ゴッチンコ
さあ、長丁場の3200m。
京都競馬場を2周してゴールな訳だが、早くも1週目が過ぎていこうとしていた。
「ああっ!先頭のキンノホシと、連れて会長のクロビートがどんどん後続を突き放していく!」
「ま、まさか。いえ、まだ1周したところ!」
私は事態を静観する。
まだ。
まだだ。
次の周回で、私の読みが決定的になる。
「さあ、残り1000m!2周目の向こう正面に入って、キンノホシを交わしてクロビートが先頭に立った!まだ、後続を突き放した縦長の馬群!」
よし!
ハマった!
後は、スタミナの血統が勝負を決める!
「京都の坂を下り最終コーナーへ向かう!先頭はクロビート!三冠馬ゴールドビッグはまだ後方!10馬身は離れているぞ!これは間に合わないか!」
京子ちゃんが目を開いて声を上げる。
輝さんは珍しく、やられた.....!と、顔に出ていた。
私は冷ややかな目で、それらを見る。
「優勝は、なんとなんとクロビート!人気馬が慌てて追撃!しかし、時すでに遅し!それらを尻目に、2着に4馬身差の完勝クロビート!」
「た、単勝万馬券......G1レースで......」
「1.4倍が3着にも入れない......?」
驚きで、輝さんも京子ちゃんも声が小さくなる。
しかし、グッとこらえて輝さんは声を出す。
「お見事です、おひいさん!1人の時ならいざ知らず、みんなとの勝負で14番人気を予想して。そして的中する。並みではありません」
「うん。輝さんのジョーダンジャナイヨは2着だね。荒場になると踏んでたけど、京子ちゃん。残念だったね」
私は涼しげに見せつけた。
「ぬぐぐぐ......!会長さんが凄いのは分かるけど!こっちは、ホヤホヤの新入生なんだから、接待プレイぐらいしてよ!」
「ハッハッハッ!ダメダメ。そんな事したら運が喰われちゃう」
「懇親会で、こんなエグイ勝ちかたする先輩いないよー!!あー、もうふて寝する!」
........!!
ゴロリと、京子ちゃんは私の膝に頭を乗せてきた。
こ、後輩をひざ枕!
夢見たシチュエーション!
私は、手を触れれない。
「京子!無礼な!おひいさんに何をする!」
輝さんが凄い剣幕で、私の膝に頭を乗せてやっぱり2人でアタマを打った。
しばし、苦悶しながらも、
「つ、次は負けませんから~!会長~!」
「塚さんのひざ枕♪塚さんのひざ枕♪」
私の足が痺れるだろうけど、もうレースも勝負も終わって、いくらでも3人こうしてていいのだった。
幸せそうな輝さんの頭と、膨れっ面の京子ちゃんの頭を撫でる私。
日が落ちるまで、そうしていた。
穏やかな日曜日だった──
続く