を反芻して、やっちまったと赤面する。
そんな私を尻目に、京子ちゃんがシンプルに自分の感じた疑問を2人の先輩に聞いた。
「えっと。すいません初めましてで、失礼なんスけど、先輩方距離が近すぎません?」
「いや、そら付き合ってるからな」
イヤン♪
という、まんざらでもない顔をするアンナ先輩に、真顔の花知華先輩だった。
そして、事実を知った京子ちゃんは固まっていた。
「お、女同士で付き合っていると?」
「ヤー。ワタシはハナチカのもの。ハナチカはワタシのモノ」
「好きだったら別に変じゃないだろ?」
隣で輝さんが、物凄くウンウンと頷いていた。
そんなに分かりみなのか.......。
京子ちゃんは、まだ固まっている。
そこまでショックなの?
「そ、そういう事も出来るんだー!!」
目をカッと見開き、京子ちゃんの瞳から光がこぼれ出る様な有り様だった。
なんか、覚醒してない!?
続く




