大日本杯!
「さあ、各馬パドック周回をして、まもなく本馬場入場です!」
うわああああー!
盛り上がる私達の前に、中型のタブレットがひとつ。
競馬のテレビ中継を映していた。
まさかの、大観客(20人ぐらい)だったけど、みんな不満も言わず、この小さなタブレットの画面を見ていた。
「おっ!来たぜー。間に合ったようだな、塚!でっかい方も」
「来なくていいのに」
緑色をしたゾンビ。
いや、ゾンビに扮した、花知華先輩。
来てくれたんだ。
でも、輝さんが青い顔をして、何かボソリと言った?
花知華先輩を前にすると、輝さんのペースが乱れるんだろうか?
「おっほ!?予想対決すんのか!面白そうじゃねーか!オレも乱入させろよ!」
「急にな、何を......」
私、も急に何をと思い、言いかけたけれど、ギャラリーの方が先に反応を示した。
「オレっ娘!?実在したのか......」
「まさかの乱入!JK予想対決!あつい!」
「いいぞー!当たるなら何でもやれー!」
ギャラリーが花知華先輩に好意的だった。
ふむ。
これは、乱入を許可した方が盛り上がるな。
「いいでしょう!花知華先輩!負けたら、勝った方の言う事をひとつ聞く!ですよ!?」
「ちょ!?塚さんまで、な、何を......」
「いいぜ、上等だ。2人ともオレがたたんでやるぜ」
うおおおおおー!
盛り上がるギャラリー。
「お嬢様頑張れー!!」
「お姉ちゃん勝ってー」
「こら、三連単買えるな」
そんな声援を送られたら、事後承諾の形だけど、輝さんも断れない。
「仕方ありませんね。データを見る時間がありませんが?」
「そんなもんいらねー」
ふん。
と、鼻を鳴らした花知華先輩は、パドックから本馬場入場した馬を、ひととおり見て決める。
「こいつだ。14番のダブルスピール」
馬の気配だけで決めた!?
しかし、悪くないところをついている......。
先輩も、勝負強い?
気も強そうだしな......。
そしてファンファーレが鳴り、歓声が沸き手拍子が響き、拍手に代わり競馬新聞が振りかざされる。
さあ、お祭りの時間だ──
時刻15時30分。
各馬嫌がる事なくゲートに入って、スタートしました!
「大きな出遅れもなく横一線。綺麗に飛び出しました。さあ、まずは何が行きますか。行った、行った。8番のソラタカクが何時ものように先頭を切りました。」
単騎で逃がすとうるさい馬だ。
だけど、そこは折り込み済み。
ほら、この馬に対してノーマークなんてあり得ない。
前がかりになって、みんなせっついていく。
「さあ、第2コーナーを回って一周目の観客席の前を通り過ぎていきます!凄い大歓声に迎えられて各馬が過ぎていく!」
タブレットから聞こえてくる実況を、固唾を飲んで聞いて見ている私達。
中には、眼が血走っているおじさんもいた。
買ってるな......?
そして1000mを過ぎたラップタイムが、57秒03!
やはり読み通り速い!
これなら、後ろからの差しが決まる。
私の選んだスペシャルマンデーの勝ちだ!
2周目、全馬運命の第4コーナーに入っていく──
続く