御姫さん
「まあ、アンナ。オレが卒業しても、こいつらの事は目にかけてやってくれ。って、話しさ」
「お姉さまが言うならば仕方ナイですねー。これからヨロシクです!塚さん、輝さん」
──なんてまあ、最初はどーなるかと思ったけど、無事に花知華先輩の彼女、アンナお姉さまとの邂逅遭遇を終えたのだった。
自分が卒業しても気にかけて、アンナお姉さまに言伝てるんだから、やっぱり先輩だなあ。
良い先輩だ。
とりあえず、アンナお姉さまってゆうの、私はムズムズするから、アンナ先輩にしとこ。
無理はよくない。
「そういえば、輝さん。私達以外て、この呼び方されてたけどいいの?嫌じゃなかった?」
「少し抵抗はありますが、あの先達の方たちならば仕方ない気がしますので、いいですよ?塚さんはどうですか?」
「私は.......名前で呼ばれなけりゃ、それで良いや」
「その割りに不満気な顔の塚さんが、愛らしいですわ。では、私達だけの呼び方を改めませんか?やはり2人だけの呼び名が欲しいのですが」
「塚さん、輝さん以外?」
「はい。塚良日衣心の名前を取って、おひいさまで、どうでしょう?私の事は呼び捨てでかまいません。いえ、是非そうしてください」
な、なんか押しが強い今日の輝さん。
........ふむ。
塚さん、輝さんで結構やってきたからなあ。
やっぱり昨日今日の人に、この呼び方されるのはシャクなんだよな。
顔に出てたか。
「でも、おひいさまって、良家のお嬢さんって意味でしょ?逆なんじゃないかなー?それなら、輝さんの方でしょ」
「いえ、私は凋落した下賎の身ですから。これから朝日の様に昇っていく塚さんこそが、この呼び名に相応しいですわ」
下賎って。
朝日って。
輝さんのテンションがおかしい。
そんなに呼びたいんかい。
「アダ名みたいでなー」
「駄目ですか?私はそんなつもりは一切無いんですが」
輝さんが、そんな娘でないのは良く分かっているから、そうなんだ。
だけど、
「んー。でも、様ってのが引っ掛かるなあ。おひいさんで駄目?」
「分かりましたわ。おひいさん♪」
満面の笑顔の輝さん。
そして、輝さんが目が催促してくる。
名前呼びイベントか?
そんなんあった?
輝さんの絵に描いた餅みたいな気がした。
「輝子。これでいい?」
テレテレと、嬉しそうに照れる輝さん。
なんか、女学生してるな......。
私が、なんか損した気分。
........だけど。
「帰りましょうか。おひいさん♪」
「そうしようか。輝子」
輝さんの描いた餅でも、コンプレックスだった名前が、呼ばれて嫌じゃない呼び名に変わる。
不思議な感覚だ。
慣れるまで、むず痒いだろな。
でも──
「輝子」
「はい?おひいさん」
「なんでもない」
続く