西崎京子とお姉さま
目の前で、後輩の可愛い女子と腕を組む輝さんがいた。
私がボケ~と目を点にしていると、珍しく輝さんが慌てて、
「ち、違います!おひいさん、これは違います!こ、こら、貴女!早く離れなさい!」
「え~先輩の、けち~。これくらいいいじゃないですか~。せっかくの再会なんですから」
はて、輝さんの古い知り合いだろうか?
西崎さんを振り解く輝さん。
ブーブー言いながらも、輝さんから離れた西崎さん。
「再会と言われても、私は貴女のような後輩を知らないわ」
「......え。去年の文化祭のこの会場に見に来てたんすけど......。あっ、そっか、まだあん時黒髪だった!」
西崎さん、文化祭に......。
ええっ?
こんな元気な娘、居たかなあ......?
「てか、高校の文化祭って初めてで緊張してたし、今よりもっと地味だったしなー。いや、でも記憶の片隅にも残らないって!」
「大丈夫!今、インパクトあるよ西崎さん」
「か、会長さん。それフォローですか?」
「うん。ごめんね把握出来ていなくて。私は塚良日衣心。覚えてくれてて有り難う。でも会長よりは、先輩と呼んで欲しいかな?」
「分かりました、塚良先輩」
きゃーっ!
夢がひとつかなったー!
と、私が心の中で悦に入っていたら、
「豪松陰輝子よ。よろしくね、西崎」
流石の輝さん。
だけど、この後輩も違った!
「姉御と呼ばせて下さい!」
「それは勘弁して」
即答の輝さん。
ひきつるような笑顔だ。
「では、お姉さまでは駄目ですか!?」
「仕方ないわね。いいでしょう」
即答の輝さんだった。
いいんだ!?
いいの!?
目の前で、私の知ってる日常とは違う世界が出来ている。
輝さんが、お姉さまに!?
似合い過ぎて怖い......。
何かこの2人を見ていると、モンモンとしてくるのは何故?
私の、先輩と呼ばれて嬉しかった気持ちが小さく感じるのは、何故?
喜んで1人はしゃいでいる後輩を尻目に、輝さんが小声で言う。
「お姉さまと呼ばれては仕方ありません。しかし、おひいさん。おひいさんは、私の1番ですからね?誤解無きよう」
「ほんとかな~」
意地悪を言ってみたら、輝さんが慌てていた。
本当です!
本当の本当に!
天地神明にかけて誓います!
.......悪いことしたな。
「冗談だよ、輝さん。私の1番も輝さんだからね」
ほう。
と、タメ息をついて安堵する輝さん。
そんな輝さんを見つめていると、
「なに、イチャついてるんですか」
西崎さんが、混ぜろとばかりに絡んでくるのだった。
今日は、賑やかな走研の部屋だった。
続く