スマホのストラップ
こうして、高校生になって初めての文化祭は幕を閉じた。
走研は、盛り上がり過ぎて先生方に少し怒られた。
夏海と見文は、大日本杯のレースが終わってしまってから駆けつけて、件の商店街温泉旅行への展開に、あやかれなかったのを悔いていた。
「じゃーなー、日衣心!温泉旅行のおみやげ頼んだぞー!」
「豪松陰さんも、みやげ話何か期待してるね」
輝さん、みやげ話で、私は、リアルにおみやげかよ!
付き合い長い腐れ縁だけど!
扱いもうちょい丁寧に頼むよ!
.......って、輝さん。
なぜ顔を赤くしてモジモジしている。
なんのみやげ話を期待されている?
「あんまり期待すんなよー!」
おみやげもみやげ話も。
と、言ったところで輝さんと2人帰り道。
先ほどの勝負を振り返える。
「予想勝負。私も輝さんも負けちゃったね」
「あの先輩がいたら調子が乱れますわ」
「ふふっ。輝さん、花知華先輩の事は苦手だね。悪い人じゃないよ?」
「........それは分かりますが、あの人は塚さんとの距離が近いというか.......」
「スキンシップ多いって事?気にしないけどな、私」
「私が気にするのです.......」
私は輝さんがボソリと言った、小さな声を聞き取れなかった。
ん?
ていう顔をしたら、
「なーんでーも、ありまーせーん」
珍しくむくれた輝さん。
レア&可愛い。
「とにかく!あの先輩を塚さんの側に置けません」
「そうなの?ま、いっや。可愛いかったし。輝さん、ちょっと寄り道しよー」
「うん!い、いや、はい塚さん」
輝さん、いい返事だ.......。
押していた自転車を止めて、ショッピングモールへと入る。
小洒落た文具店に入る。
店内を少しウロウロして物色する。
後ろから輝さんがついてくる。
「何かお探しですか?塚さん」
「うん。そろそろ入荷してるはず......って、あった!」
私が手にしたのは、スマホ用のストラップだった。
白と黒の格子柄の帯に、先に牛のデフォルメされたキャラクター「うーちゃん」がついている。
「あら、可愛い。塚さんらしい、可愛いセンスです」
「輝さんも一緒にどう?って、布教してみたりw」
「よ、よろしいのですか!?」
輝さんが、パアッと顔を明るくした。
私はそのストラップを2つレジへ持っていき、精算を済ませて、輝さんの手に渡す。
「はい、お揃い♪うーちゃん大事にしてあげてねん」
「もちろんです!大事な宝物にしますわ!」
うむ。
うーちゃんの可愛さを広めれて良かった。
けど、お揃いでこんなに喜んでくれる輝さんを見れたのも良かった。
良かった尽くしで、輝さんとも、Win-Winだ。
「さて、帰りますか。輝さんや」
「そうですわね。塚さんや」
お互い、クスリと笑う。
何故か、昔話のおじいさんとおばあさんになる私達だった。
続く