同好会
「よっしゃ、部活行きますかあ!じゃあねん日依心♪」
「よっこいせっと。んじゃ、また明日なー、日依心ー!」
「うん。夏海も、見文も、また明日!後、名前で呼ぶな!」
キンコンカラリ♪と終業のチャイムが鳴り、皆一様に動き出す。
背筋を伸ばし、カバンを抱えて帰宅する者。
友人の様に部活へ向かう者。
本日の授業から解放されて、ザワザワとした雑踏の教室で、斜め前の席から輝さんが、ゆっくりと歩み寄ってきた。
既に、輝さんは楽しそうな顔をしてらっしゃる。
私は慇懃にうやうやしく、出迎えて言う。
「さあさあ、お待たせ致しました輝お嬢様。先ほどのお詫びとして、どうぞ私をお連れくださいまし」
「あら、やだ塚さん。様になってる言い回しですね。小さい頃のまだ栄えていた我が家を思い出しますわ」
「ほめられちゃった。じゃなくて輝さん。そんな意図は無いからね?ごめん」
昔を思いださせてしまった事を詫びる私だが、輝さんは、キョトンとした顔を一瞬しつつも、コロコロ笑うのだった。
「全然いいですよお。気にしてません。昔は昔でいい思い出として残ってましけど、やはり今の方が気楽ですから」
どれほどの名家だったのだろう。
普通並の生活しか知らない私だけど、(友人達にこれを言うと、なま暖かい目で見守られてしまう。私ん家は普通だ!)
幼いときだけだったとしても、それでも輝さんの所作は美しい。
見とれてしまう。
やっぱり、あの時目に飛び込んできた、凛として背筋の伸びた輝さんだから。
目に焼き付いてもさにあらんや。
仕方ない。
美しいモノは美しい。
うんうん。
私は腕を組んで、1人で納得していて輝さんを置いてけぼりにしていた。
「どうしたんですか?1人で頷いてらして。塚さん変ですよ?」
けっ、結構しんらつね、輝さん.......。
真面目な顔で言われると、ダメージ倍な感じ。
でも悪気0ね。
OK、キツイね!
笑いながら、誤魔化そう。
「なんでもない!なんでもない!輝さんが綺麗ってだけ!」
「あらあ~♪」
誤魔化せてない。
もう早くお姫様の言う事を聞いてしまおう。
余計な怪我をする前に。
出来れば自分のペースにしたい。
輝さんはまだ、あらあ~♪になってるけど!
私は輝さんに問う。
「輝さん。さて何をしましょうか?」
「私は、帰宅部なのですが塚さんは部活してらっしゃるのですか?」
これはチャンス!
とばかりに威勢を張り上げる私!
「よくぞ聞いてくれました!私1人だから部ではなく会ではありますが!私が立ち上げたその会!その名も!」
おおう!
と、輝さんが私の威勢に飲まれる。
ここで、取り戻す!
「走馬予測研究会であります!」
ん!?
って、目をしてた輝さんだった──
続く