ご相伴
「あ、そろそろ行かないと!学食に先にいった友達もいるから。ごめん、ありがとう輝さん」
手伝ってもらったとはいえ、やはり日直の仕事をしていたから、時間は押している。
こういう時だからこそ、落ち着いて確認を。
モゾモゾ.......。
「あー!!家にお財布忘れたー!!」
落ち着いている場合ではなかった。
なにやってんの私......。
これでお昼抜き確定だあ~。
シュンとして、自分の席に向かう私。
寝て空腹を誤魔化そう。
一気に目の前が暗くなってきた。
「あのう.......、塚さん。ご一緒にどうですか?購買で買ってあるパンでよろしければ」
!?
また、しまった。
そりゃそうだよ!
あんだけリアクション大きく取ったら、そうなるよなあ!
輝さん良い人。
「ごめん輝さん。気を使わせてしまって申し訳ない。そんなに面識ないのに」
「塚さんこそ気を使わないで下さい。お誘いしようと思ってましたし、逆に私はラッキー♪ぐらいに思ってますから」
「そ、そうなの?じゃあお言葉に甘えよっかな?」
「遠慮なくどうぞ♪」
若干の不安を覚えつつ、ご相伴に預かる事にする私だった。
いいんだろうか?
今度お返しすればいいか。
あ、友達は。
まあ、あの娘らは大丈夫か。
気にせず食べてるだろう。
では、豪松陰、いえ、輝さんとお昼をご相伴といきましょう。
「席も借りれましたし、ささ、塚さん何を召し上がられますか?なんでもいってください」
「あ、それじゃあ、めんたいフランスと、あんパン下さい。あの、またお返しするからね?」
「はい♪出来ればお金より、またお昼をご一緒したいと思います」
ははっ。
輝さんの私への好感度、最初から高過ぎでしょう。
せいぜい失望させない様に頑張りたい。
いや、自然にいこう。
あんパンを頬張る私。
「輝さんって、やっぱりお嬢様?名字からイメージして。物腰もなんとなく上品だし」
「昔は、名家でした。今は落ちぶれて普通なんですが。でも、おかげで気楽にやれてます」
サンドイッチを小さく頬張り、飲み干してから私に答える輝さん。
うん。
やっぱり上品だ。
私も食べながら喋るの気をつけよう。
「塚さんは、可愛いですね。いつも元気で、ハキハキとしていて好感を持っていました」
はははっ。
嬉しいんだけど、少し照れ臭い。
私の友達は、こんな風に面と向かって誉めてくれる事はないしな。
そんなに私を見ていてくれたのか。
でも、目が合う事がなかったような......。
「塚さんが、私を見てくれていたのは知っています。ですが、目が合うのが何故か恥ずかしくて.......。ごめんなさい、塚さんがこちらを見ていない時に、塚さんの事を見ていました」
見てたん、知ってたんだ......!
さっきよりもっと恥ずかしくなってきた。
私の顔も赤いだろうけど、輝さんも真っ赤っかだった。
輝さんも恥ずかしいんだ.......。
「あ、暑いねー」
「そ、そうですね。まだ秋には早いですね」
お互い恥ずかしいのを流すため、とりあえず口にした。
けれど、制服はもうすぐ冬服だけど、まだ夏服でよかったと思う私達だった──
続く