心休み
シュリシュリシュリ
シュリシュリ
うん。
削れた。
「あら、珍しい。鉛筆ですか?おひいさん」
「ああ、輝さん。うん、そう。鉛筆削ってんだ。まあ、シャーペンあるんだけど、なんかたまに鉛筆削りたくなるんだ。変な趣味なんだけど」
「確かに。鉛筆の自動削り機もありますから、変わってますわ。削る行為いがお好きなんですね?」
「うん。........こう、無になって鉛筆を削っていると、散漫になっていた精神が集中出来る気がして」
「面白い、集中法ですわね。私もご一緒しても?」
「どうぞ、どうぞ」
輝さんも私の隣に座り、鉛筆を削り始めた。
シュリシュリシュリ
シュリ
少し削れた所で、また声がかかる。
ん?
京子ちゃんか。
静かにして欲しいな。
集中が途切れる。
「会長!お姉さま!筆記具を丸々忘れたんで、貸してくれませんか!?」
「休み時間はまだ余裕あるから、京子ちゃんも削っていったら?」
「え!?は、はい?いや、私シャーペンでいいんですけど.......」
私は、ぶつくさ言う京子ちゃんに、新品の削れていない鉛筆を渡す。
勝手も分からず、京子ちゃんも座って削り出す。
「なんで、こんな事........」
シュリシュリシュリシュリシュリシュリ
「日衣心!なんか変な事してんのか?」
夏海と見文も来た。
私は、無言で鉛筆とカッターを渡す。
総勢5人で、昨今使われない鉛筆を削り出す。
変な........周りが距離を置く、シュールな絵面が出来上がった。
別に、狙ってないけれど。
シュリシュリシュリシュリシュリシュリ
シュリシュリシュリシュリシュリシュリ
シュリシュリシュリシュリシュリシュリ
キーンコーンカーンコーン♪
タイムアップの鐘が鳴る。
うーん、もう少し集中したかった。
無念?
「ありがとうございます会長!筆記具、鉛筆借りていきますね!」
「はっはっ。なんか楽しかった。ありがと、日衣心!」
各々、満足して自分の場所へ戻っていく。
いや、もの足りないなあ......。
カリカリ頭をかく私。
目の前には、みんなの削った鉛筆の削りカスの山が。
え!?
私だけ掃除するの?
「楽しかったですよ?おひいさん。さあ片付けるの手伝います」
輝さんが、横で頬笑む。
.......ありがたいなあ。
自分のむくれた気持ちが、元通りになるのを感じた。
と言いながら、授業が始まったけれど、私は教科書を立ててバリケードを作り、隠れながらカッターナイフを取り出して、チキチキチキチキと、刃を出して、鉛筆を削りだす。
シュリシュリシュリ........。
輝さんが、仕方ないなあ。
と、ため息をついたのが分かった。
続く