輝さんとフルフル
「開催から3週だから、馬場は悪いと......。これはツグミの血を引いているから......。うーん。.......これ、追いきりいいなぁ......。あっ、そうだ輝さん」
「はい、塚さん。なんでしょうか?」
スマホで競馬のデータを見て、あーでもない、こーでもない。
と、文化祭1週間前の私。
「輝さん。勝負なんだけど、色々当たり方はあるけど、分かりやすくシンプルに単勝でいこっか?」
「単勝。1着の馬を当てるという事ですね」
「そう。それでお互い選べる馬は1頭。で、どう?」
「分かりました。塚さんの仰せの通り」
輝さんもまた、手持ちのスマホで色々で検索していた。
競馬の最低限の見方は教えたけれど、今回は自力で勝負と相成った。
ビギナーズラックというのもあるから、侮れない。
だけど、やっぱり負けられない。
小さい時からずーと好きで見てきたもんね。
「あっ。ていうかフルフルしてなかったね?輝さん」
「あら、ほんと。私とした事が、うっかりしていました。では、塚さん」
夏海と見文がいたら、天然だけでツッコミ不在!
とか、言いそうな状況だな。
ともあれ、私達は、スマホでフルフルと、ラインした。
これで、いつも繋がれる。
緊急でも、平時でも。
ピロン♪
「よろしくお願いします!」
バイト猫のスタンプだった。
私も、よろしくお願いします!
と、バイト猫のスタンプを返した。
夏海と見文の白い目が想像できる。
女子高生らしくないかもだけど、好きなんだよ!
バイト猫。
こんなとこでも被るとは.....。
輝さんもスタンプを見て、めちゃ笑顔。
その日は、バイト猫への語りで放課後から、帰宅まで時間をフルに使った。
私も輝さんも大満足だった。
ピロン♪
夜更けにラインが走る。
「走研の勝負もありますが、文化祭色々見て周ろーね、輝さん」
「はい!是非ご一緒させていただきます」
「模擬店で何食べようかな?楽しみだなー」
「私はパンケーキが密かに楽しみです」
「あははっ。輝さんパンはパンだけどw好き過ぎる!」
「私はパンを愛しています」
「www。そろそろ寝よっか」
「はい、また明日学校で。おやすみなさい塚さん」
「おやすみ♪」
最後は、バイト猫のスタンプで締める私達。
そんな放課後と、気温も下がり厚い冬用の布団にくるまれて、就寝密度も深くなり。
寝坊を回避するのが難しい、秋が深まった日々。
──高校初めての文化祭が訪れた。
続く