アンナお姉さま!
目の前に、花知華先輩とアンナさんがハグしている。
アンナさんに、すごい睨まれてるんだけど、一体どうしたら?
ま、まずは挨拶を.......。
「は、初めまして......」
「ハナチカは、わたしのダヨ!」
こちらを見据えながら、花知華先輩をギューと抱き締めて(先輩がぐぇっ!と言っている)、あろうことか先輩の頬にキスをした。
そ、そんなにしなくても取りゃしないよ......って、花知華先輩の人権はいづこへ。
あと、輝さんが頬に手を当てて小さく、キャー!と
黄色い声を上げていた。
ノルねえ、輝さん?
その花知華先輩が、身長差をジャンプしてカバーしながら、アンナさんをどついた。
いや、諌めた。
「アウチ!ハナチカ~」
「アンナ!後輩の前だぞ!オレの事は、お姉さまと呼べといつも言っているだろう!」
「すいませんデシタ、お姉さま」
おっと、それっぽい雰囲気だ。
アンナさん、仇っぽい目で先輩を見つめている。
ほんとに外人ですか?
見た目、小っこい先輩に、輝さんと同じぐらいの高身長のアンナさんが、お姉さまと言うと何か違和感が.......。
逆なら絵になったけど。
「塚。こっちこい。目が笑っているぞ」
笑ってませんよー。
と、近付いたらどつかれた。
痛くはないけど、先輩体育会系だなあ.....。
私をどつく先輩を見て、アンナさんが先輩の制服の裾を摘まむ。
むくれたような、寂しそうな顔をして。
それを見て先輩はヤレヤレ顔で、
「だーいじょーぶだっつの、アンナ!塚は、可愛い後輩ではあるけど、お前はオレの彼女だろう!同じ後輩でもお前は特別なんだから、これぐらいで焼くな!そして言わせるな!」
流石の花知華先輩も、恥ずかしかったのか、頬が赤い。
そんな先輩をぬいぐるみのように抱き寄せて、頬擦りする、アンナさん。
満足げな表情で、こちらをドヤアと見てくる。
輝さんが終始無言でドキドキしている。
いや、つないで?
輝さん。
ドヤられたので私は、
「体育祭の時に、私の膝舐めたの美味しかったですか?先輩」
「!!」
「ば、つ、塚!なんで張り合ってんだ!」
アンナさんの青い目が、驚きから静かに意思を含んで、花知華先輩を捉える。
先輩の顔とアンナさんの顔の距離が近い。
尋常じゃない。
「ち、違うんだ、アンナ.......!」
「いけないお姉さまデスネ?」
アンナさんは、目を開いたまま花知華先輩の唇を奪った。
それは、もう激しく。
花知華先輩の方は、舌をねじ込まれ、つぶった瞼からは涙が溢れていた。
先輩の威厳が、もう崩壊していた。
ごめん、先輩☆
あと、輝さんが顔を手で覆ってキャー!と言っていたが、指の間からしっかりと一部始終をガン見していた。
.......えと。
初対面の挨拶すら出来てないんだけど.....。
もっかい、ごめん先輩。
私は、心の中で謝った。
「......ん」
うわあ、口から糸引いてるよ。
エグいなあ.......。
見た目ロリの花知華先輩だから、犯罪臭が凄い。
「悪かった......悪かったから、アンナ......」
「Nein.帰ってもオシオキです」
どっちが彼女なんだ......。
いや、両方彼女なんだけど。
でも、私達に会わせたくないのが分かった気がする。
あの、花知華先輩が泣かされていた。
まあ、先輩攻められたら弱いんだけど。
「とりあえずその辺で。挨拶もまだでしたし、初めましてアンナ先輩。私は、豪松陰輝子です。そして、友達の塚良日衣心さんです」
アンナさんが、私と輝さんを見て、
「フタリは付き合ってるの?」
「ぶはっ!!」
なんちゅー事、言うんだこの外人さんは!?
挨拶どこいった!?
「いえ、違いますよ?アンナ先輩。花知華先輩とお似合いで羨ましいですわ」
「そ、ソウ?輝にはワカルかー」
アッハッハッハッ。
輝さんとアンナさんが笑う。
面白くないぞー。
「失礼シタ!私はアンナ・フォン・ブラウン。私の事は、お姉さまと呼んでくれてイイ!」
「かしこまりました♪アンナお姉さま」
輝さんが笑顔で、アンナ先輩をお姉さまと呼んでいた。
ここ、共学なんですけどー。
雰囲気作らないでくださいー?
私と花知華先輩は、静かだった。
続く