明けましておめでとうございます!
「おはよ~」
そう言って、私達が起きたのはお昼ちょうどぐらいだった。
昨晩の、お猿さんの浴衣盗難事件があったから仕方ない。
余り寝てないのだから。
でも、何故だろう.......。
ただお昼まで寝ていただけなのに、罪悪感が沸いてくるのは?
貴重な時間を損した気分もする。
私ですらそうなのだから、輝さんはというと.....。
「仕方ない」「今日だけのこと」と考えつつも、片方の眉毛が少し逆反りに......。
やっぱり、私以上に罪悪感が沸いているようだ。
悪いことしたなー。
輝さんは、こちらに気づいて顔を向ける。
「おはようございます、塚さん」
「う、うん。おはよう、輝さん」
輝さんは若干、照れながらの挨拶だった。
恥じらいを忘れない輝さんが眩しい。
乙女として。
だけど、キョドってしまい、朝から(昼から)イケない気分になりそうなのを抑えて、花知華先輩の方をみる。
「ぐがー!ぐー!ふふふっ.......!」
うん。
幸せそうに寝てはる。
私は、ワキワキと手をやらしく揉む形を作る。
昨日の恩人である先輩なんだけど、やっていい気がするのは何故?
まあ、深く考えない。
こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ♪
「うひゃひゃひゃひゃひゃ!!オ、オレのステーキ!オレのステーキ!?」
私の脇腹くすぐりに、寝ぼけ半分でも盛大にリアクションしてくれる花知華先輩だった。
野生児の先輩なら、気配とかで察知するかなー?と思ったけど、全然そんなことなかった。
「.......つ、塚、てめー.......くっ!」
「おはようございます、花知華せんぱ......!」
私は絶句した。
ローリーでオレっ娘な、気の強い野生児の先輩が、涙目!?
........先輩、攻めるクチですけど攻められたら弱いんですねえ?
なんとも言えない背徳感に、背筋がブルブルと震えた。
震えたところで、私にチョップが決まった。
輝さんのチョップ。
「塚さん。先輩を泣かさない」
ですよねー。
──浴衣から普段着に着替えて、近場にあるであろう神社に行く私達。
人の流れに身を任せる。
途中、八百屋の政さんとすれ違った。
めちゃくちゃ詫びられた。
自業自得というか、事故みたいなものですから、と伝える。
自分より年上の大人に頭を下げて謝られるって、なんか気まずかった。
輝さんの顔が曇っていたので、
「だーいじょーぶ輝さん。すんだこと!」
ガッツポーズでアピールしたら、苦笑された。
おっと意外。
まあ、苦でも持ちなおしたんならいいか。
「むぐっ、むぐっ、なーんかカップル多いなー」
イカ焼きを頬張りながら、先輩が言う。
あっ、いいなソレ。
おいしそう。
「花知華先輩はいるんですか?彼氏」
年明けそうそう、輝さんがぶっこんだ!
このオレロリ先輩に苦手意識なくなったなー、輝さん。
よかった、よかった。
じゃなくて!
「おー、いるよー。彼氏じゃなくて彼女だけどな」
フガッ!!!
先輩のまさかの衝撃的な発言!!
私も輝さんも、目を丸くして固まる。
だが、輝さんは一瞬で花知華先輩の脇を取り、ひそひそと喋る。
「.......もっと、具体的に色々教えて下さいまし。塚さんにはご内密に.......」
「な、なんだよう。私だって......」
「ま、まーまー!輝、塚、忘れてるぞ大切な事!新年の挨拶まだしてねー!」
『あけましておめでとうございます!』
「ひゃい。おめでとー」
それどころじゃない私達の剣幕に、虎の風格の花知華先輩は、借りてきた猫のように縮まった。
ちょっと、可哀想。
続く