ラーメンと女子高生
「はぁ~」
「どうしたの?日衣ちゃん」
学生食堂のテーブルに、片ひじをついてタメ息をつく私。
空いた隣の席の、もうひとつ隣から見文が聞いてくる。
「いや、部活でね?初めて後輩が出来たんだけどさ。元気があって可愛い娘なんだけどさ」
「おっ、おめでと。日衣ちゃん、後輩欲しがってたもんねー」
「うん。でもその娘は、輝さんの方に憧れててさ。いや、輝さんカッコいいから仕方ないんだけど、もっと懐いて欲しいなーと思うわけですよ」
「お待ちー。聞こえたぞー日衣心。なんだよ、もっと後輩に構ったらいいじゃん」
夏海が、空いた席に座る。
お昼はスタミナどんぶりのようだ。
相変わらずよく食べる。
「そんなにガツガツいって嫌われたくないんだよね。それなら、少し離れても輝さんに任せてた方がいかな?って」
「日衣心にしちゃ、らしくないなー」
「先輩って呼ばれるだけで、嬉しいからいいかなって。でも輝さんはお姉さまって呼ばれてて、少し寂しい」
下を向いて、人差し指をツンツンしている私。
何も返ってこないので、横を向いたら夏海も見文も口を開けて固まっていた。
「マジで?」
「えっ?マジで、マジで」
うひゃーーーー!!
夏海と見文が、女子高生のような黄色い声を上げた。
いや、女子高生なんだけど、いつもそんな感じがないから。
でも、そんなにかなあ?
私もモヤモヤはしたけれども。
「そしてアレかあ!?お姉さまと呼ばれて、呼び捨てで返す!?」
「うん。京子って」
ひいやああああーーーー!!
またか。
少し対応するのが嫌になってきた。
「こ、ここは、共学ですよ!?見文さん!!」
「ああ、なのに女子高の空気が!!夏海さん!!」
私は、黙ってラーメンをすする。
それ、そんなに珍しいかね?
大声出すことかな。
マナーが成ってないよー、2人共。
「なんて事だ!我らが日衣心が!?」
「千々に乱れる三角形!!輝さんったら、もう!!」
「は、はい。呼ばれましたか?」
........輝さんだ。
輝さんが立っていた。
通りすがりで、声をかけようと近付いて来たのだろう。
購買で買ったのだろう、パンを抱えて。
夏海と見文が、両サイドからヘッドロックをして私を見る。
「ああ!日衣心が、キレてる!キレてる!」
「大丈夫!私達が応援してるよ!日衣ちゃん」
あー、そんな顔してるかー。
そりゃそーだろー。
飯くらいゆっくり食わせろー。
「ウチの日衣心は。ウチの日衣心は駄目ですかいの~」
「年下!輝さんは、年下の方がイイの?」
そんなんじゃないよ。
2人共何言ってんだ。
心配してるようで楽しんでるな。
輝さんがパンを抱えたままで、凛として言い放つ。
「文脈の前後は見えませんが、言える事はただ一つ。私は、おひいさんがいればいいのです」
おおおーーー!!
どよめく2人だった。
私もラーメンが、食べづらい空気だ。
箸を止める。
夏海と見文が、輝さんにクエスチョンをする。
「では何故、お姉さまと?」
「言われてみたかったのです」
凛とした姿で、歩いて退場していく輝さんだった。
夏海と見文は、
「.......仕方ない!!」
「輝さんだったら仕方ない!!」
とりあえず、もうよさそうなので、私はラーメンをすすった。
続く