先輩と後輩
年も明けてお昼ごろ。
神社にお参りに行く途中で、花知華先輩の思わぬ爆弾発言があったものだから、両サイドから輝さんと2人で腕を取って絡めて、逃げれない様にして道中、宇宙人を捕らえたみたいな格好になっていた。
「で、相手の名前は?年はいくつぐらいですか?」
「.......つ、塚。根掘り葉掘り聞くつもりだな。輝は、黙ってやがって聞き逃さない気だな........。しまったなあ、格好つけて言っちゃったなあ......」
後悔の念に駆られている花知華先輩。
でも、喋るまでこの腕離しませんぜ?
「で、先輩。お相手の名前は?」
「........アンナ」
が、外人ですかあああああああ!?
ま、まさかの国際交流!!
いや、待てまだだ!
「.......おいくつで?」
「いっこした」
うひょおおおおおおお!!
オレロリのいもうとおおお!!
まさか!?
まさか、お姉さまと!?
「.......呼ばれてる」
はあああああああああ!!
な、なんだ!?
この異様な高揚は!?
タ、タマランチ会長!!
頭越しに輝さんを見ると、輝さんもタマランチ会長だった。
これが、萌え!?
尊い!?
す、少し落ち着こう!
深呼吸。
スーハー、スーハー。
うん、こんなもんか、テンション。
「どこの国の方ですか?というより、写真見せて下さいよ、先輩」
「ドイツだ。駄目だ。お前らには絶対見せん」
「頑なですねえ?また、脇をくすぐりましょうか?両脇ロックしてありますし、事が事なので輝さんも見逃してくれますよね?」
「致し方ありませんね。どうぞ、塚さん」
氷のような瞳で、輝さんが答える。
笑みはない。
私もだ。
目的遂行の為には、手段は選ばない。
これは、別に勝負ではないのだ。
「お、お前ら本気か!?お、オレ先輩だぞ!?」
「有事の際です。先輩、お覚悟を。早く吐いて下さい」
「く、くっそ!こんなところで使いたくなかったが、仕方ねー!!塚!輝!走研の予想勝負憶えてるよな?」
「あっ!ま、まさか!?」
「負けたら、勝った方の言う事を聞く!その約束だったなあ!?今、聞いてもらうぜ!?」
チィ!
私と輝さんが、苦虫を噛み潰した顔になる。
「オレの恋人について、詮索無用だ!......もっと、大事な時に使いたかったが......仕方ねえ、お前らが悪い。とりあえず、腕を離しな。勝負師なら、約束事には厳しいよなあ?」
私達は、先輩の腕を離す。
恨めしげに先輩を見る。
悔しいけど勝負には負けたのだ。
でも、知りたかった。
教えてくれてもいいじゃん.......先輩。
「あ~、そんな顔するなお前ら。オレは、お前らの事憎からず思ってんだから!.......だから。だから、いつか紹介するよ!」
あーちくしょう。
という顔の花知華先輩。
イエーイ♪
と、ハイタッチを決める私と輝さん。
「絶対ですよお~?いつか紹介してくださいよ?でもなんで教えてくれないんですか?」
「先輩の沽券だ」
よくわからない単語を言う先輩。
輝さんは、キュピーン!と目が光った。
何々、輝さん?
「先輩と後輩という事ですよ、塚さん」
輝さんも、よくわからない事を言うのだった。
解説がいるよ?
てか、なんでそんなに察しがいいの?
どゆこと?
待てど暮らせど、私には分からなかった。
アンナさん本人に会うまでわ。
続く