立っていなさい
お昼休みが終わり、午後の授業を受ける私達。
友人達も学食からギリギリ戻って来て、私に文句を垂れていった。
「日依心なんで来なかったん?」
「お金ぐらい貸してやったのにさー。トイチで!」
ブーブー言って自分の席に戻る友人達。
愛のある悪態をつかれて、苦笑する。
何気なく斜め前を見ると、輝さんの席が目に映る。
本人が椅子に座るところで、こちらの視線に気づいたのか、私をチラリと見てニコリと笑い、ひらひらと片手を小さく振る。
.......うん。
やっぱり気づかれてたんだな。
私が輝さんを見る視線て、そんなに圧力あるのかなあ?
ひらりひらりと、私も手を小さく振り返して苦笑する。
輝さんは、私の視線から避ける必要がなくなった。
だから、こうして手を振ってくれるんだろな。
うおー!!
やっぱり気づかれてたのは、恥ずかしい!
もう少し、視線の圧を下げる練習しないと!
そんなの出来んの?
忍者じゃあるまいし.......。
でも、私も輝さんに見られてたという話なんだけど、私全然気づかなかったなあ......。
輝さん、ニンジャ?
お嬢様でニンジャかあ。
18禁が見えてきたから、ここらへんにしとこ。
お腹いっぱいという訳でもないけど、空腹が満たされたのもあり、午後イチの授業もあり、遠くから建設工事の、カーン!カーン!という環境音楽も加わって、まあ、ようするにお休みなさい♪
──スゥ、スゥ。
寝息を浅く吐いて、我ながらお上品にお昼寝できたのではないでしょうか?
輝さんが居眠りしたら、こんな感じかな?
なにか斜め前から、暖かい気を感じる......。
こーゆーの視線を感じるってのかな?
じゃなくて!!
ガバア!
っと、豪快に自分の顔を机から起こす私だった。
何か感じた斜め前の席の輝さんが、こちらをアワアワと心配そうに見つめていた。
その無防備な輝さんの後ろに、現国の森本先生が忍び寄る。
ペチリ
「豪松陰。授業中に後ろを見て何をしている。塚良、寝てるんじゃない。そして、ヨダレをふけ。2人とも、後ろで少し並んで立っていなさい」
優しく頭を叩かれた輝さんと、キツイ視線で私を見る森本先生だった。
クスリ、クスリと、クラスメイトの小さな笑い声の中、教室の後ろに立つ私と輝さん。
眠気は、もう恥ずかしさで飛んでいる。
それより輝さんに、私が居眠りしていたのを心配して、ずっと後ろを見させてしまったのが申し訳なかった。
小さい声で私語をする私。
「──ごめんね、輝さん。私のせいで」
輝さんは、驚いた顔でフルフルと顔を横に振り否定した。
けど、次の瞬間何か名案が浮かんだような顔をして、したり顔で言う。
小声で言う。
輝さん、百面相だな。
「──そうですね。塚さんのせいですね?」
そのお詫びとして放課後、少し塚さんの時間をくださいまし♪
そんな事を、さも上手くいったみたいな顔で可愛く言う輝さん。
可愛くじゃなくて、この人可愛いな。
なんで、こんなに私好かれてんだろ?
いや、私の方が先に気になってたんだけど.......。
それはまだ言うまい(言う機会を逃してる)
私はニヒリと輝さんに笑い返す。
「いいよん♪」
直後、森本先生の視線の凄い圧を感じて、ビビる私だった。
続く